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起動させないしガソタム〜おじいちゃんが地下に残した遺産ーTrue Story~  作者: じょん-ドゥ


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第7話:勝利の代償あるいは路地裏の後悔

市役所と対決したその日の夜

私の思惑は、予想以上の成功をおさめた。

 

あの話し合いの様子は夜のニュースで取り上げられて

瞬く間に全国に広がった。

 

ニュースキャスターのコメントでは

「強引な再開発を進めたいがために、

 女子高生を脅すなんてありえない」

なんて言う始末。

 

ようするに、世論の中での構図では

市役所がその権力を使って、しかもその担当者、

市民の味方であるはずの公務員が、

善良な市民でしかも子供を脅してまで

その子供が持っている物を奪おうとした。

 

私の思惑通り、完全に炎上した。

くっ、くっ、くっ

市役所は完全に正義対悪のイメージがついたようだ。

 

翌日、市役所にはクレームの電話が殺到したらしい

それも全国から。

 

「安室という担当者の態度はなんだ!」

「公務員が市民に圧力をかけるとは何事だ!」

 

そんな全国からのバッシングに押され市役所側は、

再開発の撤退を余儀なくされた。

 

今後、強引な開発計画とかは出てこないだろう。

 

勝った、とりあえずガソタムがバレる事態は回避した。

が、しかし…

 

「行ってきま~す」


学校に登校するため玄関を開ける。

パシャッ!、パシャパシャパシャ!

ものすごい数のカメラのフラッシュ。

 

さらにはテレビカメラまできてる…

 

「古谷さん、今回の騒動について一言!」

「こっち目線くださ~い」

 

メディアからの集中攻撃…

もしここで、「うるさ~い!」なんて言ってしまったら

私の勝利は覆ってしまうだろう。

 

精一杯の作り笑顔で、答える。


「おじいちゃんとの思い出の家を守れてよかったです」

 

少しの間の我慢だ…

いつかはこの話題も風化する。

それまで耐えればいいのよ!がんばれ、うらら!

 

学校に着いても気は休まらない…

校門を通過すると突き刺さるような視線を感じる。

 

テレビや新聞、SNSの話題を独占しているんだ

みんな知らないわけはない。

 

「ヘルメットの人だ…」「あの涙感動したよね…」


なんて、あちこちから聞こえる声…


これも我慢よ…耐えるのよ、うらら!

なんて思いながらも教室に到着

早速サキが声をかけてくる。

 

「うらら、おはよう!、マジ有名人になっちゃったね!」

 

サキがスマホ片手に飛びついてきた。

画面には泣いている私の顔のアップ画像が表示されている

 

…やめて、それを見せないで、そんなあざとい自分を

見たくないから。

 

「聖女うらら、って呼ばれてるらしいよ。

 すっごい人気だね」

 

「サキ、それは言わないで…自分でも恥ずかしいのに」

 

…私は静かに暮らしたいだけなのに

 

しかし、あんまり目立ってしまって大丈夫だろうか?

住所とか特定されないよね?

私を見るために家まで押しかけてくるとか無いよね?

 

げんなりした顔で自分の席に着席する。

早く、風化してもらわないと私の精神がもたない…

 

放課後になってもそそくさと家に帰るようにしている。

本当はサキ達とカラオケとか遊びに行きたいのだが、

どこにマスコミが待ち構えているか分からない…

 

ただでさえ、イメージが聖女とか言われているのに

遊んでるところを押さえられたらどんなことになるのか…

「聖女うらら様、学友と熱唱!」なんて

週刊誌に載るのは勘弁してほしい…

 

最悪、今回の勝利が逆転するかもしれない…

 

私はなるべくマスコミに会わないように、路地裏などを

選んで帰宅の途に就く。

 

そんな路地裏を歩いていると、何やら壁を背にして

立っている人物が一人。

今は会いたくない人ナンバー1、安室だ…

 

「今回は、やってくれましたね」

 

安室は静かに語り掛けてきた。

再開発をつぶされたから仕返しに来たのだろうか…

緊張しながらも、私は応答する。

 

「安室さん、なんの用ですか?

 待ち伏せとかひどいんですけど」

 

安室さんは同じように静かに話を続ける。

 

「今回の件で市役所のイメージは最悪になりました。

 誰かが責任を取らなければいけないということで

 辞表を出しました」

 

「えっ!?…」

 

突然の事実に私の鼓動はさらに速くなる。

辞表…私は別にそこまでは望んでない…

ただ…ガソタムを隠せればよかっただけなのに…

 

「気にしないでください、これは僕の意思ですから、

 ただ、古谷さんにこれだけは伝えたくてね」

 

気にするなと言われても気にしてしまう…

私の迂闊な行動で人の人生を変えてしまった…

 

「勘違いして欲しくなかった…

 僕もこの町への愛着はあるつもりです。

 いたずらに開発を進めていたわけではありません」

 

「しかし、あの日、あの会議室で説明した事もまた事実、

 変わらなければいけない物もあるんですよ」

 

そんなことは理解している。

発展が無ければその町はどんどん衰退していくだけだ。

 

「そんなこと言われても困ります。

 でもおじいちゃんの家が無くなったら困るんです」

 

安室はふぅ、とため息をつき

 

「それならば線路敷設のエリア変更を申し出てくれれば

 よかっただけです。

 さきほども言いましたが私もいたずらに開発を進めて

 いたわけではないんです。

 話し合いで、より良い代案が生まれたかもしれない」

 

安室は「まあ、いまさら遅いですけどね」と言って

私に背を向け歩き出していく。

 

「もう会うことはないでしょう。それでは」

 

しばらくその場に立ち尽くし、去り行く安室の背中から

目を離すことが出来なかった…

私はもしかして、大変なことをしてしまったのでは…

 

私はどうすればよかったのだろう…

いや、さっき安室が言ったセリフ

あれがきっと正解だったのだろう。

 

私はガソタムを隠す。自分の都合で…

自分の都合を押し付けてしまった。

 

安室の姿が見えなくなっても私の思考は止まらない…

それから、どう歩いてきたのか覚えてない…

 

気が付いたらおじいちゃんの家の居間に

制服から着替えもしないでうずくまっていた。

 

「おじいちゃん、私、とんでもない事しちゃった…

 どうしよう…、苦しいよ…

 おじいちゃん助けてよ…」

 

どんなに願ってもおじいちゃんが現れることはない。

それはわかっているが、願わずにはいられなかった…

 

その時、なにか「カチッ」という音が聞こえた。

そのあと、ヴィィ~と何かの駆動音。

 

ガタガタと大きくなりつつある音に私はあわてて

 

「なにっ?泥棒?ネズミ?」と声を上げると

 

畳の一部に穴が開きそこから

丸い物体がせり上がってくる。

 

私が驚きのあまり、動くことができず

その場で硬直していたのであった。


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