第62話:おじいちゃんの男気あるいはおせんべいおいしい
バロが空中に映し出している映像には
まだまだ続いていた。
女性(若き日のおばあちゃん)を追いかけていた
男連中を追っ払った
男性(若き日のおじいちゃん)
は、ゆっくりと女性の方に近づいていき語りかける。
「怪我はしてないかい?
何か事情があるのだったら力になるぜ」
女性は、腕の中の赤ん坊を強く抱き締め、
少しずつ、その重い過去を語り始めた。
「実は…結婚して子供ができたまでは良かったのですが、
子供が…子供が出来てから…旦那が豹変して、
お酒とギャンブルに嵌り…
しまいには私に、暴力を振るうようになったんです」
「…」
男性は女性が語るその言葉に
静かに耳を傾けていた。
「最近では仕事にも行かなくなって…
怪しいところから借金をするようになって…
さっきの男たちはその借金取りだったんです。
…
お金を返せなければ、いい仕事を紹介してやるって…
無理やり連れていかれそうになって…隙を見て
逃げてきたんですけど…もうだめだって…うぅ…」
女性は、最後には泣き出してしまった。
やくざみたいな男連中に追い掛け回されれば無理もない。
男性は自分が羽織っていた上着を脱ぎ
優しく女性にかけてあげた。
「わかった。とりあえず俺の家に来な。
安心しろ、変なことはしないぜ、赤ん坊も、
こんな寒空の下じゃ、かわいそうだ」
男性は手を女性に差しだしたが
女性はその手をすぐにはつかまなかった。
今さっき、こわもての男連中に追われていて
男性に対して恐怖を感じているのかもしれない。
しかし、男性は女性を急かすようなことはしなかった。
映像の中のおじいちゃんはとてもやさしく…
その差し出された手はとても暖かいイメージを
彷彿とさせる。
しばらく時間を置き、女性は
恐る恐る男性の差し出したその手を握り
男性が女性を起き上がらせる。
「助けて頂いて有難うございます。
でも…これ以上初対面の方に御迷惑を
かけることはできません」
「遠慮することはない
が…無理強いするつもりもない。
こういっちゃなんだが、あんた、これから何か
行く当てはあるのか?」
男性の言葉に、女性はゆっくりと頭を横に振る
「実家とかは頼れないのか?
何だったら実家まで連れていくこともしてやれるが…」
「いえ…今の旦那とは駆け落ち同然で出てきて…
実家からは絶縁されているんです…」
絶縁…つまりおばあちゃんの実家には帰れない…
頼れないって事なのね…
赤ん坊を抱えながらでは仕事も探せないだろうし
かなり絶望的な状況だ
「なら、決まりだ、俺のアパートで
落ち着くまで居ればいい。
狭いアパートだがまあ、雨露ぐらいは
しのげるだろう」
「で、でも…」
「あんたもそうだが…何より赤ん坊が心配だ。
子供には何の罪も無いんだ。
つらい思いはさせないのが大人の責任ってやつだぜ」
女性はしばらく目を伏せ考え込んでいたが
胸に抱いた赤ん坊の顔を見て…
「はい、大変ご迷惑をおかけしますが…
どうかお助けください…うぅ」
「迷惑だなんてこれっぽっちも思っていない
好きなだけいてもらって良いぜ
さあ、ここは寒い…行こうか」
さっきからつないだままの手を引き
男性は自分の住処へと女性を導くように歩き出した。
…
「…バリ、バリボリ…ズズゥ」
バロが映し出しているその映像を見て
私はおせんべいをかじりながらお茶をすする。
「レイ様!、源造さまの思い出なのですからもっと
真剣に見て頂けませんと!」
「あー、見てる見てる
よくできたドラマだね~本当か嘘か分からないけど」
「全て真実で御座います。
源造さまの男気溢れるシーンなど、正確に再現
しておりますので」
「正確にね~」
おじいちゃんが男気溢れるとか聞いたことないし
あまりイメージ無いんだけどな…
私はジト目になりながら、袋の中の
おせんべいをもう一枚出しそれを口に運びながら
生返事をバロに返した。




