第74話:絶望の葛藤あるいは未来への決意
「…レイ様、さらに残酷な事実があるのですが…
おそらく、住民の避難はほとんど間に合わないと…」
「なんで!?だって!?
すぐにJアラートが鳴って避難をするんでしょ!?
「いえ、残り30分ではこの町の住民全員が
隣町へ避難を完了する事が出来ないでしょう。
この町には大きな道路もありませんし、
鉄道も一両編成の電車では輸送が間に合いません」
「そんな…
もしかして私が…私が考えなしに反対運動なんか
したから…だから電車が…」
私が、ガソタムを隠したいから…
自分の都合を優先して反対運動をしたから…
新しい路線が作られていれば避難が間に合っていたのかも
「レイ様落ち着いて下さい。
仮にレイ様が反対運動を起こさないで
新しい路線計画が進んでいたとしても
この期間では完成はしておりません」
それでも…
後悔の念が私の心を締めつける…
バロは私は関係ないと言ってくれる…だけど…
「私の計算ですと、この町の住民が避難できるのは
30分ですと駅周辺にいる人と
県境で車を所有している人…
およそ町の住民の3分の1が避難できるかと…」
3分の1…つまり住民の3分の2以上の人は死んじゃう…
その中に、サキやチカ…
学校の同級生の人が入っているのか…そんなの嫌!
「バロ!みんなを!全員助ける方法は無いの?
サキ達が…みんなが死んじゃうなんて私嫌だよ…」
「レイ様…
レイ様はそれを覆す力を持っています。
しかし、私はその方法は推奨いたしません」
ガソタム…
バロとの訓練でミサイルを打ち落とす訓練も行った…
ガソタムを起動させないって、絶対にさせないって
思っていたけど…
もし、起動させたら…起動させてしまったら…
私の中で起きる葛藤…
本当にそれしかないのか…
それをしてしまった後、みんなを守れても
私はどうなってしまうのか…
私のその葛藤を見透かしたようにバロが口を開く
「レイ様…いまレイ様が何を考えているかだいたい
分かります。しかし…
それを実行してしまったらレイ様の人生はそこで
終わってしまう可能性があります。
どうか、冷静にご判断を…」
バロが言うことも分かっている。
いつか九条さんが家に来たとき言っていた言葉。
日本は法治国家…
いくらみんなを守るためでも、勝手に兵器を動かしたら…
私はもう、普通の生活には戻れないだろう。
でも…
みんなが…
サキやチカ…
この町の人たちが死んでしまうのは…
そんなの絶対にいやだ!
「バロ!おねがい!
私はこの町のみんなを死なせたくない!
力を貸して!」
「…レイ様、冷静になってください…
お気持ちはわかりますが、ガソタムを起動させて
しまいますとレイ様は犯罪者となってしまいます。
この家に居ればレイ様だけでも守れます。
どうか…」
犯罪者…
でも、ここで何もしなかったら私は絶対に後悔する。
目を閉じ、助けられなかった後悔と
犯罪者として捕まった時の後悔…
自分の中で想像して比べてみる。
この家に来てからいろんなことがあった…
ガソタムを隠すために、よく考えないで
感情のまま行動してしまい、いろんな人に迷惑をかけた…
だから…
だから…考えろ、どちらの後悔が嫌か…
ちゃんと考えるんだ…いや、考えた…
みんなを助けなかった自分が…
みんなを見捨てた自分が…
絶対にその方が後悔する!
「私決めた!
このまま何もしなかったら…
何もしなかったら絶対に後悔する!
だからバロ!いやおじいちゃん!
力を貸して!」
「…」
数秒の沈黙…
沈黙の後バロのホログラムが執事の姿から
私のよく知ってるおじいちゃんの姿に変わった。
「本当にいいのじゃな?レイ?
後戻りはできないぞ?」
「うん!」
居間にあるビーズクッションがガソタムの操縦シートに
変化していく。
大丈夫!絶対にこの町を守ってみせる!
だれも死なせたりはしないんだから!




