戦う理由(わけ)
「儂は、そなたが小六を失いそうなった時、同じようなことが起こったらどうするであろうかと考えた。そなた、慶次、松、小六、半兵衛…… 儂にとっては家族のような存在。そして、配下の兵たち。皆家族のような存在なのじゃ!」
あの強気な利家を変える小六の一件は、前田家にとっても大きい出来事だったのだ。
それを聞いた武将は笑った。
「利家! あんたが俺たちのことを考えてくれているのは嬉しいが、俺たちはあんたの下で天下を取るために集まったんだぜ。暴れ足りないぞ! それに家族を死なせないような策を立てることが軍師の役目だ。俺を信じてくれ!」
「そうですよ。私たちは利家様の天下を見たいです。それが武将さんを含めた全員が戦う理由です」
珍しく松之助が感情的になっていた。松之助も夢を叶えるためにこんなところで立ち止まることはできないと思ったのかもしれない。
「そ…… うじゃな…… 儂も同じじゃ」
そこには小六がいた。
「儂も武将のためなら、命を捨てて戦う…… 配下もみんなそう思っている。もっと主として堂々としていろ」
小六はそういうと倒れた。それは小六からの励ましだったに違いない武将はそう思っていた。そのボロボロの体で伝えたかったことは利家の心にも響いた。
「わかった。儂はもう迷わない。どんな時でもそなたら家臣を信じて戦う。儂についてきてくれ!」
利家の表情から迷いが消えたようだった。そして、利家の目には戦国を終わられせる野心の火が燃え上がっていると感じた。
「ところで武将。相手はどれぐらいで攻めてくると思う?」
利家は武将に具体的な質問をした。直江と戦をした時の表情に戻ってくれたことが武将は嬉しかった。
「俺の予想では、1月以内には、前田領内近くまで進軍してくると思う。井戸の件でしびれを切らせる可能性もある。そこで7日から1月と見ていいと思う」
「1月か…… まずは、織田に挟み撃ちのために書状を送る。条件としては、今川・北条の領土を前田4で織田が6で分けるでどうじゃ?」
「それはいい考えだが北条もおびき出さないといけないな…… それを考えるのに1日くれ」
必殺の策を考える間を利用して織田に援軍を頼むということで話がついた。
武将は、小六を部屋に連れていき、自分の部屋に戻り、策を考えた。しかし、考えるが思う浮かばなかった。考えた全ての策に北条が動かない可能性があった。夜になっても武将は策を考えていた。そこへ半兵衛が水を持って現れた。
「あまり考えすぎると体を壊しますよ」
美少女に気を使ってもらって武将は悪い気はしなかった。半兵衛の顔を見て策を思いついた。
「半兵衛助かった! これが北条をおびき寄せる必殺の策だ!」
「何が何だかわかりませんがお役にたてたのなら嬉しいです」
朝になり、武将が利家と約束した一日が経った。松之助が軍議の準備を朝早くから行っており、すぐに始めることが出来た。
「武将。そなたが考えた北条をおびき寄せる策とやらを聞こう」
武将は必殺の策の説明を始めた。
「この策の肝は、半兵衛お前だ。半兵衛は実際には前田の家臣だ。だが、ボロボロの所を捕らえられたと北条に噂を流す。もし今川が戦に勝って半兵衛を取り返しに来たとしても半兵衛から今川へ北条の情報が漏れる可能性がある。そこで半兵衛を直接取り返しに北条はこの戦に参加するだろうよ。奴らは同盟を組んでいるものの、心から信頼しているような仲ではない。ここに隙が生まれ、そこを叩く。後は織田の援軍と挟み撃ちにすれば前田・織田連合軍の勝ちということよ」
その策に利家は納得がいかないようだった。
「そう利家。あんたも気づいた通りこの策は、織田の動きが気づかれてしまったら終わりなんだ。だから織田が動くまでは今川・北条の両軍を前田で何とかしないといけない。そこで総崩れしてしまうと織田も返り討ちにあい、この戦は負けだ」
利家は、一喝した。
「そなたの策を何としても実行させてもらう。役割を決めておこう。まず、小六と半兵衛は武将を助けてくれ。儂と慶次の二千で正面の敵を迎え撃つ。別動隊として松之助五百と武将五百を編成して援軍に行けるようにする。最後に織田の兵で敵に後ろをとり、総崩れ。これでいいのじゃな?」
利家が聞くと武将は静かに頷いた。
「しかし、利家。お前が総大将だ。こんな所であんたを死なせでもしたら……」
すると利家は武将の肩を叩いて言った。
「そなたらは命を張って戦ってくれている。数少ない主としての姿を見せる時なんだ。なに慶次がいるのだ。安心してその戦い様見ておくがいい」
利家はこの一戦の大名としての全てをかけて戦う決意が見て、武将にも気持ちが入る。
「前田家は必ず俺が守ってみせる。上手くいけば今川と北条を喰い天下統一への一歩となる戦になるだろう。皆頼んだぞ」
前田家は、兵や武器を密かに集めて戦の準備を開始した。そして、武将の狙い通りに今川が井戸のことで書状を送り付けてきた。
「武将さん。今川から井戸のことで書状が届きました」
「やはり井戸を掘るには長すぎると言ってきたか。ここからラは織田に一仕事してもらう。慶次と半兵衛二人で織田へ行き、この書状を届けてくれ。二人なら敵に気づかれることなく関所を突破できると思う頼むぞ!」
「はい任せてください」
そして、利家と慶次は、織田に向かって出発した。
「利家! 戦の準備を続けて頼む。今川はいつ攻めてくるかわからない。今、慶次と半兵衛を欠いている状態では、前田は確実に負ける。少しでも時間を稼げるように頼む」
しかしここで思ってもいないことが起こっていた。
今川の兵を使い、松永久秀が密かに前田領近くまで兵を進めていたのだった。その報告を聞いて、今川・北条の主力四千も城を出て前田に気づかれない所で待つという松永久秀の策だった。
武将は、松永久秀の軍に気づかなかったのだった。




