第67話:夏休みの義務あるいは格闘する翻訳
お盆を過ぎて数日。
今日はサキとチカを呼んで、
宿題の追い込み作業をしようということになった。
とはいえ、自分の分はほとんど終わっている。
あと残っているのは英語の翻訳か……
昨日サキから……
「うらら~、お願い助けて~
人生最大のピンチだよぉ~」
と、電話を受けたのだった。
その電話を受けてチカと連絡を取り合い、
一緒に宿題を終わらせることになった。
家の環境であれば、
宿題が終わるまでサキを缶詰にすることだって可能だ。
最悪、サキを監禁?状態にして
何とか宿題を終わらせようって作戦だ。
「うらら~本当にありがと~
じゃあ、早速ノート貸して~」
サキが私のノートに伸ばしたその手を
チカが途中で迎撃する。
ペシッ!
「ダメよサキ、丸写しはサキの為にならないよ
分からないところは教えてあげるから自分で
やりなさい! うららもそれでいいわね?」
うん、私も激しく同意。
やっぱり本人の為にならないもんね。
サキはチカのその言葉を真摯に受け止めたのか
ちゃぶ台に置かれた自分のノートに向き合った。
10分後……
「みなさまお疲れ様で御座います。
ここらへんで休憩などいかがでしょう
頭脳を使った後は甘いものが最適ですよ」
「…」
バロが、豪華なティーセットを抱え居間に入ってくる
って、まだ始めてから10分なんだけど!?
「わ~い、休憩だ~、おやつ、おやつ~」
「ちょっとサキ、まだ10分しかたってないんだけど?
っていうか、10分でまだ一問も解いてないんだけど?」
サキがいま取り掛かってる宿題は数学、
数学の問題集の一番最初のページの一番上
その問題を頑張って解こうとしているのは、
分かるんだけど、頑張りだしてから10分…
「ちょっとバロも、
たった10分で休憩とか言わないでよ!」
「おやおや、レイ様、
頭脳を効率よく使うには適度な休憩が必要ですよ」
「だから、その適度が早すぎるって言ってるのよ!」
本当にこの執事は…
私だけじゃなく若い女子が家に来ると
理由を付けて邪魔しに来るんだから…とにかく…
「いいから!邪魔しないで!
いまサキに集中させるんだから!」
「その割には、あまりはかどってないご様子ですが…
もしよろしければ私が宿題を代行しても…」
一瞬サキが「えっ!いいの?」と目を輝かせて
反応するが、隣に座っていたチカがキッとにらみつけて
サキの天国ルートをブロックする。
「もう、バロは邪魔しないであっち行ってなさいよ
あっ、お茶だけは置いて行ってね、
お菓子はまたあとで」
まあ、せっかくお茶を淹れてくれたんだから
冷めてしまってはもったいない。
そこはありがたく頂くか…サキの方を見ると
「え~お菓子も~」なんて言ってるけど、
お菓子なんかに手を出そうものなら
ガールズトークに花が咲いてしまうだろう。
ここはぐっと我慢だ。
しかし、サキ
問題集の一ページも進んでないなんて
夏休み遊びすぎではないか?
一問10分ペース…
数学の宿題が終わるのはいつになることやら
あれ?そういえば…
「チカ?チカは宿題やらないの?」
「私?私は7月中には全部終わらせちゃったよ?」
おぉう、さすがの高スペック
「写させて!」って言葉が喉元まで出かかっちゃったよ…
サキの手前、写させてもらうわけにはいかない。
私も頑張らないと…
一人悠々とお茶を楽しんでいるチカをしり目に
サキは数学を、私は英語の翻訳に集中するのであった。




