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起動させないしガソタム〜おじいちゃんが地下に残した遺産ーTrue Story~  作者: じょん-ドゥ


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第17話:機械仕掛けのフルコースあるいはぬぐえぬ不信感

「…バロ、何やってるの?」

 

キッチンのドアを開けて目に飛び込んできた光景。

キッチンテーブルの上には数々の皿が並べられていて、

その皿一つ一つに高級そうな料理が盛り付けられている。

バロの本体から伸びる複数のロボットアームが

お玉で鍋をかき回し、別のアームは食材を切断している。

 

「おや?レイ様、もうお食事をお運びしても

 宜しいですか?

 本日はゲストの為にフレンチのコースをご用意

 いたしました」

 

開いた口が塞がらない…

 

「本日のメニューは、こちらです」

 

バロが、空中にメニューを投影する。

アミューズ 豚肉のパテ・ド・カンパーニュ

前菜    エスカルゴのブルゴーニュ風

スープ   濃厚なかぼちゃのポタージュ

魚料理   カレイとキノコのムニエル

肉料理   牛フィレ肉のステーキ・トリュフ添え

デザート  タルトタタンとバニラアイス

 

「いや、あのね、バロ…」

 

「あぁ、失念しておりました。

 お飲み物はフランスのグラン・クリュ、

 2022年物のシャルドネをご用意いたしました。

 もちろん、アルコール成分は私の方で抜いていますので

 安心してお召し上がりください」

 

わなわなと震えながら、何とか立ち上がり

バロに向かって胸の内をぶちまける。

 

「バロ、勝手にこんなもの用意してどうするのよ!

 今日は普通のカレーを作るつもりだったのに

 一般の家でこんな料理ありえないでしょ!」

 

「カレーでございますか?

 カレーのレシピもございますが、

 お客様にお出しするにはいささか不十分かと

 古谷家の沽券にかかわりますから」

 

いやいやいや、お嬢様学校に通う大邸宅の家なら

そうかもしれないけど、こんな田舎の平屋の一軒家

そこにフランス料理のフルコースなんて

誰が見ても怪しいよ。

 

そんな融通の利かないバロと問答をしていると

キッチンに近づいてくる二人の足音。

 

「うららー、やっぱり手伝うよ!」

 

「だ、大丈夫、一人でやれるから、

 居間で待ってて!」

 

必死でサキとチカに訴えるが、その思いもむなしく

キッチンの扉は開かれてしまった。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

固まる3人

バロはいつの間にかロボットアームを引っ込め

ただの球体になっていた。

 

「うらら、これって…」

 

テーブルに所狭しと並べられている料理を見て

チカが、説明を求めてくる。

 

「うらら、カレーを作るとか言っていなかったっけ?」

 

「あはは、は、カレイって言ったよ私…

 鰈を使って作るって…」

 

再び苦しい言い訳。

チカが、ものすごい目で睨んでくる、が、サキが

 

「すっごーーい!めちゃ美味しそうじゃん!

 えっ⁉なに?これうららが全部作ったの?」

 

明るく元気なサキ、疑いより美味しそうな料理に

完全に興味が移ったみたいだ。しめた!

 

「そ、そうなの!サキとチカが来るって言うから

 ちょっと張り切っちゃった!」

 

「すごい!すごい!見てチカ!あのステーキ

 あれ、乗ってるのもしかしてトリュフかな?

 私食べるの初めてなんだけど!」

 

ここだ!ここしかない!

 

「実は、サキとチカが遊びに来るって言ってくれたから

 うれしくなっちゃって、張り切っちゃった」

 

チカがジト目で見つめてくるが、勢いで

ごまかすしかない…

 

「料理の仕込みは昨日から少しずつやってたから

 今日は盛り付けるだけだったし、

 別に手伝ってもらうほどじゃないわよ。

 そんなことより冷めないうちに早く食べよ!」

 

サキはわーい早く食べたい!と言って

テーブルに着く。

チカも納得はしてないようだがため息をしつつも

椅子に座ってくれた。何とかなった…

 

バロが用意してくれたアルコールを抜いたワインを

二人のグラスについであげる。

 

「うらら、私たち未成年なのにワインを飲むの?」 

 

「大丈夫、これアルコール入ってないから

 ぶどうジュースみたいなものよ」

 

サキが「いっただきまーす!」と言って

料理にフォークを刺し、ナイフで切ったものを

口の中に放り込む。

 

「美味し~!こんな美味しいの初めて!」

 

サキはいつも以上に興奮してはしゃいでいる。

チカも一口食べておいしいと言ってくれる。

というかチカのテーブルマナーすごくきれい。

知的な人はテーブルマナーも身につけているのだろうか?

 

『レイ様のマナーは不適切です。「三角喰い」は

 よろしくありません。

 フレンチにおける正しいマナーを習得してください。

 まず最初に…』

 

ああもう、友達と美味しいもの食べてる時に

余計な事言わないでよ!

私は台所の隅に丸く鎮座してるバロに向かって

睨みをきかせた。

 

『パンは一口サイズに、あぁっ最初からスープに浸すのは

 マナー違反です、料理のソースを拭うときに

 パンを使うのは正解ですが、お行儀が悪いです』

 

私の視線も関係なしにバロのマナー講座は続く。

そんな視線に気が付いたチカが、私の視線の先

球体のバロを見る。

 

「うらら、さっきから何を睨んでるの?

 あの丸いのって何?調理器具じゃないよね?」

 

やばい、バロに視線が……えーっと、えーっと、

 

「あー、あれ、キッチンタイマーなんだよ

 ちょっと変わってるけど」

 

「へー、キッチンタイマーにしてはデカすぎない?

 どうやって使うの?」

 

チカの追撃が止まらない。どうやってごまかせば…

 

「えーっと、例えばタイマーを5分に合わせるときは…」

 

なんて言ってると、突然

 

《キッチンタイマーを5分にセットしました。

 カウントダウンをスタートします》

 

とバロからいつもと違う電子的な音声が発せられた。

 

「すごーい、このキッチンタイマー音声認識なの?

 ハイテクじゃん!

 うららの家、面白いものいっぱいあって楽しいね」

 

サキが目を輝かせてキッチンタイマーを注視する。

ナイス、バロ。その調子でごまかして。

と願っていたが次の瞬間。

 

バロ本体から立体ホログラムが照射されて

空中にタイマーが投影された。

4:48、4:47、4:46…

バ、バロ…そこまでしなくても…

 

「すごいねうらら!いまこんな凄いのが売ってるんだ!」

 

とサキだけテンション変わらずはしゃいでいる。が、

チカはますます、ジト目になっていく。

今の世の中、こんなハイテク商品はありえないって

思っていそう。

もうごまかしきれないかも…


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