第18話:桃色の勘違いあるいは執事の紹介
「ごちそうさま~すっごいおいしかったよ!
ありがとううらら!」
サキはフレンチのフルコースに満足したようだ。しかし…
「うらら…ごちそうさま、でも…」
チカは先ほどから私が何かを隠していると確信しているのか
その表情は曇っている。
「うらら…、私達、親友だよね?別に親友に
隠し事をしちゃいけないなんて思ってないよ。
でも、困ったことがあるなら相談してほしいよ。
一人で抱え込まれるなんて私寂しいよ…」
私はハッとした。
チカは、私の事を疑ってるのではない。
親友が苦しんでることを黙っていられないんだ…
私だってそうだ、サキとチカが何か困っていてそれを
一人で抱えていたら…相談されなかったら…とても寂しい
うん、決めた!
隠し事はやめだ! 二人には正直でいたい。
「うらら、この家で同棲してるんでしょ?彼氏と…」
「へっ?」
「うららに彼氏がいるなんて、話してくれないのは
寂しいけど、高校生で同棲してるなんて言えないよね?
今食べたこの料理も彼氏さんが作ったんでしょ?」
いやいやいや、何言ってるのチカ、私彼氏もいないし
同棲なんてしてないよ!
チカの誤解を解こうとするが、チカの猛攻は止まらない。
「第三者がいたのなら、この家で起こった数々の事に
説明がつくわ。簡単な推理よ!」
名探偵気取りか、いや迷探偵か…
サキもチカの言うことに「ほへ~」と反応している。
さっさと誤解を解かないと…
「でも、うらら、私達はうららの味方だよ!
付き合ってることだって、同棲していることだって
ちゃんと秘密にしておくから。だから、
私達だけには紹介してくれてもいいんじゃない?」
だめか、女子高生は、この手の話題が大好物
だって私だって好きだもん。そういう話題。
って、違う、違う、早く誤解を…
『レイ様、ここは私にお任せいただけませんか?
レイ様は、地下室とガソタムの事が外部に漏れなければ
良いのですよね?」
バロが提案を語りかけてくる。
サキ達を見ると、
「恋人と一つ屋根の下、同棲…キャーァ♡」なんて
はしゃいでいる。
うん、ここはバロに任せてみるしかないかもしれない。
私はバロに目線を送り軽くうなずく。
『では、レイ様から私の事を紹介して頂けますか?
その後は私にお任せを』
私はこくりと、うなずくと、二人に向かって話し出す。
「サキ、チカ、分かったわ。紹介してあげる。
でも先に言っておくけど恋人とかじゃないからね」
二人は、「またまた~」なんて言ってくるのが
若干うざい…まあいいわ、
「バロ!出てきて」
私の掛け声に台所に鎮座していた球体から
スモークが噴き出し、上半分がいつものように
パカッと分かれる。
何処からともなく、カラフルなレーザービームが発光し
バロ本体からホログラムがせり上がってくる。
なんかどこぞのアイドルのライブみたい…
私がげんなりしていると、バロが軽く一礼をする。
「二人に紹介するわ、この家の事をやってくれてる
AI執事のバロよ」
サキとチカは想像していたことの斜め上の事が
起きて唖然としていた。
まあ、私が紹介するって言って出てきたのがこれだから
仕方ないのかもしれない。
本当なら「キャー♡」とか言ってさらにテンションを
上げたい所だったのだろうが…
「初めましてお客様。
古谷家で執事をさせて頂いておりますバロと申します。
以後、お見知りおきを」
二人はまだポカンと口を開けて呆然としている。
しかし、バロはお構いなしに言葉を続ける。
「私はレイ様の祖父である源造さまに開発されました
ホームアシスタントAI執事で御座います。
お客様がいらしてから、陰でおもてなしをしていたのは
私で御座います」
おー、ホームアシスタントAI執事、なるほど
良い言い訳かもしれない。
「これからは、お客様へのおもてなしは
私が承りますので、何か御座いましたら遠慮なく
お申しつけください。
まずは、食後にお茶などはいかがですか?」
バロがアームを操り、器用に紅茶を用意していく。
少しは状況を飲み込めたのか、サキとチカは椅子に
腰かける。
「へ~、うららのおじいちゃんって
こんなの作っちゃうんだ、天才なんだね~」
しめた!ここだ!
「そうなのよ、おじいちゃんの発明とかもすべて
私に押し付けられちゃって。
でも、私には原理とか構造とか分からないから
黙っておこうって思って、ごめん!」
二人は「な~んだ、そんなことか」みたいな感じで
納得してくれた。少しがっかりしているように見えるのは
恋人と同棲じゃなかったからだろう。
二人に、このことは秘密にしておいてとお願いすると
軽く「わかった、いいよ~」なんて言ってくれた。
ふぅ~、とりあえず、一安心かな。
もう、すでに慣れたのか、サキとチカは
バロと仲良くおしゃべりをしている。
なんて順応が早い事か…
二人の適応力の高さに驚いているとバロが
次のおもてなしを提案してきた。
「みなさま、湯あみのご用意が整いました。
これ以上ない極上の湯加減で御座います。
ご遠慮なく、至福のひとときをおすごしください」




