鉄鉱山を返せ!
リキャスト音も鳴ったので、鉄鉱山の視察に向かった。
鉱山は日帰りできない距離だ。
俺とエリナ、執事の3人で向かった。
馬1頭しかいないので、俺とエリナが乗り、執事には歩いてもらった。
近くの住民(リトナ村)に話を聞いた。
いや、正しくは、執事に聞いてもらった。
だって、俺が聞くと、
「誰が、おまえなんかに……」
「とっとと帰れ!」
……とか言われて、石を投げられるんだもん。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
話が逸れた。
執事の報告では――
住民や盗賊が、思いついた時に掘りに来る程度。
鉱夫のような専門職はいない。
この鉱山で採れる鉄鉱石は不純物が多く、二束三文だ。
儲からないので、これだけで生活している者はいない。
むしろ子供がお小遣い稼ぎ感覚で掘っているらしい。
ふーん、なるほど。
採掘量が少ないのも納得だった。
え? ちょっと待って。
盗賊?
マジかぁ。
後でそれも退治しないといかんのか……。
まぁ、それは後々考えるとしよう。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「この鉱山、まるっと高純度のオリハルコン」
という「ウソ」をついた。
澄んだ音が脳内に響いた。
成功したようだ。
これで鉄鉱石は、オリハルコン鉱石になったはずだ。
問題は、どうやって掘らせるかだな。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ところが、それ以前の問題に直面した。
「あの人だ! あの人が何かしたんだよ!」
周囲には村人たち。
皆、怒りに満ちている。
生意気そうな子供が俺を指さした。
「どうしてくれるんだい。せっかくの収入源だったのに……」
は?
二束三文だったんじゃなかったの?
「こんな訳のわからない石ころ、誰も買ってくれないよ!」
「いや、それオリハルコンって……」
「石ころの名前なんて聞いてないよ!」
「いや、それ希少な金属なんだけど……」
「鉄の成分、少しもないじゃないか」
どうやら俺は、鉄鉱山をダメにした犯人らしい。
「いや、だから鉄じゃな……」
「それじゃ売れないんだよ!」
「鍛冶屋に持って行ったら追い返されたんだ!」
「え?」
あぁ、そうか。
俺も最初はオリハルコンなんて名前も聞いたことがなかった。
たぶん、この辺の商人も同じなんだろう。
販路を確保しないと、この問題は解決しないようだ。
「すみません! 1週間ほど時間をください!」
元に戻すにしても、リキャスト音が鳴るまでは戻せない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずは買い手を見つけよう。
俺たちは領都へ戻った。
走って帰りたかったが、エリナも乗せているので馬を飛ばすわけにもいかない。
なぜこの町かって?
オリハルコンの価値を知る商人がいるからだ。
他にもいるかもしれないが、探す方法を知らない。
◇ ◇ 領都の市場 ◇ ◇
「また、あんたらか……」
商人は、あきれ顔で言った。
「今度は何を売りに来たんだ?」
「高純度のオリハルコン鉱脈が見つかった」
「何ぃ!? どこだ!」
「リトナ村近くの鉄鉱山だ」
「あぁ、純度の悪い鉄鉱山か」
「そこでオリハルコンが採れるようになった」
「本当か?」
「と、とにかく一度見てくれないか?」
「誰も買ってくれなくて困ってるんだ」
エリナが商人の手を握って懇願する。
「お願い……」
「しょうがないな……」
つくづく幼女に弱いおっさんだ。
◇ ◇ ◇ 鉱山前 ◇ ◇ ◇
「うぉ、何だこりゃ!」
「言った通りでしょ?」
「鉱脈ってレベルじゃない!」
「は?」
「ほぼ精錬済のオリハルコンの塊じゃないか」
「は?」
あぁ、確かに「まるっとオリハルコン」って言ったよ。
でも予想と違った。
鉄鉱石をオリハルコンの鉱石に変えたのではなく、
山そのものが、
精錬済みのオリハルコンの塊になっていた。
「こうしちゃいられん!」
商人は慌てて帰っていった。
数日後。
鉱山には本格的な採掘隊が組織され、
鉱夫として暮らす者たちが送り込まれた。
もう、この鉱山は巨大な富を生む場所へ変貌していた。
だけど――
◇ ◇ ◇ 1週間後 ◇ ◇ ◇
俺は今、絶賛抗議を受けている。
住民が鉱山に入れなくなったからだ。
「僕のお小遣い、どうしてくれるんだよ!」
「今は勝手に掘ると怒られるんだぞ!」
「暇な時のお金稼ぎ、どうしてくれるのさ!」
だが、子供たちや住民には関係ない。
彼らにとって大切だったのは、
暇な時に気軽にできるお小遣い稼ぎだったのだ。
そんな理由で抗議されてもなぁ……。
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