そして②
午後の部も終了し、初めての学会参加は何とか無事に終わった。だが、先輩の会いたかった人と合流できておらず、何が何でも捕まえてやるという先輩の助手として、夜に開かれる交流会にも参加する羽目になった。
「はぁ。これだから学会後の交流会は嫌なんだよなぁ」
会場の一点を見つめながら先輩がため息をついている理由は、分かっている。
うん。
私も嫌だ。なんでありとあらゆるところと縁を切ったはずなのに、こうやって付きまとうのだろうか。
私は目の前に置かれている食事たちを見て、ため息をついた。
「じゃあ食べないでおきます?」
いたずらっぽく囁くと、いいや、食べるさ、と言って、食事の列に向かっていった。私もそれに続き、皿に少量ずつ料理を盛っていく。近いテーブルに陣取って、交代で飲み物を取りに行くことにした。先に先輩が飲み物を取りに行っているとき、周りを観察していた。
煌びやかな世界。私が二度と入るつもりのなかった景色。
ああ。どうして、神様は私をここへ導くのだろうか。私には神様の考えていることなんて、理解できなかった。
「食事を楽しんでいるかい?」
少しぼんやりとしていたら、不意に声を掛けられた。
私は驚き、声の方向を見やった。誰もが似たようなスーツ姿であったが、その人の顔には見覚えがあった。そう、午後の部で私たちのブースに来てくれた男性だった。その人はまだ若そうに見えるが、確か大学の助教だとか准教授って言っていた気がした。
「はい」
私は微笑んでそう返した。
「なら、良かった。しかし、君の上司はどこだい?」
その男性は私ではなく、先輩に用事があるようだった。飲み物を取りに行っているだけなので、もう戻ってきますよ、私はそう言って、ドリンクコーナーを見たが、先輩の姿は見当たらなかった。
「あれ、おかしいですね?」
私がそう疑問の声を上げると同時に、右腕をつかまれた。驚いて男性の方を見ると、笑った顔で、君の上司がいないなら、ちょっと君を借りても問題ないよね、と言って、歩き出した。腕を引っ張られている部分が痛い。
「ま、待ってください」
場所が場所なので、私はできるだけことを大きくしたくなく、控えめな声で叫んだが、その男性は止まらない。
しかし、その腕の痛みもすぐに消えた。
「へ?」
思わず、私は間抜けな声を出してしまった。何かが立ちふさがっているようだが、男性に阻まれていて、見えない。
「ったく。目を離すなって言ってあっただろ、馬鹿康太が。これだから国試受かっても歯医者として雇われなかったんだろうが」





