目的と食事
「これからどうするか」
選択肢としては2つある。
1つ目は、洞窟に戻りあの女を保護する。
2つ目は最初の目的だった、川を探して自分の見た目を把握すること。
正直1は論外だ、あの女に関わると面倒な予感しかない。消去法で2な訳だが、
俺は制限の無くなった空間把握のスキルで、川を探すことにした。
随分と遠くまで空間を把握することが出来た、大体500mほど元いた場所の方面に川、と言うよりは池だ。
洞窟に釣られてこちら側に来たが、まさか反対方向だとはな、こっちに来なければセガルラに襲われることもなかっただろうに…。
過ぎた事を考えていても仕方がない、川は見つかった、あとは向かうだけだ。
「っと、その前にこの死体どうするか」
セガルラの死体は、収納に仕舞っておくことにする後々何かで使えるかもしれない。
ステータス画面は壊れてしまったが、収納することで、その物の名前や詳細を見ることができるようになっていた、これもユニークスキルの影響だろう。
ーセガルラの死体(上半身)(下半身)
タフォジャの森の主
数百年の時を生きた伝説の魔物
伝説の魔物ね、知ってたけど。
それと、もう1つあるな。
ーセガルラの魔石
100年生きると魔石名前がつく
さっきも思ったけど、詳細雑すぎないか?伝説の魔物でこの量だとゴブリンなんか詳細がないかもしれないな、いらないけど。
セガルラの魔石はレアみたいだ、やはりレアな物を手に入れると心が踊る。
セガルラの魔石を眺める。やがて、飽きてしまい、収納に仕舞う。
「さて、行きますか」
目指す池は500mほどだ、軽く走れば数秒も掛かりはしない、そもそも空間把握で池の近くに板を出して転移することも出来る。
今は歩きたい気分なんだ。
数分歩き池につく、池の周りといえば動物などが居そうなものだが、セガルラとの戦闘音がここまで聞こえていたのか、姿は見当たらない。
空間把握でいるのか確かめてもいいが、いまは自分の姿を確かめるとするか。
そう思い水に顔を近づける。
水に映った自分の顔を見て驚く、自分の顔とは思えないほど整った顔立ち、髪は短く切りそろえられており、動いても邪魔にならない、色は全体的に限りなく黒に近い灰色だ。
確かに、あいつの美的センスは本物だな。
この体を作り出した人物に、遺憾だが、感謝をする。
あの女が顔を赤く染めていたのは自惚れじゃないみたいだな、もう会うこともないだろうが。
しかし、顔は良くても性格が最悪だ、女性と付き合ったとしても、長くは持たないだろうな。
そう自己分析をする。
ユニークスキルのおかげか、不思議と腹は空いていない、3大欲求までもが無くなっている、それなのに美味いものは食べたいと思っている。
「旅…するか」
この世界にきて、目的なんてものは与えられていない、成すべきことも無い、なら自由に、自分が思うままに過ごそう。
美味いものを求め、珍しいものを収集する、これが、俺が旅をする目的。
空間把握で全てを把握してしまうのはつまらない、自分の脚で赴き、見聞を広めていく、ついでに、その過程で感情が直ればいい。
そうと決まれば、まずは飯だ、幸い収納すれば、詳細を見ることが出来るようになったんだ、毒なんかも分かるだろう。
毒が効くとは思えないが、毒を喜んで食べる程、頭はおかしくない。
空間把握のスキルで動物を探す、かなりの範囲を把握するが、一向に見当たらない。
1km、3km、5kmほど範囲を伸ばし、ようやく、鹿の群れを発見する。
随分と遠いな、それに、この森はどれくらい広いんだ?
鹿を見つけるまでにいくつかの洞窟や池、更には、何故か中の様子がわらない洞窟もあった。
とても気になるが、まずは鹿だ。
そう言い聞かせ、鹿の近くに板を出現させ転移する。
鹿達は突然の出現に驚きはしたもものすぐに、逃げ出す。
そのうちの1匹に的を絞り、追いかける、直ぐに追いつき首を掴み180度回転させ、絶命させる。
鹿を収納に仕舞い、今度は果物や野菜類を探す。
空間把握では、地形や木なら分かるが、その木に何が生えているのか迄はわからない、歩いて探さないとならないのだ。
他にも草など、いちいち収納しなければ詳細が見れない為、探すのに時間がかかる。
今日は疲れたし、鹿の肉だけでいいか。
果物などを探すのを面倒くさがり、鹿の肉だけを持って、近場の池に向かう。
池まで歩き、鹿の首を転移を応用して切り落とし、近くの木に鹿を吊るし、血抜きをする。
鹿の血が抜けきるまでに、木の枝を集める、森の中だ、そこら辺に沢山落ちている。
集めた枝で火をおこしたいが、火おこしの経験なんてない、洞窟から持ってきた物でなにか使えないかと思い、収納した中からランタンを取り出す。
詳細には、魔力を込めれば火がつくと書いてあったが、魔力の込め方がわからない。
板を出現させたりする時に、自分の中から何かが出るような感覚はない、魔術と魔法の違いはここにあるのかもしれないと思いつつ、板を出す感覚をランタンへと込める。
すると、ランタンに付いていたゲージが溜まり始め、ボタンが点滅する、点滅したボタンを押すとランタンに火が灯る。
ランタンの火に枝をつけるが、なかなか火が移らない。
枯葉を掻き集め、ランタンの火を移す、火が消えないように、どんどん枯葉を燃やしていき、十分な火力が出たところで枝を投入する。
これで準備は出来た、随分と時間がかかったが、鹿の血抜きも終わった頃だ、丁度いい。
鹿の食べれる部位なんて知らない、適当に切って、適当に焼けば食べられるだろう。
転移を応用し、鹿の肉を食べやすいように小さく切っていき、池で洗った木の枝に肉を突き刺し焼いていく。
いい匂いだ、しかし、肉の焼ける匂いに先導されたのか、オオカミや、ゴブリンが獲物を奪いにやってくる。
それを適当に石を投げ牽制する。何体かに当たり頭が吹き飛んだりした。
オオカミはその死体に群がり肉を貪りはじめる。
それを傍目にみつつ、肉が焼けるのを待つ。
そろそろ焼けた頃だ、そう思い手に取る、味付けはない、そのまま齧り付き、咀嚼する。
少し硬く、野性味溢れる味だが、悪くない、空腹を感じている訳では無いが、激しい運動をした後だからか、余計美味く感じる。
満足するまで肉を食べ、余った鹿の死体を遠巻きに見ていたオオカミへと投げつける。
肉はあまりついていないが、骨とか好きそうだ。適当な理由で餌付けをする。
食事をしていたら、辺りが暗くなってきた、転生してから非常に濃い1日目だ、当分の間は平穏に過ごしたい。
野営の準備をするため、洞窟から持ってきたテントを張る、張り方は知らないがそれっぽく建てられればいい。
洞窟に便利な物があって良かったが、セガルラの事を考えると労力に見合わないと思わなくもないが、考えないことにした。
火が消えないように、たっぷりと枝を追加し、テントの中に入る。
ユニークスキルのおかげだろう、寝る必要はないが、やることが無い、魔法の練習をしろとは思うが、今日は十分頑張った、練習は明日やっても問題ないだろう。
言い訳をしつつ目を閉じる。明日は何をしようか、中の見えなかった洞窟に行ってもいいが、街でも目指そうか、どちらにしろ明日考えればいい。
そう思いながら、思考は闇に沈んでいった。




