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冥闇不道のアポストル  作者: 茅井 祐世
第六章 焔槍の切先
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第七十八話

 カーターは話した。包み隠さず全てを。


「それで」


 奥に腰掛けた男、ジュール・コルヴァスが口を開く。切れ長の目には感情は伺えず、逆にこちらを見透かすように見つめる。


「雷の創霊力持ちを獲ることは叶わず、か」


「恥ずかしながら」


「風のアポストル、邪魔してくんなって感じ。お前も退いてんじゃないよ。あー! ゼファレイン、ムカつくわあ」


 まだ二十歳そこらだろうか。ボサボサのシルバーブロンドの髪を掻きむしり、眼鏡を掛けた女が大声を上げる。


 ゼル・アッシュヴァル。通例家長が代表して参加する評議会において、抜きん出た能力から参加を命じられている、百年に一度の天才と呼ばれた女。


「雷と共に旅する水遣い、そして“氷の魔女”……奴らがフラフラと人前に姿を現す理由が納得できないわね」


 フェードを深く被った女性が手を顎に当てて、考え込む。エルディア・ルミナリア。金糸で飾り付けられた白いローブに身を包んでおり、顔ははっきり伺えない。


「まあ」


 ナイルズも同じく考え込んだ仕草をする。ナイルズはヴァルケン家の長。この王城都市、ヴォルカニア全体の治安を維持する役目を任じられている。そのせいか国家を揺るがす問題として、普段の軽薄な様子とは少し顔つきが違う。


「一切蜂起を狙って基盤を固めている、ってわけでもなさそうだがな」


 ナイルズが言葉を続ける。


「人相描きを作らせて、各国に正確に通達させろ。関所で留めて確保した方が圧倒的に早い。相手は子供の集まりだ。関所を避けたとしても国に入れず街道をさまよっているなら、路銀が尽きれば自ずと憔悴していく。弱ったところを捕らえれば良い」


 ジョゼ・アウグストも得心したように深く頷く。


「ナイルズに賛成しよう。カーター。絵描きを呼ぶから付き合ってもらうぞ」


「はっ」


 カーターが頭を下げる。その姿を見て、フン、とゼルが鼻を鳴らす。


「じゃあ今日は終わり。ね、いいでしょ? アタシお腹へっちゃったわ。陽が沈むまでなんて久々だもの」


 ジュールが頷く。


「では、評議会はこれまでとする」


 カーターはジョゼのところへ向かう。二人は簡単な挨拶を交わし、揃って部屋を出ていった。



 


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