10回中9回
バチッバチ……
そんな音を立てて、レスタの回復魔法が発動した。
レスタの回復術は、痛い。
理由は知らないのだけど、すごく痛い。
俺もライナも、そのことを身を持って知っている。
それを両手で発動しようとしていたのだ、とんでもいない痛さになるだろう。
少なくとも、スキをつくるには十分な効果だろう。
俺は、それでエリナたちが解放されるのを待っていた。
「ぐぁ……」
あまりの痛さに、ウルスが拘束魔法で縛っていた3人が自由になった。
俺は3人をウルスから引き離す。
ここまでは予定通りだ。
ウルスは、まだ痛みと戦っているようだ。
あれから、動きが止まっている。
あれ? そこまで痛かったか?
バチッバチ……
まだ、音が続いている。
予想外のことが起きていた。
「ぎゃぁぁぁぁ……」
バチバチバチ……
ウルスの体は、雷に打たれ続けているような感じになっていた。
体全体から、光るエフェクトが止まらない。
もしかして?
……暴走してる?
対して、ウルスに触れていたレスタはピンピンしている。
それどころか「またか」と言わんばかりの顔をしている。
こいつ、何か知ってるな?
ウルスはたまらず、瞬間移動で逃げ出した。
まぁ、結果オーライというところか。
「何が起こったの?」
「さぁ?」
「神術が暴走したのかしら?」
レスタが、とんでもないことを言う。
「回復術って、神術暴走させるの?」
「たまによ。たまに……」
どうやら、はじめてのことではないらしい。
「10回中9回くらいしか暴走しないよ」
「それは、たまにとは言わないんだが……」
「ちなみに暴走しなかった時は、どうなるの?」
「その時は、急に老けてたかな……」
それって、十分暴走してるのでは?
でも、おかげで3人とも無事か
「他の回復魔術師も同じような感じになるの?」
「わかんない。私も師匠以外の回復魔術師知らないし」
「時々、王城に呼ばれた時も?」
「うん。私以外は皆、神術使ってたよ」
え? 回復魔術師って、そんなに稀有なの?
索敵魔法でウルスを追う。
他の神官に合流しようと、瞬間移動を繰り返している。
しかし、ほとんど全滅している。
残った神官も、静かに退却を進めていた。
これで、今回の戦端は、一件落着かな……
何か、忘れているような……
なんだっけ?
落とし穴のヤツだ。
落ちた索敵部隊を引き上げないといけないんだった。
落とし穴の表面だけ、機甲師団に焼いてもらおうかな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、逃げたウルスは……
1時間に数歳老化するような勢いで、
急速に老化が進んでいた。
「何だ、何なんだ、これは……」
「手を見た。震えている」
皮膚が、ひび割れるように乾いていく。
途中で合流した神官が青ざめて言う。
「何があったのですか?」
「例の回復術士に、回復と称した何かを使われた」
「その術士とは知り合いだったのでは?」
「知らん。何日か世話になっただけだ」
ウルスは歯を食いしばる。
あれは回復ではなかった。
むしろ──何かを“逆流”させられた感覚だった。
会った時から、よくわからんやつだった。
回復と称して、よくわからん術ばかりかけやがって……。
「もしかして……」
1人の神官がつぶやいた。
「何か知ってるのか?」
神官が呟く。
「記録にだけ残っている。
回復者の生命を“代償として消費する”術式が
あるという話を聞いたことがあります」
「そんなものが、今の時代に……?」
ウルスは拳を握った。
だが、その拳に力が入らない。
老化は、止まらない。
「……王国に戻る。対策を練る」
その声は、かつての勇者のものより、ずっとか細かった。
だが──歩き出した瞬間にも、
さらに一歩、老いが進んでいく。
「……止まらないのか」
誰にともなく呟く。
神官は答えられなかった。
迎えに来た大神官はボソリと言った。
「例の計画を……始めないといけないか」
ウルスは、その言葉の意味をすぐには理解できなかった。
だが、理解した瞬間──背筋が冷えた。
「……そこまで、進んでいるのか」
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次回、最終話
『ファリス・ロドスの終わり』
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・・ 次回 明日 20:00 公開 ・・
※※ 本日は、この1話のみです ※※
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