第85話:大気圏突入あるいは降りた先がハワイ!?
ガソタムが大気圏突入を始めようとしている。
大気圏にある空気の層が容赦なく機体を叩きつけるように
徐々にその振動が大きくなってくる。
それと同時にディスプレイに映っている地球の青い色が
だんだんと赤みを帯びつつもある。
「バロ!早く!早く!耐熱バリアのやり方!」
「レイ様、そんなに慌てなくても大丈夫でございます。
落ち着いて私の指示通りに操作を行ってください」
バロの指示通りに左ディスプレイのコンソールを叩くと、
画面に緑色のプログレスバーが走り出し
最後に「耐熱バリア展開完了」と表示がでた。
機体の外壁を、淡い青白い光の膜が包み込む。
同時に、これまでコックピットを震わせていた振動が、
嘘のようにピタリと収まった。
「張れた……? 張れたよね!?
これでもう大丈夫なんだよね!?死なないよね!?」
「はい、耐熱バリアの展開を確認しました。
これで外気温が2000度に達しても、
内部への熱伝導は完全に遮断されます」
ふう、とシートにもたれかかり、
とりあえずは、命の危機が去ったことに安心する。
「後は戻った時どうなるかだね…
バロ、やっぱり自衛隊とかに捕捉とかされるのかな?」
町を守れたことには納得しているが、
無断でガソタムを起動させたんだから、きっと
私は捕まるのだろう。
いや、後悔はしないって決めたから…
みんなが助かったのだからいいのだけどね…
「いいえ、レイ様、
大気圏突入が終わりましたら、そこから日本へ
戻らないといけませんので、
すぐに取り囲まれるわけではないです」
「日本に戻る?なんで?」
「地球は自転してるのですよ?
宇宙に行っている間に位置がずれるのは
当たり前ではないですか。
このまま進みますと高度15kmに来たときの位置は
ハワイの少し手前ぐらいになりますな」
「ふーん、まあ宇宙に行っていたんだからしょうがないか
じゃあ、迷子にならないようにちゃんと
日本の方向指示してよね」
家に帰れるか、自衛隊か警察に逮捕されるか
どうなるのか、今の私には予想がつかないが
とりあえず、もう休息がとりたい。
意外と、ガソタムのコックピットにいるだけなのに
疲労感が半端ないのだ…
「かしこまりましたレイ様、
では日本までのルート案内を開始いたします。
到着予想時刻は残り2時間50分です」
「はいはい、って、今変なこと言わなかった?
到着時刻が2時間~とか?」
「はい、現在地ハワイ上空、日本から6000km地点、
マッハ2で飛行した場合およそ3時間近くかかります。
到着時刻残り2時間49分30秒です」
「え~!?疲れてるのに!?私、疲れているのに!?」
「自動操縦モードに切り替え、お休みになられては
いかがでしょうか?
簡単なお食事もご用意できますが?」
「いや、もう、ガソタムから早く降りたいんだけど…」
私の希望はむなしくかき消され、
ただただ、この狭い空間に居続ける拷問が続く。
げんなりした顔でディスプレイに目をやれば
先ほどまで真っ赤だった空がすっかりと
真っ青の空へ変わっていた。
ここから約3時間か…早く私を解放してよ…




