第34話:差し出された遺産あるいは私の成長戦略
その後、私は砂浜に駆けつけてきた警察に
保護された。
バロからは生まれたての小鹿のように
プルプル震えて、おびえている演技をするようにと
言われたので、その通りにしてみた。
婦人警官の人が毛布を私にかけてくれて
事情聴取的なものもほんの最小限ですんで
その後パトカーで家まで送り届けてもらった。
バロはというと、パトカーの底面に張り付いて
いたらしく、無事に一緒に家まで帰ってきた。
「ただいま~って、みんな何してるの?…」
「あっおかえり~うらら~
うららが帰ってくるまで暇だったから
三人でトランプやってた~」
私が死ぬ思いをしていたのにこいつらは…
私が出て行った後のことをチカが説明してくれた。
あの後、安室さんが犯人だとバレずに簡単な
事情聴取で解放されたらしい。
マスコミにもインタビューを求められたが
チカが機転を利かせて、今は精神的ショックが大きいので
後日にしてくださいと頼み、
警察がマスコミを帰らせてくれたみたいだ。
「お嬢ちゃん!、今回の件本当にありがとう!
お嬢ちゃんたちがいなければ今頃逮捕されて、うぅ…」
私の姿を見るなり安室さんが土下座をしながら
謝罪をしてくるのだが、安室さん
その制服姿、結構きついです。早く着替えて…
「せっかく助けてもらったし、借金は親子二人で
何とか頑張ることにするよ」
と、安室さんが言ったところでバロが安室さんに
何かを差し出した。
「犯人さん、その借金ですがこれをお使いください」
出したのは銀行の通帳?
安室さんはそれを受け取り中を開いてみる。
私を含めた本物の女子三人は後ろから中身を
盗み見ると、それは貯金額5000万円と記載されてあった。
「バロ!なにこの通帳は? それにこの貯金額は何?」
「はい、それはレイ様が源造様から相続された
お金でございます。ちゃんと、相続税も引いた
金額ですからご心配なく」
って、相続ってこの家とガソタムだけじゃなかったの?
相続の中に銀行貯金があるなんて知らなかったんだけど?
「高校生に大金を持たせるのはレイ様の教育に
悪いと考え、成人するまで私の方で管理しようと
思っておりました」
うん、その理屈はわかるけど、それをそのまま
安室さんに渡すなんて…
つまりそれ私のお金なんだよね?
「これはもらえないですよ!
警察に捕まることも助けてもらって
さらにはお金まで恵んでもらうなんて!」
安室さんは、手にした通帳を突き返しながら
恐縮気味に言ってくる。
『レイ様、これがあなたが起こしたことに対する
大人の責任の取り方というものです
大丈夫です。レイ様はこのようなお金がなくても
立派なレディーになれますから』
バロが私だけに聞こえる骨伝導通信で語り掛けてくる。
確かに、今回の騒動は私が反対運動を成功させたせい。
それと、このお金も元々は私が稼いだものでもない。
『ではレイ様、素敵なレディになるためにも
犯人さんに真実を告白しましょう。
大丈夫、この経験はお金よりも大切な
レイ様の立派な財産になるはずですから』
本当にバロは…私の成長を望んでくれている。
おじいちゃんが残してくれた財産。
その中で一番大切なものは、お金でもこの家でも
ガソタムでもない。
AI執事のバロ…
それが一番大切なおじいちゃんの遺産だよ…
クスッと私は笑い、安室さんに真実を語り始めた。
私が再開発計画を頓挫させたことを……
安室さんの息子さんが、損害賠償を突きつけられた
その理由を……
全て、この家を守るため、私がとった
浅はかな行動を全て語ったのだった。




