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ぼくらの創世譚  作者: 鳴音-narune
序章

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1/10

はじめに

本書は、我が主ユージーン=シーカーが新たな創造神となり、世界を創造していく日々を記す活動記録です。



★――


 ついに、この時が来た。

 創造神になってしまってから色々あったけど、やっと、再挑戦すると覚悟を決めた。


 活動記録にいきなり一回目の失敗について書くのは、おかしいのかもしれないけれど、忘れてはいけないことだから、あえて書いておく。

 僕は、初めての世界創造を失敗して、大勢を死なせてしまった。

 でも、今度はもう一人じゃない。同じ失敗はしない。

 しっかり考えて、準備をしていくつもりだ。



 元々は普通の人間の子供だった僕が、どうして今、生まれ育った世界から切り捨てられて、創造神になっているのか。

 ファロンは何者なのか。

 零界やモヤ種や循環の環、プリトメイト。

 最低限の説明をするためにも、これまでの経緯を、できるだけ簡潔に書けたらと思うのだけど……ぼくらにも分からないことはいくつもあるから、分かる範囲内で、書いてみようと思う。


★――


 僕が生まれ育った世界は、ちょっと変わった世界だった。

 自らを神だと自称する白い老人が「ここは星間戦争のための世界である」と宣ったのが、世界の始まりだったと聞いている。

 ぼくらは、この老人神のことを『飽き神』と呼んでいる。

 そうは言っても、実際に会ったことはないから、ただの陰口なんだけど。


 飽き神の傍には、たくさんのモヤ種があって、とても雑な扱いをしていた結果、その一つが世界の中に零れ落ちてしまった。


 モヤ種というのは、創造神が世界を創造する時に使用する、とても高機能・高性能な道具で、本来なら、世界の中に落としたりしてはいけないものだって、誰にでも分かるんじゃないだろうか。


 世界の中に落ちていったモヤ種は、動けるようには創られていなくて、声を出すことも、言葉で交流することも禁じられていた。

 だから、ただ世界を傍観することしかできなかった。


 そんなモヤ種が、一人の青年の身体に、どういうわけか付着したまま離れられなくなった。

 それが、僕の前世であるラトナ=シーカーだ。

 前世と言っても、僕にラトナだった頃の記憶はないので、実感はないんだけどね。


 モヤ種は、ラトナにくっついたまま周囲の人々を眺めていたんだけど、どういうわけか、ラトナが死んだ後も離れることはなく、ずっとラトナと一緒に集落を見守り続けていたんだって。


 そうして長い間、循環の環のすみっこで停滞していたラトナとモヤ種は、何かの拍子に、一人の女性の胎内に入ってしまった。

 胎内にいた胎児の中に、ラトナとモヤ種が入った結果、生まれたのが僕だ。


 ここまで読んだ人は、なんとなく分かると思うんだけど、モヤ種が僕の中に入ってしまったことには誰の意思も働いていない。まったくの偶然でしかないってこと。

 僕自身には、何一つ特筆すべき特徴や個性といったものはなかった。

 異常な環境ではあったけど、普通に愛し合った夫婦の間に生まれた、ごく普通の子供に過ぎなかったんだ。


 僕は、だいたい十歳くらいまで家族のもとで幸せに生きて、ある日突然、世界から切り離された。

 気付いたら、真っ黒な空間に独りぼっちになっていて……不老不死になっていた。


 創造力を得ていることに気付いて、操作パネルが出現して、『世界の創造を開始しますか?』という文字に、「はい」と応えてしまって……。

 自己嫌悪と罪悪感と、孤独。

 いろんな感情に蝕まれて壊れそうになっていた時に、ようやく、僕と一緒に切り離されていたらしいモヤ種と、話ができるようになった。


 持ち主の危機と認められた結果、緊急事態対応が可能になって、それまで禁じられていた意思の疎通を図ることが可能になった……ということらしい。


 モヤ種には、自由に言葉を伝えるための機能がなくて、聞き取りづらい音声しか出せないでいた。

 それで、どうにか聞き取れる音声で『器をご用意いただけませんか?』と言われて、最初に思いついたのが花龍(ファロン)だった。

 僕が大好きだった『花龍の星』という絵本に登場する宇宙龍の名前が花龍(ファロン)なんだ。

 結局、龍の口で喋るのはとても難しかったようで、どうしていいか分からないから思うような姿になって欲しいと言った結果、僕と同年代くらいの少女になった。

 少女は「私に名前はありません」と言うので、花龍(ファロン)と名付けた。


 花龍(ファロン)から事情を聞いて、自分の状態を理解して……受け入れるには時間がかかった。

 花龍(ファロン)の方も、僕がこんなことになってしまったのは自分のせいだと考えていたようだった。


 ユージーン=シーカーとファロン=シーカー。

 隣に並び立つ関係になれるまで何年くらいの時間がかかったのか。

 僕が再び『世界の創造』に挑むと覚悟をするまで、何年かかったのか。

 暦がない世界しか知らない僕には分からない。



『ユージーン、準備完了です』

 ファロンからの念話が届いた。

 用意していた紙の束を片手に、扉の取っ手を掴む。

 どうしても緊張してしまうし、やっぱり少し怖い。

 でも、今度は僕一人じゃない。

 

 精一杯胸を張って、扉を押し開ける。

 今日この時から、ぼくらの創世譚が始まるんだ。



✿――


 零章へ進む前に、いくつか解説を付け足しておきます。


■創造神

・創造力をもって世界の創造を行うことができる神

・生殖機能を持たない

・不老不死

※ファロンが知る創造神は飽き神とユージーン=シーカーのみ


■ユージーン=シーカー

・星間戦争のための世界に生まれた男児

・出生時は普通の人間だったが、今は創造神

・出生世界に暦がなかったため年齢不明


■飽き神

・星間戦争のための世界を創った創造神

・モヤ種を大量に複製し、管理不行き届きをやらかした犯人


■モヤ種

・創造神の世界創造を補助する高機能で高性能な便利道具

・未使用時は淡い靄のような姿で見つけづらい

・使用中は青い球体に変化し、世界を内包している

・他者との意思の疎通を図る機能を与えられていない

・飽き神によっていくつかの禁止事項が課せられている


■ファロン

・飽き神によって複製されたモヤ種のひとつ

・星間戦争のための世界の中に零れ落ちた

・変質し、モヤ種の変異種・ファロンになった

・ユージーン=シーカーを主と仰ぐ

・花龍(ファロン)の姿から少女に変わり、ユージーンによって禁止事項が解除され、今は意思の疎通を図ることが可能になっている


■零界

・創造神がいる謎の空間

・真っ黒でなにもない

・飽き神がいる零界と、ユージーンがいる零界は繋がっていない様子


■循環の環

・モヤ種が維持・管理する世界特有の機構

・人類の魂を内包し、転生の時まで保護している

・魂の循環が世界のエネルギーを生み出す

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