本気と決着
地面を蹴り、飛び出したは良いものの、咆哮はまたも竜巻を出現させている。
それを俺は板で抑えながら、板を様々な場所に出現させ忍者のように飛び移り、セガルラに接近する。
しかしセガルラも対抗し、竜巻を更に出現させる。
近づけない。
あの竜巻は厄介だ、いくら回復するからと言って、1度喰らえば、復活するまでに時間がかかってしまう。その間をセガルラが見逃すとは思えない。
結界を展開しつつ、対策を考える。
空間魔法って言ったらなんだ?俺が使えるのは板を出現させて、飛び移ったり相手を妨害したり、攻撃を防ぐことくらいだ。
加速する思考の中で空間魔法について考える、今使えるの技をだけで、あの竜巻を掻い潜り、懐に潜り込むのは難しい。
空間魔法で、相手の攻撃を掻い潜りながら、近づくにはどうすればいい?
悩むこと数瞬、俺は空間魔法の本領を忘れていた。
そうだ、転移!
これしかない、しかし、少しでも座標がズレてしまうと俺がピンチになりかねない。
何かいい方法はと考え、すぐに思いつく。
そうか、板を使えばいいのか。
ここ数時間の間で板を数え切れないほど使った、この板を門のように使い、座標を確保する。
作戦が決まったなら、直ぐに行動に移す。
竜巻で相手からこちらが見えなくなった瞬間を狙い、加速する思考を解除、それと同時に相手の背後に板を出現させ、対になる板を自分の目の前に出現させる。
タイミングは、竜巻を追加する瞬間、セガルラの咆哮に合わせてだ。
ーガガガガ
結界を竜巻が削る嫌な音を聞きながら、機会を窺う。
ーグァアアアアアァァア!
今。
セガルラの咆哮を合図に、板へと飛び込む、目の前の景色が一瞬で変わり、セガルラの背中が見える。
勢いを付けるため、板を足に出現させ、力一杯殴る。
ードォォォン!
『ガァァァアアア!』
確かな感触の余韻に浸ることなく追撃をする。
脚を潰そう、魔法と同時に攻めてこられたら対処仕切るのは厳しい。
重点的に脚を狙い、転移を繰り返す。
セガルラは、突然の消失と出現に、戸惑いを隠せないようだ。
対応される前にできるだけダメージを稼ぐ、さすがのセガルラでも、直ぐには対応出来ないようだ。
2発3発と、攻撃を当てていく。
こんなに簡単に攻撃が当たるなんてな…早い段階で転移に気づいていれば、もしかしたら死にかけることもなかったかもな。
自分の要領の悪さに辟易しつつ、セガルラを仕留める勢いで攻撃をするが、決定打がない。
『いい、実に良いぞ!』
興奮したようにセガルラが言う。
『久しく味わっていなかった、この闘争心、実に素晴らしい!!』
そういやこいつ、俺が死にかけた時にもこんなこと言ってたな、最初に突っかかってきたのは、そういう事か?だとしたらめちゃくちゃ迷惑だ。
早いところ仕留めたいが、火力不足だ、身体能力の制限は無くなっているはずだ、現にスピードはどんどん早くなっているし、板を展開させる速さも上がっている。
いきなり身体能力が上がる訳では無い、戦いの中で成長している、それも際限なく、しかしそれでは遅い、対応され、また振り出しに戻るのは面倒なんだ。
しかしこればっかりは何も思いつかない。
諦めて時間をかけて倒すしかないのか、そう思っているとセガルラが何かを喋りだした。
『いい、実にいい…』
またそれか、いい加減聞きあきた。
『負けてしまいそうだぞ!リエトよ!』
「なら、潔く死んでくれないか?」
『何を言う!こんな楽しい時間を無駄にする訳にはいかないだろう!』
なかなかのバトルジャンキーだ、これのせいで俺に迷惑がかかっているんだよな。
「楽しいか?さっさと終わりにしよう、お前は、どんどん成長している俺に対応出来なくなってきてる、そうだろ?」
『あぁ!そうとも!自身より強者と闘うなど久々だ!もっとだ!もっと我を楽しませろ!』
そういう事じゃないんだが…。
本格的に面倒くさい、こう、一撃で倒せるような技、ないのか?マジで。
空間切断なんか出来たら楽なんだろうけどな、転移の時と違ってイメージが0だ。
感覚で分かるが、俺のユニークは1を無限にしたり、0にする技や思考を無効化する感じだ、俺の感情はショートしていると思っていたが、一定以上まで感情が昂らないようになっている。
感情の昂りによる単調な行動をしない為にユニークスキルが感情を壊した感覚だ、彼女に裏切られた反動で0になった感情はまだ壊れている、宇宙空間であいつと会話した時に怒りは直っている。いらない感情だけが直ってしまった。
本題に戻るが、0を1にすることは出来ない、1にする作業は自分の力でやるしかない。
空間切断は練習して1にしないといけない、こいつは殴り殺すしかない。
『我も本気を出すとしよう、なるべく使いたくはなかったのだが、楽しませてくれた礼だ。』
まだ全力じゃ無かったのか、使うと言っていたから、なにか準備かあるみたいだ。
「そんな暇、与えると思ってんのかよ!」
板を無数に出現させ駆け出す。
風がセガルラに集まっていくのが分かる、真下に移動し、腕を突き出しつつ、思いっきり跳躍。
腹にめり込むが、風は止まない。
そのまま連続で腹を殴っていく、1発打つ事に威力が増して行っているはずなのに、風は止まない。
…時間切れか。
『なかなかに効いたぞ?途中まではな。』
セガルラは風を纏っていた。
それにしても、途中までだと?
『リエト、貴様はタネを言うつもりは無いようだが、我は違う、タネを伝えた上で、貴様を圧倒して見せよう!』
「やれるもんならやってみろよ」
『その強がりがいつまで持つかな?我はいま、風を纏っている、この風が攻撃をを受け流しているのだよ。』
風で受け流す?いよいよ攻撃が通じなくなった。
「だったら、受け流せないくらいの一撃浴びせてやる!」
『いいぞ!その返事が聞きたかった!』
強がっては見たが、風を突破するほどの威力になるまで、どれだけの時間がかかるか検討もつかない、もしかしたら、突破できないかもしれない。
…さっき諦めた空間切断の練習するか。
セガルラが、突進をしてくるのが分かる、風邪を纏っているからか、今までよりも数段早い、だが、成長を続ける俺には及ばない、余裕を持って回避をする。
今までだったら問題なかった、しかし今回は風を纏っていた、突進を躱したが、強力な風圧で吹き飛ばされる。
そこに追撃を仕掛けてくる。
吹き飛ばされた先に板を出現させ、そのままの勢いで転移をする。
セガルラもそのまま板へと入り込んでくる。
思った通りだ、
セガルラの体が半分が入った所で板を消滅させる。
ーザシュッ
セガルラの体は半分になり下半身は行き場を失い、地面に激突する。
上半身は俺へと向かってきている。
『ガァァァァア!』
セガルラも何をされたのか分かったのだろう、最後の抵抗と言わんばかりに口を大きく開け噛み付こうとする。
カウンターで顔を地面に向け殴りつける。
風の受け流しが発動しているかはわからないが、体の半分が無くなっているんだ、終わりだ。
『見事だ、我の本気を軽々と打ち破るとはな、』
血は、凄まじい勢いで流れている。
『我を倒したのだ、どうした、もっと喜ばんか、』
生憎と喜びの感情は壊れたまんまだ。
「随分しぶといな」
『時期に動かなくなる』
「そうか」
『…老いで死ぬと思っていた。』
冷たくあしらうとセガルラが語り始めた。
『ここ数十年、戦いと呼べるものはなかった、大きな音がした時、期待はしていなかったが、もしかしたら強者に出会えるかもしれないと、適当に因縁をつけたのだ、最初は遊びだった、しかし、我の動きに対応するリエト、貴様を見て本気を出したくなった!』
こいつは、戦いに飢えてたんだな…迷惑だけど。
『我は満足だ、戦いの中で死ぬのなら本望、実に有意義な時間だった。』
「その話長いか?」
『最後まで冷たい奴だ、もう終わった。我は寝るとする』
「そうか、おやすみ」
『…』
返事がない、死んだみたいだ。
どれくらい戦っていたのだろうか?1度は死にかけたが、終わってれば最後はとてもあっさりしていた。
「さてと、これからどうするか」




