奇襲
松永久秀動きが武将の届いたのは、慶次と半兵衛が城を出て三日後のことだった。久秀は城内に利家、武将、松之助、小六しかいないことから警戒し、動いてこないと武将は思った。戦の準備をしていることが幸いし前田軍にとって絶好のけん制になっていたのだ。
「二人がいないことがかえって敵の動きを防いでいるのか…… ありがとう二人とも」
そこへ利家が深刻そうな顔で出てきた。
「武将…… 松永久秀隊を百の軍勢で奇襲したいと思う」
それを聞いて武将はすぐに反論した。
「奇襲が成功する確率は低い。それに失敗すれば敵が一気に押し寄せてくるかもしれない。今は守りを固めてくれ」
利家は笑った。
「フン…… そなた本当にそれでも軍師か? 儂はどんなことをしてもこの戦に勝ちたいと申したはずじゃ! 奇襲すれば松永久秀隊は総崩れ、そのまま追撃し、側面から松永隊を松之助軍に襲わせる。これで勝てれば戦はかなり有利に運べる」
確かにその作戦を成功させると戦の流れが一気に前田軍に傾く。それは前田にとって大きいが相手は松永久秀。何を仕掛けてくるかわからないと武将は思っていた。
「わかった。だが軍は最小限にして逃げることを優先してくれ。あんたは総大将だ。絶対に死んではいけない」
そして利家は、百の軍で松永隊を奇襲するための準備を始めた。
夜も深くなった頃利家は、密かに城を抜けて出撃し、松永隊の待つ陣着くと一気に突撃した。しかし、陣の中には、松永隊の姿はなかった。
「なんだこれは…… 陣だけ…… まさか!」
利家は、この作戦に心当たりがあった。やり方は少し違うが武将が直江との戦で行った作戦にそっくりだった。
同時に潜んでいた松永隊が一気に陣を照らし、鉄砲の嵐を浴びせた。
軍はほぼ討ち取られ、利家はギリギリで城に帰ってきた。
「利家! あんたは大将だ! 大将は手柄を取るのではなく、部下を心配してくれ!」
そして武将は、新たな策を発表するのだった。
「この奇襲で前田は今川に敵意があることを証明してしまった。だがこれはチャンスでもある。敵は前田を敗走させた勢いでこの城を取り囲む。まだ慶次たちが帰ってきてないから門を守る兵は少ないが、この戦で織田の援軍が来るまで耐えたら前田の勝ち。落城したら滅びる。前田のために頑張ってくれみんな!」
そこへ小六がやってきた。
「武将…… 兵を指揮するぐらいなら儂にもできる…… 西門を預けてくれないか?」
ここで小六が加わるのは武将としても想定外だった。
「わかった。正面が利家、南門は俺、西門は小六、東門は松之助。それぞれで守りきるぞ」
この時今までにない一体感を前田家に感じた。その頃今川・北条の連合軍は前田の城を取り囲むべく着々と準備をしていた。




