第26話:好転しない現状あるいは無能な執事
『犯人に告ぐ!、この家は既に包囲してある。
武器を捨てておとなしく投降しなさい!』
家の外では、警察の偉い人だろうか
拡声器で家に向かって叫び続けている。
さて、どうするか…
このまま指をくわえて見ていたら
そのうち警察官が突入してくるだろう。
かといって、犯人は居間でぐるぐる巻きに拘束され
気絶をしている。
こら、サキ!ほうきでつつくんじゃありません!
突入されたらどさくさで地下室が
見つかってしまうかもしれない…
いや、家の材質が丈夫なことに警察が気が付いて
家宅捜索されるかもしれない…
「レイ様、私にお任せください
この状況をなんとかすればよろしいのですよね?」
私はジト目でバロを見る。
バロの事だ、またとんでもないことをして
状況をもっと悪くするんじゃないだろうか…
とりあえず、聞いてみるか…
「バロ、今度は何をするつもりなのか
言ってみなさい!」
「レイ様、要するに犯人をどうにかして
外の警官、パトカーがいなくなれば宜しいのですよね?」
「まあ、そうだけど…」
バロが私だけに聞こえるように前のように
骨伝導で語りかけてくる。
『それを解決する最善の方法が御座います。
今こそガソタムを起動し出陣し
外の警官を蹴散らしてやれば宜しいのです。
犯人はガソタムのパワーで全力で空に向かって
投げれば、海まで届きます。
沖で自然に朽ちるでしょう』
はぁ~…、本当にこいつは…
あきれ果てて肩を落とした私は
サキ達を背にして、聞かれないように小声でバロに
抗議をする。
「いいバロ、それじゃ私のやりたい事、本末転倒でしょ?
私は地下室の事もガソタムの事も隠し通したいの、
ガソタムを起動させたらバレるどころの
騒ぎじゃないでしょ、
絶対にガソタムは起動させないからね」
「…かしこまりました。では源造様が使われていた
特殊な溶液に漬けて犯人を溶かしてしまいましょう。
警察にはスキを見つけて逃げて行ったと言えば
万事まるくおさまります」
「おさまらないわよ!」
大声でツッコんでしまった。
サキ達も驚いてこっちを見ている。
それどころか、縛り上げられていた犯人が
私の大声で目を覚ましてしまった。
「なんだこれ!てめぇら何してくれてんだ!
早くこいつを解け、さもないと
ひどい目に遭わせるぞ!」
…縛られているのによくそんなことが言えるもんだ。
そんな状態ですごまれても全然怖くないんですけど。
「うらら~もう早く警察に突き出しちゃおうよ」
サキが提案してくる。
たしかにそうしたいのはやまやまなんだけど、
私は目をつむり色々シミュレーションをしてみる。
まず、このまま警察に突き出す。
この家に警察を入れる必要がある。
事情聴取もされるだろう。
その時この板で塞いだふすまを見られたら?…
いや、なんとか犯人を廊下に出してそこで
警察に突き出せば…
犯人に巻き付いている結び目もないロープ…
それを質問されたらどうする?
そもそもバロを見られたら…
だめだ、絶対に警察を家に入れられない。
じゃあ、ロープをほどいてこの家から出て行ってもらう?
ダメだ、その場合サキ達に危害を加えられるかも…
バロが言っていたガソタムを起動させて遠くまで
犯人を投げ飛ばす。
本当にそれを実行したい衝動に駆られてくる。
はぁ~、なんでこんな厄介事が家に来るのよ、とほほ…




