教会とチンピラ
「お、お兄ちゃん!」
森に行くか考えていると、先程別れた妹に声をかけられる。
「ん?お前の兄ちゃんはどうしたんだ?」
「あ、あのね!お兄ちゃんが連れてかれちゃったの!」
「なんか悪いことでもしたのか?」
「ち、違うの!貰ったお金でご飯を買おうとしたの!そしたら盗んだ金だろ!って言われて、それで…」
そう言って泣き出してしまう、これだから子供の相手は苦手なんだよ、めんどくせぇ…。
「で、どこに居るんだ?」
「ズズッ…こっちだよ!」
少し泣いて落ち着いたみたいだ、見たところ5、6歳だ、もっと泣きわめいてもおかしくない。
ま、扱いやすいのには変わりないな。
妹に連れられやってきたのは串焼きを買った屋台だった。屋台の前で兄が鎧の男に連れていかれそうになっている。
「また会ったな」
「おぉ!あんちゃんか、ちょっと待ってくれ、今この盗人を連れてってもらうからよ」
「俺の連れだ、離してくれ」
「おいおい冗談キツイぜあんちゃん、こいつは前々から物を盗んでたんだ、ここら辺の奴らはみんな被害に遭ってる、」
「そうか」
「おう、だから連れなんて冗談言わないでくれよ」
話にならない、元々盗人だからといってもまだ子供だ、それに俺が渡した金で捕まるのは少し心苦し…くはないが、串焼き奢る約束だ。
「おい」
「ん?なんだ貴様は」
「俺の連れだ、離してくれ」
「貴様は盗人の仲間なのか?わざわざ自首するなんていい心がけだ、今縄を付けてやるから大人しくしていろ」
「はぁ」
ここの大人は話が通じない奴らばっかりで気分がだだ下がりだ。
無防備に近づいてきた鎧の男の手を掴み、足払いをしながら手を捻る。すると男は空中で1回転し、受け身もとれず地面に打ち付けられる。
「ぐあ!?」
「どうした!」
もう1人の男が駆けつけるが、足に石をぶつけて転ばせる。
「ぐあ!?」
同じ反応とは面白い、適当なことを考えつつ鎧の男の横を通り過ぎ兄の縄を解いてやる。
「あ、ありがとう、ございます」
「妹に感謝するんだな、わざわざ俺のところまで来たんだからな」
「は、はい!」
「行くとするか」
「まて!」
何食わぬ顔でこの場を去ろうとするが、そうは行かないらしい。
しかし鎧が重いのかなかなか立ち上がれないでいる。素通りした方が良かったな。
「貴様!我々に歯向かい無事で済むと思っているのか!」
「無事に済むと思ってるな」
「なっ…我々が誰かわからないようだな!我々はこうしゃく…ぐあ!?」
「興味ないから寝てろ」
話の途中で石を投げつけ気絶させる。周りで見ていた屋台の人たちは信じられないとばかりに、我関せずと言った感じで無視を決め込んでいた。
「串焼き2本」
「え、お、おう」
昼に買った屋台で串焼きを2本注文する。話しかけられると思っていなかった店主は戸惑ったもののいつもの慣れた手つきで串焼きを2本仕上げる。
「銅貨2枚だ」
「ほら」
「まいど!」
最後にはいつも通りのテンションに戻る、商魂逞しくて嬉しいよ、鬱陶しいが。
「ほら、案内代だ」
「え、ありがとうございます!」
「ありがと!」
串焼きを渡し兄妹の頬張る姿を見ている。
「お前達って家あるのか?」
「あるよ!」
「どこにあるんだ?送って行くが」
何だか言ってて犯罪臭が凄いな、気にしないようにしよう。
「こっちだよ!」
「え、こらまって!また人にぶつかるよ!」
妹はとても活発だ、兄が苦労してきたんだろうな。
「お兄ちゃんはやくはやく!」
のんびりと向かうとしよう、子供の急ぎ足なんて大人のゆったりとした足と同じくらいだ。
大通りを歩いていたが、どんどん脇道に入っていき、路地を通り始めた。
2人の見た目通りの場所だな、ちらほらと見える似たような格好の奴らに襲われたりしないのか?攫われて売られてもおかしくない場所だ。
「ここだよ!」
案内された場所は教会だった、屋根は所々抜け落ちており、雨漏りが心配になってくる、敷地の中には畑と井戸があり自給自足をしているみたいだ。
ギルドも教会もボロいな、今生はボロいものに縁が多いみたいだ。
「ケイ!メル!どこに行ってたの!心配したのよ!」
教会の中から若い女性が出てくる。
「あのね、あのね!お兄ちゃんが悪い人から助けてくれたの!」
「悪い人?ケイあなたがやったの?怪我はない?」
「ううん、僕じゃないよ、あの人」
言われて気づいたのだろう、こちらを見て驚いている。
「あの、うちの子がお世話になりました。それで、お礼でもしたいのですが、見ての通りボロボロでお金もなくて、すいませんが…」
「礼は必要ない、俺のせいみたいな所もあるからな。」
「そう、ですか。本当にありがとうございます。」
用もなくなったし、このまま立ち去ってもいいのだが空間把握のスキルがこちらに向かってくる人を感知している。
「シスターちゃんはいるかーい?」
「ぐへへ、俺たちへの借金返しておくれよぉー。」
なんとも気持ちの悪い奴らだ。見てるだけで腐ってしまいそうだ。
「そんな、取立てはまだのはずです!」
「そんなのどうでもいいんだよ!アァ!?借りた金は返すのが常識だろうがよ!」
「…っ」
「やっぱりよぉ、その体使って稼いだ方がいいんじゃねーのか?俺達がいいところ紹介してやるからよぉ?」
「私はシスターです!穢れた行為はできません!それに、見ず知らずの人と関係なんて持ちたくありません!」
「随分生意気じゃねーかよ?アァ?今日はよぉ生意気なシスターちゃんを無理やりでも連れてこいって言われてんだよねぇ、抵抗するなら子供がどうなっても知らないなぁ?」
「子供たちには手を出さない約束です!」
「関係ないんだよ!ガタガタ抜かしてねーでついてこい!」
男がシスターを無理やり連れていこうとしている、抵抗しているが2対1でその努力も無駄に終わっている。
「お兄ちゃんママを助けて!お願い!」
「お、お願いします!」
はぁ…ここで助けなかったらトマトが不味くなるか、めんどくさい。
シスターを連れていこうとする男の背後に近づき首を思いっきり締める。
「ぐぇっ」
「おい!どうした!」
1人がやられたことでシスターが男の拘束から抜け出す。
「ありがとうございます。」
無事な方の男は不利を悟ったのか、距離をとる。
「へへっ、残念だったな!今日は用心棒がついてるんだ!マウリッツの兄貴!やってくだせぇ!」
マウリッツか…なんかきいたことある。
「ようやく出番か、今日は虫の居所が悪いんだ、楽には殺さ、ねぇ、ぞ?え?」
「お前か」
「ど、どうしてここにいる!?」
案の定、昼間に撃退したガラの悪い男だった、しかしチンピラの用心棒とはね、兵隊に突き出せば金とか貰えないかな?
「俺が何処にいようと関係ないだろ、それで?有り金置いてくなら見逃すけど?」
「ちっ…さっき俺様がやられたのは油断してたからだ!俺様が負けるはずねぇんだ!最初から全力で殺しに行ってやる!うおぉぉぉ!」
確かにさっきよりは速いが俺にとっては同じだな。
「喰らえ!必殺!ガイアスマッシュ!」
そう叫んだ途端、斧に魔力がめぐり始める、だがあまり脅威は感じない。その程度の攻撃なのだろう。受けてもダメージはないが、わざわざ受ける必要もない。そう思い後ろに下がる。
「ばかめ!」
斧はそのまま地面に打ち付けられる、すると斧を中心に亀裂はしり、衝撃波が地面からこちらに向かってくる。
後ろにはシスターと兄妹がいる、これが狙いなのだろう、チンピラの癖になかなかいい所をつく腐ってもBランクと言ったところか、俺じゃなかったら対応できないだろうな。
衝撃波にあわせ地面に踏み込む、踏み込みによって生じた衝撃波で衝撃波を相殺させる。
「へ?」
防がれると思っていなかったのか、素っ頓狂な声が漏れる。
「必殺ね、不殺の間違いか?」
「ひ、ひぃぃぃぃ」
ゆっくりと近づいていく、脅し役だった男が逃げ出す。その足へと石を投げつける、盛大に転ぶ、しかしそれでも這いながら距離を取ろうとする。
あれは放置だな、ここの住人の獲物にでもなってろ。
「嘘だ…俺の必殺技が…」
「おい」
「ひっ」
「いい話があるんだが、助かりたいか?それとも死にたいか?」
「た、助けてくれ!いや、助けてください!何でもしますぜ兄貴ぃ!」
下っ端みたいな口調になったな、まぁいいこれからについて話そうか。




