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【完結済】ウソつき賢者の領地再建  作者: 秋月心文


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回復する気なんですね

「ぎゃぁぁぁ……」

 領主館タワマンの下層階から悲鳴が響いた。

「来ましたで」

「後は任せたのじゃ」

 そういってミカン(魔王)とローラは、どこかに雲隠れした。


 ここには俺とナニワ師団長とエリナ。

 下の階で戦っているのは冒険者たち。


「神官クラスは瞬間移動ができるんや」

「ちょ、今までのは全部囮?」

「そうとも言いますな」


 俺の記憶が正しければ、ウルスもいたはずだ。

 そして、ヤツは殺せない。

 でも、このタワマンの中では、神術は使えない。


 ドォォン……。

 大きな音がして、グラっと揺れた。

 タワマンが傾いている。

 窓の外には、禍々しい色の大木。

 窓の外の景色が一変していた。


「しもうた、やられたわ」

「教会の上に瞬間移動されましたわ」

「え?」

 タワマンを教会の上に動かしただと?

 そこまでするか……!


 教会は神域。

 神術の力が強くなる。

 俺の「神術は使えない」という「ウソ」と、神の力。

 どちらが勝つだろう?

 正直、わからない。


 俺はエリナと師団長を抱え、瞬間移動した。

 領地内の別の場所に……。

 ここは、俺が生まれた村だ。


「来ると思ってたわ」

 ライナが笑った。


 幼馴染のあいつらも待っていた。

 さぁ、決着といこうか。


 村が戦場と化すのは癪だが、もう、どこも安全じゃない。

 タワマン以外で、思いつく場所が、ここしかなかった。


「来ましたで……」


 リキャスト音が鳴った。

「この世界にはラシド教の信者はいない」

「ウソ」をつく。

澄んだ音が響く。

空気が――

世界が一瞬入れ替わる。

発動した。


 さて、これなら、物理戦かな?


 機甲師団長は、

 砲を幾重にも装備した人型兵器を呼び出した。

 両肩と両脇に砲を備え、

 背中にロケットランチャーを装備している。

「アーマーと呼んでますわ」


「ナニワ師団長!」

「ライナ!」

「レスタ!」

「殺すのは僧兵と神官、それと軍人だけだ!」

「「オッケー」」

「なんでや?」


「もうラシド教の信者はいなくなった」

「ようわからん」

「詳しい話は、あとでローラにでも聞いてくれ」

「ほな、神官と軍人だけ殺せばええんやな」

「あぁ、それで頼む」


「勇者は?」

「たぶん、殺せない」

「なんで?」

「そういうスキルがかかってるから」


 そこに強烈な光の筋がやってきて、アーマーを貫いた。

 真横にいたそいつが大爆発する。

 ちょ……、余計に危ないんだが……


「勇者が来とるで」

 瞬間移動の魔法で、ウルス一行が現れた。

 ウルスは、両手で神官と手をつないでいた。

 勇者の右隣にいた神官が倒れた。


 あの光線、生命力を消費するらしい。

 左隣の神官が、それを見て慌てていた。

 あてにしていたものがハズレたようだな。


 この村は神域じゃないんだよ。

「ナニワ師団長、あとは任せた」

「あいよ」


「ライナ、レスタとエリナを連れて逃げて」

「わかったわ」


 ここからは、連中との鬼ごっこの開始だ。


 神術では俺の寿命を削れない。「ウソ」の力だ。

 奴らは、神術を使うたび自分の命を削っていく。


 近づけば、あの光線を食らう。

 俺が欠損すれば、エリナはきっと回復しようとする。

 それだけは避けたい。


 《ふしぎなおどり》も厄介だ。

 だから俺は逃げる。


 機甲師団ならMPもない。壊れても補充できる。

 囮は任せた。


 瞬間移動を繰り返し、索敵魔法で敵を探る。

 案の定、神官の数は少しずつ減っていった。


 ……だが。


 勇者ウルスだけが動かない。

 じっと何かを探している。


 ん?

 あいつ――俺と同じ索敵魔法を使ってるのか?


 やばい!!

 ライナたちの行方を探る。

 3人は、まだ、無事なようだ。

 でも、そこに人が増えた。

 そうだ、ウルスも瞬間移動を使える。


 これは、ウルスか!

 俺も急いでそこに瞬間移動した。


 3人は、ウルスに捕まっていた。

 俺も使える捕縛魔法で動きを封じられていた。


 一番力の強いレスタは、

 それだけでは抑えられなかったらしく、

 馬乗りになって、両手を抑えられていた。


 攻撃は出来るが、攻撃はしない。

 「殺せない」ことは知っている。


 あいつに神術を使わせない限り……


 俺とウルスは、ただにらみ合うことしかできなかった。


 レスタは、じっとウルスの手元を見ていた。


 俺もレスタの様子を見ていて、つい、つぶやいた。

「……回復する気なんですね」


「何を言っている」

 ウルスは気づいていない。


 レスタは、笑った。

 次の瞬間──

 レスタの体が、わずかに持ち上がった。

「それ、やるとどうなるか知ってます?」


 ウルスはまだ気づいていない。

「回復術が発動した瞬間」に何が起きるのかを。

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 次回『10回中9回』

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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・

※※ 本日は、この1話のみです ※※

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