屋敷が日陰になった
「全部置いていけ!」
鉱山からの帰り道、俺たちは絡まれた。
5人ほどいるが、皆やせ細っている。
武器といっても、ただの棒だ。
あれか。
レベル1の時に装備する「ひ〇きのぼう」ってやつか。
執事の風魔法の支援を受け、俺が剣で倒した。
なぜ魔法で倒さないのかって?
確かに俺は賢者だ。
そういう体に入っている。
だけど、覚えている魔法が広域殲滅魔法ばかりだ。
これを使ったら殺してしまう。
一方、今持っている剣には刃が付いていない。
いわゆる訓練用の剣だ。
刃の付いた剣は売ってしまった。
それでも領主は、俺を殺すために日々鍛錬していた。
そのおかげで、刃のない剣でも制圧に時間はかからなかった。
連中から話を聞こうとしたが――
「誰が、おまえなんかに」
とツバをかけられる。
うん、予想はしてた。
わかってたけど、ムカつくなぁ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
説得すること約2時間。
やっと会話が成立した。
「元々は鍋や包丁を作っていた」
「代官に工房を取り上げられた」
「食えなくなった」
この人たちは工房の職人だった。
前代官に仕事場と仕事道具を奪われたらしい。
とりあえず屋敷へ連れ帰ることにした。
武器は取り上げているが、一応、手だけ縛っておく。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
屋敷の庭は広い。
小さな屋敷しか建てていないので、余っている土地に好きなように工房を建ててもらうことにした。
そのための資金は、エリナから借りた。
・ ・ ・ 数日後 ・ ・ ・
俺たちの屋敷の近くに、新たに工房ができた。
作業道具も、新たに揃えることができたようだ。
「何か作ってもらえる?」
作ってもらったら……
――すごいのできました――
包丁。
鍬。
ナイフ。
執事が手に取って言う。
「いい仕事してますねぇ……」
まるで某鑑定士みたいなセリフを言いよる……。
俺も手に取ってみる。
「これはいいな」
素人の俺でも、出来の良さがわかる。
「もしかして、おまえらみたいなの、もっといるの?」
……と聞いたら、いるらしい。
だから、みんな受け入れることにした。
産業は大事だからね。
新たに来る職人の工房も、領主館の敷地内に建ててもらうことにした。
・ ・ ・ 数日後 ・ ・ ・
なんだか、とんでもないことになっていた。
気づけば工房は、俺の小さな屋敷を三方から囲み、屋敷より高くなっていた。
どんだけおんねん。
朝起きた。
日が当たらない。
おかしいな。
なんでこんなに暗いんだ?
窓を開けたら、すぐ目の前が工房の壁だった。
わぁぉ。
屋敷が日陰になっていた。
まぁ、これで盗賊が減るならいいか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
この工房、領都では「奴隷館」と呼ばれているらしい。
・手を縛って連行してきた
・敷地から出てこない
・昼夜問わず働いている
……という話から、
「領主が職人を奴隷にしたらしい」
という噂になってしまった。
なんだかなぁ。
こうして俺の悪名は、またひとつ高まったらしい。
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※※ 次回 6/23 21:00 公開 ※※
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