第72話:絶望のサキあるいは盛り上がらない焼肉
ジュゥゥー!!!
テーブルの上の網…
網の下には火のついた炭が燃え盛り
その上では牛さんの高級肉がその熱を吸収して
何ともいえない、おいしそうな音と香りを醸し出してた。
…今日の夕食は焼肉か…
普段であれば、3人の中で一番元気がいいサキは
「わ~い、やっきにく!やっきにく」と
はしゃいでそうなのだが…
サキの方に目線を向けるとどんよりと落ち込んでいる
様子を醸し出している。
それでもチカが、程よく焼けたお肉をタレ皿に
取ってあげると、黙ってそれを食べている。
美味しい焼肉のはずなのだがこの空間の空気は
かつてないほどに重くどんよりとしていた…
「だ、大丈夫よサキ…
まだ、夏休み一週間あるし、ちゃんと終わるわよ」
サキに根拠のない慰めの言葉を投げかける。
こんな時どんなフォローを入れればいいのか
私には想像がつかなかった。
話しかけてもサキは一点を見つめながら
黙々と肉を頬張る。
チカは野菜も食べなさいと言うつもりなのか
サキの前にサラダを置いたが、サキは
そのサラダをつまむと焼肉のタレ皿にドバっと付けて
食べ始める。
もう、心ここにあらずといった感じだし…
「レイ様、サキ様、やはり夏休みの課題は
私がお手伝いするのはいかがでしょうか?
いえ、問題はありません。
サキ様の筆跡を100%再現して課題を作成する事が
可能でございますので」
「バロ!さっきもていうか…お昼にも言ったけど
それはサキの為に……
…もう、それしかないわよね…」
バロの提案に対して待ったをかけようとしたが
サキの宿題のペースを考えるとそれもやむなしかも
しれない…朝見たサキのペースだと
残り一週間ではとても間に合わないかも…
「サキ? サキの課題後何が残ってるの?
一週間で終わりそう?」
私の質問に反応したのかサキはピタッと
箸を止め、小さな声でつぶやく…
「…数学の問題集と、英語の翻訳…
理科と社会のプリントは手を付けてない…
工作の貯金箱は作った…」
…工作ってなんだろ?今回は自由研究とかは
無かったはずだけど…ま、まぁほとんど終わって
いないってことね…
「サキ、どうする?バロが言った通り
手伝ってもらう?それとも自分で頑張る?」
サキ…この子は天真爛漫…
明るく元気な性格で、とても人懐っこい子…
でも。私は知っている。意外とサキは真面目っこなのだ…
だから、多分サキはバロに頼ったりしないんだろうな。
少し間をおいて私の予想通りの答えが返ってきた…
「ううん、ありがとうらら、バロ、
でも最後までがんばってみるよ、
終わらなかったらしょうがないしね、ハハハ…」
ふむ、自分で頑張るのは良い、でも
やっぱりサキが先生に怒られる未来は見たくない…よし!
「じゃあサキ、せめて私のノートとプリントを貸すから
それを参考にするってのはどう?
先に回答を少し見るだけでも違うと思うんだけど」
「良いの!?うらら?、いや、でも悪いよ~」
と言いつつ手を前に出して受け取るそぶりをするサキ
そうそうこの明るく憎めないのがサキの
良いところだよね。
私は、クスっと笑い、自分の終わった
宿題をサキに手渡した。
それからの夕食はさっきとはまるで別世界のような
雰囲気の中、楽しく食事ができた。
食べた焼肉のカロリープライスレス




