第57話:哀愁の想いであるいは台無しな感動
九条さんの暴露話でバロはいても立ってもいられず
本体のレンズを真っ赤にして居間を出て行ってしまった。
よし、バロが出て行ったからこれで話の続きを
救急隊がなんて言ったのかものすごく気になる。
九条さん、早く!早く!はやく続きを!
「なつかしいわ…
源造さんが研究所にいたときはいつもこんな感じで
アプローチしてくる源造さんを私がからかって…」
うん、そうなんだ、二人良い感じだったんだね。
でも、恋バナも聞きたいけどさっきの話の
続きも気になる。救急隊員はなんて言ったの?
「でも、源造さんが研究所を辞めた後…
疎遠になっちゃって…」
九条さんの表情が悲しみの色に染まる感じがした。
これ以上隊員の話は聞けなさそうだ。そして唐突に
「うららさん、あるんでしょ?この家の地下に…」
一瞬、心臓をわしつかみにされたような感覚が
私を襲った。なぜ?なぜそれを知っているのか?
「研究所時代、源造さんが語っていた夢…
源造さんなら絶対に完成させてると信じていたから…
だから分かるの。この家の、この家の地下に
源造さんが遺した最高傑作の事を…」
私は九条さんに対して言葉を発する事が出来なかった。
嘘をついてとぼけることも
肯定の言葉を紡ぐことも
でも…
九条さんに嘘はつきたくない…
私は九条さんの目を真っすぐに見つめ
小さく頭を縦に振る。
「そう、やっぱり…ちゃんと完成させていたのね…
やっぱり、うららさんのおじいさまは天才ね。けど…」
今度は九条さんが私の瞳を真っすぐに見つめ
力強い言葉を紡いでいく。
「うららさん、あれは絶対に動かしてはダメよ。
理由は言わなくてもわかるわよね?
日本は法治国家なのだから」
九条さんから発せられた言葉。
それはとても当たり前の言葉。
もちろん、私も法を犯すつもりはまったくない。
九条さんは優しいな…
だって、動かしたらダメって言うことは
ガソタムの事は他に話さないって事だもん
ちゃんと私の事を考えてくれる。
もし、祖母が生きていたら、おばあちゃんって
こんな感じなのかな?
祖母は私が生まれる前に亡くなったと聞いている。
つまり会ったことが無いのでどんな人なのか
分からないけど、聞いた話だと、とてもやさしい人だと
聞いている。きっと…
九条さんみたいな人だったんだろうな…
九条さんの優しさに触れて感激して今にも
抱き着きたい衝動に駆られていたところ
「御夕食の準備が整いました。
お運びしても宜しいでしょうか?」
う~ん、間が悪いよ!
バロ、空気をよんで!空気を!




