第22話:恐怖のお会計あるいはノーベル賞並みの超技術
コンコン、扉をノックする音
その音で私は静かに覚醒する…
「皆様、おはようございます。
午前7時、起床のお時間でございます。
朝食のご用意が出来ておりますので
ご準備くださいませ」
バロの声に反応するように
重い瞼をこすりながら起き上がり軽く背伸びをする。
サキとチカもまだ眠そうだけど同じように
起きるみたいだ。
「きゃはは、チカすごい寝ぐせだよ~」
サキは朝から元気だな…
私は低血圧気味なので朝はちょっと苦手なんだけど…
とりあえず、二人に声をかけて寝ぼけ眼で
キッチンへ、
「本日の朝食は地元の新鮮野菜サラダ
北海道産のトウモロコシのコーンポタージュ
最高級の小麦で焼き上げたクロワッサン
地鶏と卵を使ったオムレツでございます。
お飲み物は紅茶で宜しかったでしょうか?」
う~む…昨日の夕食の時も思ったけど
一般家庭の台所のテーブルに
ホテルレストランのような装飾と料理…
違和感が半端ないわね…
「焼きたてのクロワッサンの匂い、おいしそ~」
「本当にうららの家すごいね」
いやいや、私もこんなの初めてなんだけど…
椅子に座ろうとするとロボットアームが
椅子を引いてくれるし、
バロ、ちょっと張り切りすぎじゃない?
朝食は見た目を裏切らず、すごくおいしいし
文句は特にないんだけど、このもやもやは
何なんだろう?
食後のコーヒーをバロが出してくれて
それを飲みながら歓談する。
この楽しいお泊り会ももうすぐ終わりかな?
と、思っている矢先、もやもやの正体が
判明する言葉をチカが言ってきた。
「うらら、私思ったんだけど
昨日の豪華な夕食や今の朝食…結構
お金がかかったんじゃない?
高そうな食材も使っていたみたいだし
私たちちゃんと払うよ、払えるかわからないけど…」
…っ⁉そうか!
全然気が付かなかったけど、あんな高級そうな
材料、今まで使ったことはない。
いつもごく普通の材料でご飯を作ってくれてたのに
バロが張り切っちゃったから。
親から生活費はもらっているけど
お金の管理もバロにまかせっきりにしてたし…
もしかして今月の生活費全部つかっちゃった?
「う、うん、チカ、気にしないで。
二人に楽しんでもらえたら私もうれしいから」
チカは「でも…」と気にしているが
後出しでお金を請求とか友達に対して
そんなことできない…
絶対あとでバロを問い詰めてやるんだから!
夕方…
「じゃあ、うららまた月曜日ね~」
「うらら、ありがとうご馳走様」
サキとチカが帰る時間になり
私も駅までお見送りに来た。
改札前で二人を見送る。
ちなみにお昼はバロが中華の満漢全席を
用意してくれた。
いつの間に中華の回転テーブルなんて
用意したんだか…
昨日の夜から豪華な料理ばかり…
体重計乗るの怖いわ…
二人が電車に乗ってドアが閉まったのを
確認して家路につく。
「ただいま、バロ」
「おかえりなさいませレイ様。
お客様のお見送りご苦労様でした。
しかし、なんでしたらガソタムで
家まで送迎してもよろしかったのでは?」
「…バロ、そこに座って!」
「私の構造には座るという機能はついておりませんが…」
「いいから!座りなさい!」
バロが、コロコロと私の前まで転がってきて
目の前で停止する。
バロが投影したホログラムがちょこんと
正座の形をとる。
「バロ、とりあえず、先にお礼言っておくわね。
サキもチカも喜んでくれたみたいだから」
「はい、それはとても光栄でございます。」
二人が楽しんでいたことは確かだから
そこのところはお礼を言っておこう。でも…
「バロ、そのことについては本当に感謝してるんだけど
でもね、バロ…
いろいろ改造した設備…
豪華な料理の材料…
結構お金かかったんじゃないの?
もしかして、生活費全部使っちゃったの?」
この世の中、お金が全てとは思わないけど
それでも生きていくためにはお金が必要だ。
次の仕送りまでもやし生活になるのかな…
するとバロは首をかしげながら説明してきた。
「はて?…費用でございますか?
レイ様、この度のリフォーム代
料理の材料費は、0円でございます」
「そうよね、あれだけ豪華だったんだから
それぐらいかかったわよね…って、0円⁉」
「はい、0円でございます。
管理させていただいてる生活費からも
1円も使っておりません」
「えっ⁉ちょっと待って!1円もかかってないの?
あっ!あれ?売り物にならない物をタダで
もらってきたとかそういうの?」
バロがやってくれたいろいろな設備に関しては
もしかしたら、おじいちゃんが残してくれた
建材とかあったのかもしれない…けど
料理に関してはさすがに信じられない。
タダでもらったと言われても配送費とかかかる
だろうし…
「ご説明します。
材料に関しましては、源造様が発明しました
空気原子変換固定装置で作りました。
すべては空気で出来ております」
「へっ?空気?
空気で出来てたのあれ?でもちゃんと
味とか感じたし、ちゃんと満腹になったよ?」
「はいレイ様、空気中の炭素や窒素を再構成して、
材料の原子配列に組み替えております。
100%本物の栄養、質量にしておりますので」
「なにその超科学?そんなこと可能なの?」
めちゃくちゃだ、そんなの世界中の食糧難を解決
できるじゃん。なんて物を発明しているのよ
おじいちゃん。
「すべての物質は突き詰めれば原子の集合体です。
作りたいものの質量分の空気を集めれば
難しいことではないです」
…この装置も、世間にばれたらガソタムと一緒で
大変なことになるんじゃないの?
だってこんな機械見たことない。
ノーベル賞を取っちゃうぐらいの…まてよ、
「バロ、空気から出来ているってことは、
カロリーは0って事よね?」
カロリー0であれだけ豪華な食事
夜中にスイーツをいくら食べても太らない
もしかして嬉しい誤算かも…
「いいえ、レイ様。先ほど「100%再現」と
お伝えしました。
カロリーも完全再現しております
夜中の間食は控えた方がよろしいかと…」
うっ、心の中を見透かされた…
それだけすごい機械なんだからカロリーも
なんとかしてくれてもいいじゃない…
その夜、風呂上がり、体重計に乗った私の
悲鳴が響き渡ることになってしまった。合掌…




