第6話:最後の決戦あるいは乙女の涙
反対運動を何日か続けているある日
私にとって最悪の方向へ事態は変わった。
…なんと、反対運動でデモ活動をしている私の姿が
SNSで大バズリしてしまった…
誰だよ、動画なんて撮っていたやつ…
それが、「郷土愛溢れる美人女子高生」として拡散され
新聞やニュースで大きく取り上げられてしまった…
…なんてことを、私は美人でもないし郷土愛なんて
これっぽっちもない。
ただ、違法な地下室とガソタムを隠すのに
必死なだけだ。
スマホでネットニュースを見るたびにトップページに
メガホンを持って叫ぶ姿の写真が表示される。
…すごく目立ってしまっているけど、
大丈夫、と自分に言い聞かせる。
反対運動をやってる女子高生の家の地下に
地下室に巨大ロボット(ガソタム)があるなんて
誰も想像しないはずだ。
そんな思いの中活動している私に
リーダーの岡田さんから告げられる。
「うららちゃん、市の広報からこれが届いたぞ!」
岡田さんが持ってきた封筒の中身を見てみるとそこには
市役所からの公式な呼び出しが記されていた。
世間で話題になっている抗議活動
市としても対応をしないわけにはいかないのだろう。
新路線の敷設の要でもある土地の所有者の私を含め
反対メンバー数名と市の担当者との話し合いの場を設ける
と書かれていた。
ここしかない…
ここで決めなければ、地下室が…
ガソタムの存在が明らかになってしまう…
話し合いにはテレビ局のカメラも入り報道されるらしい
私は絶対に負けられない。
マスコミが入るなら、私にも考えがある。
開発担当者、首を洗って待ってなさい!
直接対決の日
市役所で通された会議室
私は用意された椅子の一番前の真ん中に座らされた。
もう完全に私が代表者みたいに認識されている。
ここまで来たらやるしかない!
毒を食らわば皿までよ!
開発担当者とその上司あと数名が席に着いた。
けたたましく光るカメラのフラッシュ。
テレビカメラの録画を知らせる赤ランプが点いたことを
確認して私は静かにしゃべりだす。
「この町は、おじいちゃんが愛した思い出の土地なんです
おじいちゃんの土地を私から取り上げないでください」
顔を伏せ、その瞬間用意していた目薬を隠すように
目元に流す。次に顔を上げたときには
私の両眼から大粒の涙が流れてる。
その瞬間またもやカメラのフラッシュが。
「おじいちゃんとの思い出がたくさんつまったあの家
そこに暮らすのが私のささやかな幸せなんです」
私はカメラ目線で可憐な声を震わせた。
いや、声が震えているの
はガソタムが見つかる恐怖のせいだけど。
「そんな私の家、思い出の土地を…
私の小さな幸せを奪わないでください」
・・・やりすぎたかな?
いやでも、メディア的にはこの方が良いのでは?
記者たちが思わず「おおっ…」と声を漏らす。
これだけ言えば再開発計画も変更になるはず。
さすがに線路敷設の場所を変更して開発するなんて
反対運動の代表的な立場ではさすがに言えない。
勝利条件は開発計画の白紙のみ
「お願いです… 大好きだったおじいちゃんの
愛したこの町を変えないで」
最後に、カメラに向かって祈るように手を組んで
フィニッシュ!これで完璧よ!
と、再開発白紙化が成功したと手応えを感じていた
だが、そこで開発担当者が口を開き
その担当者が名乗った名前に私は凍り付く。
「開発担当の安室です」
安室?
子供の時におじいちゃんに聞いた私の名前の
由来がフラッシュバックする。
安室…、安室姓…安室と結婚したら
…安室麗…
呆然としている私には気が付かず、
担当の安室さんは話を続ける。
「古谷さんの感情は理解できました。ですが
この再開発にはこの町の未来がかかっているんです」
淡々と再開発の必要性を説明していく。
住民の高齢化、人口減少、市のインフラ老朽化
その他にも様々な事項を説明していく。
「再開発がされない場合、この市に未来は
ありません。感情論では問題を解決できないのです」
安室さんの説明は完璧だ。
その話を聞いていた他のメンバーは
「若造のくせに何言ってやがる」なんて
ブーイングを上げていたが、このままでは結果は
覆らないだろう。
正論の理屈をぶつけて有無を言わせない…
反論の隙がまるでない…
しかし・・・
私には奥の手がある。
私は再びカメラ目線でわざとらしく両手で顔を覆う。
そして私の必殺技
「うっう… 安室さん…市役所は冷たいんですね…
理屈が通れば私達の心はどうでもいいんですね?」
顔と指の隙間にはさっき使った目薬がある。
カメラ目線で涙を流す。
これが私の最終必殺技「乙女の涙アタック」
「私はただ、思い出を大事にしたいだけなのに…
こんな怖い思いをさせるなんて…ひどいです…」
メディアの記者が全員私の涙に注目する
再度けたたましく光るカメラフラッシュ
安室さんは眉間にしわを寄せて沈黙していたようだが
…勝ったな。
マスコミと女性の涙には敵わないだろう。
どんな正論でも画面映えには対抗できない。
私は心の中で力強くガッツポーズを決めた。




