第76話:発進準備完了あるいはのしかかるお相撲さん
静かな山間…
周りには畑しかないところにポツンと一軒家が
しかし、静かだったその時は終わりを告げた。
今までそこが定位置だった私の家が
鈍い音を立て少しずつずれていく。
ズズ、ズゥゥゥゥゥゥゥン
今まで一回もそのからくりを作動させていなかったせいか
家と土地の境界にある土が引き裂かれるように
崩れ落ちる…
家の前の畑だったその土地も左右に開き
その役目を待ってましたと言わんばかりに
地下から重厚な金属のレールがせり出していく。
って
「おじいちゃん!、発進にこんな演出いらないよ!
早く!早く出撃しないと!
こんな無駄なことしないで早く発進させて!」
「無駄とはなんじゃい!無駄とは!
レイには男のロマンっちゅうのが分からんのか!
だいたい、元々こういう作りにしてるから
仕方ないじゃろ!
これでも最速で展開してるんじゃわい!」
ミサイルは既に発射されてしまっている。
男のロマンって言うけど私は女だ!
男のロマンなんてわかるわけない!
そんなことより早くしないと間に合わなくなっちゃう!
「大丈夫じゃ、およそあと15秒で発進出来る。
あと言っとくぞ!、
さっきは高度200kmで迎撃すると言ったが
もう間に合わん!
最速で射出して高度100km時点で迎撃する!」
100km地点…
そうかもう悠長に200kmも飛んでられないのか…
「つまり、着弾するために落ちてくるミサイルを
撃破しなくてはならん!
相手は弾道ミサイル、マッハ10で上から降ってくる
ミサイルを止めるのじゃ!」
そう、ミサイルを止めなければサキ達が…って
マッハ10!?
えっ?ミサイルってそんなに早いの!?
そんなの迎撃できるの?
「さっきわしが言ったじゃろ!
ショットガン系の武器を装備していると
ショットガンは弾が一発じゃない
無数の弾を撃ち出して対象を破壊する武器じゃ!
弱点として射程がめちゃくちゃ短いが、しかし
わしが合図してレイがトリガーを引けば
それで終わりじゃ!」
そ、そうよね
おじいちゃんが力を貸してくれる。
おじいちゃんと、おじいちゃんが作ったこのガソタム…
絶対に迎撃出来る。
みんなを守れる!
「あと、もう一つ…
さっき、発進時にかかるGは
ジェットコースターぐらいと言ったのじゃが状況が
変わった…
だいたい6Gほどの圧力がかかると覚悟しておけ!」
6G?6Gって何?
さっき、2~3Gがジェットコースターぐらいって
言ってたけど、本当はそれもよくわかっていなかった。
「Gとは重力のことじゃ!
1Gが今の体重、6Gって事は自分の体重の6倍が
その体にのしかかってくるって事じゃ!
発進の時にレイの上にお相撲さんが乗ってくる
かんじかの」
「お相撲さん!?そんなの
耐えられるわけないじゃない!?私は普通の
女子高生なのよ!?」
「別に本当にお相撲さんが乗っかるわけでは
ないぞい、発進加速の時、マッハ2に達するまで
その重量がかかるってだけじゃ
それに、慣性制御システムのおかげでこれでも
Gを抑えてる方なんじゃが、
本来であれば10Gぐらいかかるはずなんじゃぞ」
10G…
つまり自分の体重の10倍…
そんな重圧がかかったらみんなを守る前に
私が死んじゃうじゃん…
そうこう話していると発進準備が整ったらしい
ガソタムの背中に取り付けられた飛行ユニット…
コックピットのディスプレイに表示された
現在の状況を表す図をみるとなるほど
確かに飛行機の翼とジェットエンジン的なものが
付けられていた。
「よいかレイ!
6Gの重圧は強烈じゃ!絶対に意識を保て!
気を失ってはならんぞ!」
おじいちゃんの言葉に、目をつむり
軽く一呼吸…覚悟はできた…
絶対に起動させないと誓ったこの機体
動かしたら私の人生が終わると
必死に隠し通してきたこの機体
しかし今は…この町を守るために
起動せざるを得ない…
ガソタム…
今まで廃棄できないとか迷惑とか言っていたの
虫が良すぎると自分でも思うけど…
お願い、みんなを守るために力を貸して!ガソタム!
ガソタム発進口から覗く空をにらみ
スロットルを強く、強く握りしめ…
「うらら、行きます!」
スロットルを全開にし私はみんなの未来の為
ガソタムを発進させた。




