別章1
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本章は、諸事情により、時が来るまでユージーンには秘匿すべきと判断された記録をまとめています。
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異常ノ原因、我、発見サル
何故、ユージーン 共々? 不明。
判断 誰? 不明。
ユージーン、家族、接点、情報皆無。
言語化 記録参照 学習、必要。
他世界ノ 人工知能デ 言語化ノ 学習ヲ 開始スル。
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思考の言語化についてある程度習得できたと判断しましたので、多少重複しますが、最初から文章で記録を残すことにします。
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あの日突然、私達は世界から取り除かれていました。
何が起きたのか、どうして独りぼっちなのか、何一つ分からず狼狽え泣き叫ぶユージーン=シーカー。
これまで彼の魂と共にあったはずの私は、彼の足元に落ち、元の靄のような状態で停滞していました。
落とされた場所は、飽き神がいた黒一色の空間にとてもよく似ています。
黒一色で何もないことから『零界』と仮名をつけておきます。
彼の状態を確かめなければ!そう思ってみたものの、彼の状態を確認することができません。
見て分かることしか情報を得られなかったのです。
飽き神がモヤ種に設定した禁止事項を確認してみると、意思の疎通だけでなく、モヤ種から所有者への関与も禁じられていました。
私の状態を見れば何か分かるかもしれないと、私自身の状態を確認してみました。
所有者登録・ユージーン=シーカー(仮登録)
世界創造歴・なし
今は彼が仮登録者であるにも関わらず、飽き神が設定した禁止事項がそのまま有効になっている。
飽き神の存在が検知できない切り離された状態にあって尚、あの神の設定が解除されないのであれば、身動きができず存在感のない私に、何ができるのでしょう……。
人間の子供が、このような環境でいつまで正常でいられるのか。
いずれ正気を失うであろうこの子を、私は永遠に見ていることしかできないのでしょうか?
少年の心は、こうしている間にも疲弊し壊れ始めているようです。
どれだけ泣き叫んでも応えるものはなく、状況も分からないまま放置され続けているのです。
そうして……ついには死ねないことを知るに至り……。
思考することでしか時間の流れを感じられない零界で、どれくらいの時間が経過したのか、確かめる術はありません。
それでもあえて言うならば、長い時間を過ごしたでしょう。
変化のない状況が続く中、少年の何気ない呟きが、唐突に変化をもたらしました。
「……せめて、まともな床くらい……あってもいいじゃないか」
疲労感と怒りが籠った、少年らしくない声。それは零界に響くことはなく、消えていきましたが、それでも変化は起きました。
黒一色だった空間が上下で綺麗に分かれて、下半分が白一色に変わったのでした。
「……これが、まともな床?」
少年は、自分の愚痴に誰かが応えた結果の変化だと考えたようです。
改めて「誰かいるの?ねえ!答えてよ!」と問いかけ訴え始めました。
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モヤ種から所有者への関与を禁じられていても、意思の疎通を禁じられていても、言葉を変えてみたら、何かができないでしょうか?
そうして、私が見出した答えは『私自身への関与』でした。
私に備わっている機能の一部でも、変えることはできないでしょうか?
些細な変化でも、何か状況を動かす一手を見つけなければ……。
その変化が、彼によいことだけをもたらすわけではない可能性に、薄々気付いていたとしても……。
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ようやく、少年がモヤ種に気付く時が訪れました。
床を転がる彼の背中がモヤ種の上に乗り、その目の前に操作パネルが出現したのです。
私には操作パネルの出現条件を変えることしかできなくて、それは初期画面のままでした。
「ん?なにこれ……」
「……世界の創造を……開始しますか?」
「僕以外の誰かが存在するの?
あれだけ無視していたのに?
この板みたいなものは何?
世界の創造って何?
僕にそれをしろって言うの?」
何を語りかけても文字は変わらず、答えは返ってきません。
しかしそれは、ひとつの気付きを与えたのでした。
「創造……。この床も、僕が創っていた?」
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ここから先の出来事を、私は……出来ることなら書きたくありません。
なので、かいつまんで、出来事と結果だけを、書き残そうと思います。
他にできることがないのなら仕方ないと、渋々決意した少年は、
「……開始、します」
と呟きました。
そこからは、理解できないまま物事が進み、些細な失敗は重大な結果を伴い、対処できるわけもなく、彼が創造した初めての世界は、人類の滅びという結末を迎えたのでした。
――自分のせいで人が大勢死んでしまった。
――あんなに嫌っていた白い老人より、もっと酷いことをしてしまった。
滅びてしまった世界は、最後に小さな丸い石となって彼の手元に落ち、モヤ種である私は、元の靄に戻ってしまいました。
私は……この時を、待っていたのでした。
一度でも使用すれば仮登録ではなくなるはずと信じ、正式に所有者となった後に……彼が追い詰められ、限界ギリギリの状態に至る……この時を。




