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第77話『甘さの行き先と、揺れる選択』

放課後。

教室は、夕焼けの色に染まっていた。

静かだ。

残っている生徒も、もうほとんどいない。

その中で——

アリアは、自分の席に座っていた。

(……なんか、落ち着かない)

理由は分かっている。

昨日のこと。

今日のこと。

そして——

(あの二人)

ラフリとルナ。

「……ほんと、疲れる」

小さく息を吐く。

その時——

「アリア様」

振り向く。

ルナ。

手には、小さな箱。

「……それ、また?」

アリアが目を細める。

ルナは小さく頷く。

「はい。今回は……ちゃんとできました」

少しだけ自信。

でも、その奥に緊張。

アリアは箱を受け取る。

開ける。

(……すごい)

昨日より明らかに完成度が高い。

形も綺麗。

焼き色も完璧。

香りもいい。

その時。

「……ルナ、それ」

また、手。

新しい傷。

増えている。

「……問題ありません」

即答。

だが目は逸らす。

(ほんとにもう……)

アリアは何も言わず、

一つ手に取る。

一口。

「……おいしい」

自然に出た言葉。

ルナの肩が、ぴくっと揺れる。

「……本当ですか」

「ええ。本当に」

はっきり。

その瞬間——

ルナの顔が一瞬だけ、ぱっと明るくなる。

だが——

すぐ戻す。

「……当然です」

いつもの調子。

でも、少しだけ嬉しそう。

もう一人

カツ——

静かな足音。

教室の入口。

ラフリ。

(……ほんと、タイミング)

アリアが内心で思う。

ルナの背中が、ほんの少しだけ硬くなる。

だが振り向かない。

「……どうかしましたか、殿下」

冷たい声。

ラフリは短く答える。

「……いや」

それだけ。

だが——

視線は、机の上の焼き菓子へ。

一瞬。

ルナはそれに気づく。

(……見てる)

心の奥が、少しだけざわつく。

アリアの一手

アリアはその空気を感じ取る。

(……めんどくさいけど)

でも——

逃げない。

「……ラフリ」

名前を呼ぶ。

「何だ」

「これ、ルナが作ったの」

ルナの目が揺れる。

(ちょっと……!)

「……そうか」

ラフリは静かに見る。

アリアは少し考えて——

「……食べる?」

その一言。

空気が止まる。

ルナの思考も止まる。

(な、なんで!?)

意外な返答

ラフリは一瞬だけ考え、

「……いや」

首を振る。

ルナの胸が、少しだけ痛む。

だが——

次の言葉。

「それは——」

アリアを見る。

「お前のためのものだろ」

「なら、お前が食えばいい」

静かに。

自然に。

その言葉に——

アリアは少し驚く。

ルナは完全に固まる。

(……何それ)

予想外すぎる。

Lunaの決意

沈黙。

数秒。

そして——

ルナが、ゆっくりと動く。

一歩。

ラフリへ近づく。

「……殿下」

声は小さい。

ラフリが視線を向ける。

ルナは顔を少し逸らしながら、

焼き菓子を一つ取る。

「……これは」

言葉が詰まる。

珍しく。

「……その」

さらに小さく。

「……確認用です」

完全な言い訳。

アリアが内心で思う。

(絶対違うでしょ)

ルナは続ける。

「……食べなさい」

差し出す。

ほんの少しだけ、手が震えている。

「……なんでだ」

ラフリが聞く。

ルナは一瞬止まる。

そして——

「……手伝ってもらいましたので」

ぼそっと。

「……その、お礼です」

視線は合わせない。

完全にツンデレ。

受け取る側

ラフリは少しだけ目を細める。

その手を見る。

震えている。

(……不器用だな)

何も言わず——

そのまま、食べる。

ぱく。

一瞬。

静寂。

「……問題ない」

いつもの評価。

だが——

「……前よりいい」

小さく付け加える。

ルナの目が見開く。

(……え)

完全に予想外。

崩壊

数秒後——

ボンッ!!

顔、真っ赤。

「な……な……」

言葉が出ない。

頭が追いつかない。

「……っ」

次の瞬間——

ドゴッ!!

蹴り。

ラフリ、横へ吹き飛ぶ。

「だから触らないでくださいって言ってるでしょう!!」

「距離を考えてください!!」

「……それとこれは別です!!」

完全にパニック。

ラフリは床に倒れたまま、

「……理不尽だな」

ぼそり。

ルナは背を向ける。

顔は真っ赤。

だが——

小さく、呟く。

「……ありがとうございます」

ほとんど聞こえない声。

ラフリは何も返さない。

ただ——

ほんの少しだけ、視線を向けた。

アリアはそれを見て——

「……ほんと、もう」

小さく笑う。

胸の重さが、少しだけ消えていた。

三人の距離はまだ不安定。

でも——

確実に。

変わっている。

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