第11話:搭乗のジェットコースターあるいは恥辱の変身
学校が終わった放課後…
自宅の最寄り駅、電車のドアが開き
ホームへ一歩踏み出す。
バロが決めたスケジュール…
はっきり言って、私はガソタムなんて
動かせるようになりたくない。
ただ、隠したいだけなのに…
これから家で始まるだろう
戦闘訓練の事を頭に思い浮かべると
なんとも、家に帰る足取りが重い。
と、いうか、帰宅の足取りが軽かったことって
あったっけ?
憂鬱な時が大部分を占めてるような気がするのは
気のせいだろうか…
いや、待てよ…
よく考えたら、ガソタムに続くあの階段は、
私が引っ越してきた日に塞いだはずだ。
あそこを通らなければガソタムに乗ることなんて
出来やしない。
つまり、訓練ができない。
後は、入口を塞いだ茶箪笥や板を
言い訳を付けて片付けなければ…
「そうよ!訓練できないじゃん!」
憂鬱な足取りはどこへ行ったのか
私は軽くスキップで自転車置き場に向かった。
自転車を止め、自宅の前。
玄関を開け
「バロ、ただいま~」
と、言ってみる。
すると、玄関にはバロがすでに
ホログラムを展開していた。
「レイ様、スケジュールが34分15秒遅れております。
直ちに戦闘訓練を開始しましょう」
今の時刻は17時4分…
確かに遅れているけどね…でも
「戦闘訓練?ふふん!残念だけど無理よ
地下に行く階段は私が塞いじゃったもん
たんすも置いちゃったし、簡単には
片付けられないからね」
勝った…私は勝利を確信し鼻をならす。
しかしバロは慌てることなく。
「ご心配なく。レイ様、まずはそちらにお掛けください」
バロが指さした先には私の巨大ビーズクッション
いわゆる、人をダメにするクッションってやつだ。
座り心地がいいので、居間でくつろぐ用に
置いておいた私の私物なのだが…はて?
戦闘訓練はあきらめてくれたのだろうか?
とその巨大クッションに制服も着替えないまま
腰かけた。その瞬間…
「んっ?バロ?なんかクッションが動いているような?」
「はい、レイ様のクッションを少し改造させて頂きました
これよりガソタムへフェードイン開始いたします」
「えっ⁉なに?どういうこと?」
私のお気に入りの巨大クッションは
何やらうねうねと動いていき、最終的には
がっしりとした椅子の形になっていく…いや、
もう椅子になった。
その瞬間足元の畳が一瞬で消え
私は重力のままに下に落ちていった。
「ぎゃあぁぁぁ!?止めてぇぇ! 落ちる――っ!」
垂直に落下しているのか、ジェットコースターの様に
斜め下に移動しているのかもはやわからない。
私はただ叫ぶことしかできないと思っていたその瞬間、
体の周りに白い光が集まってきて
最終的には私の体を包み込んだ。
「なに?この光、なんで体についてるの?」
と思っていたら、その光が一瞬ではじけ飛んでいく。
なんなの? 今のは、と自分の体を見た瞬間
私の思考は固まってしまった。
滑り落ちる前、確かに私は制服を着ていた、なのに今は…
制服どころか、その下の下着も何も着ていない状態
つまり、真っ裸…
「きゃあぁぁ⁉なにしてるのよ!バロのばかー!」
私の体の他は、今座っている椅子一つ
必死にかがんで隠そうとするが、落下している所では
バランスが取れない。
うぬぅ⁉ 覚えてなさいよバロ、と言い出す前に
今度は黄色の光が体に集まり包み込んでいく
「今度は何?何が始まるのよ!」
私の絶叫もむなしくますます集まってくる光
その光が一粒一粒溶けだしていく。
溶けだしたその粒子が今度は糸のように紡ぎ合い
私の体を締め付けるように形成されていく。
足先からお尻、腰から胸へ、そして腕、指先へ
服?のようなものが出来てくる。
なんと言えばいいのか…
SF物の漫画やアニメのポスターで主人公らしき人が
こんなの着ていたような気がする…けど…
「ピンク色ってどういうことよ!
こんなの恥ずかしいじゃない!
大体勝手に着替えさせないでよ!」
見事な突っ込み三連発
ぜいぜいと肩で息をしながら突っ込んだ矢先
出口なのか明るい光が見える。
目の前にはガソタム。
いつの間にか腰の部分にはシートベルトがかかっているが
「ちょっぉ⁉待って、このままじゃぶつかっちゃう‼」
すごい勢いでガソタムのおなかあたりに向かっている
このままでは衝突してしまう。
普通の人間の体と、おじいちゃんが作った特殊金属
いや、普通の金属でもぺちゃんこになるよ。
「ぎょあぁぁぁ!?止めて!ストップゥゥ!」
その瞬間、ものすごい遠心力を感じた。
ガソタムの手前で、急ブレーキと共に
椅子が180°回転したのだ。
そのままガソタムの腹部が開きその中に私は
吸い込まれていく。
そこでやっとバロが語り掛けてくる。
「いかがだったでしょうか?
源造様が作られました全自動出撃シークエンスは?」
これもおじいちゃんが作ったのか…
おじいちゃん、
孫を裸にしてどうしようと言うのだろうか…
というかこんな、おじいちゃんの趣味全開に
しなくたって…
ガソタムの操縦室に収まり
ハッチが自動で閉まっていく。
よし、この戦闘訓練とやらの前に
バロに思いっきり抗議をしよう、そうしよう
私はふつふつと湧き上がるこの怒りの衝動を
バロに叩きつけてやると、固く誓った。




