第78話:絶望のシステムエラーあるいはガソタムを信じる心
おじいちゃんのカウントダウンが続けられる
カウント、15…14…13…
ビィィー!…
警告音と共にカウントが途切れた。
なに!?何の音!?
「すまん、レイ、
火器管制システムにエラーじゃ…
このままではレイが握るレバーのトリガーを引いても
ショットガンは射出されないぞい」
「…えぇぇぇ!なんでこんな時に?
ショットガン撃てなかったら町がやばいんだけど!?
「出撃の時にシステムチェックをしなかったせいじゃ…
…こうなったら仕方がない!
レイ!マニピュレーター操作で直接ショットガンの
トリガーを引くんじゃ!今すぐ!」
「そ、そんなこと急に言われても…」
突如降ってわいた緊急事態…
今の私の顔は顔面蒼白になっているはずだ…
え、えっと、ガソタムの指を個別に操作するのは…
前、シミュレートで何回かやったはず…
まず、オートモードからセミオートに切り替えて、
いや、完全マニュアルモードだっっけ!?
切替!切り替えはどれだ!
頭の中で思考がグルグル回る
私は完全にテンパっていた…
「レイ!来る!」
――ズンッ!!!
「…あ」
コックピットに乗っていても分かる鈍い衝撃音
ガソタムのすぐ横を物体が一瞬で通り過ぎて行く…
一瞬思考が停止しそうになるが、無理やりそれを
押しとどめる。
ここで止まったら町が…みんなが…
レバーを操作し、上向きだったガソタムを下向きへ
フットペダルを力強く踏み込む。
それに呼応して飛行ユニットのスラスターが再度火を噴く
「まって!…いかないで!…」
再びのしかかる強烈なG
でも、そんなことかまってなんかいられない!
方向転換したときにはミサイルは既にはるか先…
ミサイルが噴き出すロケットエンジンの
淡いオレンジの光が小さく見えるだけだった…
それでも…追わずにはいられない…
「お願い…待って…」
私の願いもむなしく、ミサイルの火の光は
どんどん小さくなっていく…
「レイ…もう無理じゃ…
弾道ミサイルのスピードは約マッハ10…
対してガソタムの最高速度はマッハ2、
追いつくことは不可能じゃ…」
嫌!そんなの嫌!
あのミサイルが町に着弾したら…
みんなが…
サキ!チカ!…
気が付けば頬の上を涙が流れていた…
みんな関係ないのに…
みんな普通に生活していただけなのに…
こんな理不尽な…
それでもスロットルのレバーを緩めることは
私には出来ない…
他に…他に何か方法が無いの…?
「レイや、お前さんは様頑張った
このまま追いかけても、つらいものを
見るだけじゃ…
もう、追いかけなくても誰もレイを責めないぞ」
おじいちゃんが、とてもやさしい声で私に
ささやいてくる…
そっか、私守れなかったのか…
スロットルを握る手の力がわずかに抜けようとしたとき
私の胸元のペンダントが淡く光る。
これは…九条さん…
急いでペンダントを握り締め
「九条さん!早く逃げて!
私…私だめだった…ミサイルを止められなかった…」
半ば泣きじゃくる言葉で九条さんに伝える
せめて九条さんだけでも生き延びて…そんな思いに…
「うららさん!しっかりしなさい!」
九条さんの一喝
わずかに緩めようとしたその手に再び力が入る
「状況は私にもわかってるわ
ミサイルを迎撃出来なかったのってことも…
でもね、うららさんは分かってないわ
源造さんがどれだけ天才だったのか…
源造さんが造ったそのロボットがどれだけすごいのか」
九条さん…
「大丈夫…うららさんなら出来るわ
源造さんを、源造さんの作ったそのロボットを
信じてあげて」
九条さんの言葉に絶望で染まり切った私の心に
ふつふつと闘志が湧いてくる。
そうだ、おじいちゃんの事を私が信じなくて
どうするんだ!
おじいちゃんのガソタムを!




