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ウソつき賢者の領地再建 ―クスッと笑える!?、勘違い領主コメディ(復讐から始まったはずなのに……)―  作者: 秋月心文


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俺は盾になる

 税を下げ、中間搾取をやめさせるためには、新しい代官を任命する必要があった。


 執事から領内の評判を聞きながら、代官候補を探し回った。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「うん、いいね」


 そう思える候補を何人か見つけた。


 けれど説得しても、誰も応じてくれない。


 そこをエリナが説得し、ようやく引き受けてもらえた。


 ここの人間は、みんな幼女に弱いのか?


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 まず、領都近くの代官を不意打ちで解任した。


 新しい代官を任命し、税率を下げる。


 だが、こういう代官があと4人いる。


 候補者への説得は、エリナが済ませてくれている。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 2人目を解任しようとした時、暴動が起きた。


 1人目の旧代官まで加わっている。


 暴動鎮圧、どうやって?


 暴動を知った1人目の新代官が、この領地を出たと聞いた。


 あぁ、彼にも逃げられたのか……。


 使用人たちに「危ないから屋敷を離れてくれ」と伝えに行くと、退職届だけを残し、すでに去っていた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 孤立無援。


 味方はいない。



 手をぎゅっと握られた。


 エリナだ。


 あぁ、味方なし……ではなかったな。



 肩をぽんと叩かれた。


 執事だ。


 あぁ、おまえもいたな。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 俺は執事に言った。


「反撃はするな……」



 火を放たれました。

 屋敷も焼かれました。


 俺も、火傷を負いました。


 でも、俺は殺されない。


 だから、俺が盾になる。


 住民に石を投げられました。


 痛い。


 あちこちから石が飛んでくる。


 想像以上に痛い。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 見かねた執事が、防御の風魔法を張った。


 住民が投げた石が弾かれる。


 それでも、住民は投げるのをやめない。


 しかし、防御魔法をすり抜ける矢があった。


 これは……。


 よく知っているスキルだった。


 幼馴染の弓使い、ライナの《必中》。


 防御魔法など、おかまいなしに貫いてくる。


 1本目が肩に刺さる。


 痛い。


 2本目が脇腹を貫く。


 すごく痛い。


 3本目。


 4本目。


 遠くからでもわかる。


 ライナは、本気で俺を殺しに来ていた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 見かねたエリナが俺の前へ出てかばおうとした。


 俺は彼女を包み込むように抱きしめ、小さく身をかがめる。


 それでも、反撃はしない。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 さっきまで響いていた怒号が、少しずつ小さくなっていく。


「なんで……」


 誰かがつぶやいた。


「なんで反撃しないんだ……?」


 誰も石を投げなくなった。


 誰も前へ出てこない。



 だが、遠くの丘の上だけは違った。


 弓を構えたままの人影がある。


 赤い髪が風に揺れていた。


 ライナだ。


 住民たちが戸惑い始めても、彼女だけは弓を下ろさない。


 その視線には、はっきりとした殺意が宿っていた。



 俺たちは、ただ向かい合っていた。


 燃え落ちる屋敷の音だけが響いている。


 住民たちの顔には、怒りよりも戸惑いが浮かんでいた。


 執事の防御魔法もそろそろ限界だ。


 それでも、もう誰も攻撃してこなかった。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 そこへ王様の一行が現れた。


「何をしている」


 王様が問いかける。


 一行の中には新代官もいた。




 彼は逃げたのではなく、王様を呼びに行っていたらしい。


 新代官が事情を報告する。



 旧代官も反論した。


「私は領民のために立ち上がったのです!」




 だが、新代官は次々と証拠を示した。


 旧代官の横領。


 脱税。


 私兵。


 扇動の手引き。


 ……など、数々の証拠だ。


 言い逃れはできなかった。


 旧代官の顔から血の気が引く。




 住民たちも、扇動が領民のためではなく、自分の保身のためだったと知った。


 何より、王様と敵対するつもりはない。


 住民たちは解散し、帰り始めた。




 追い詰められた旧代官は剣を抜く。


「黙れっ! 黙れぇぇぇっ!」


「全部あいつが悪いんだ!」


「私は悪くない!」


 新代官へ斬りかかった。


 だが、その隣には王様がいた。


 近衛兵が一歩前へ出る。


 次の瞬間、旧代官の首が宙を舞った。




 暴動は収まった。


 住民たちもほとんど帰り始めている。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 それでも最後まで俺を睨んでいた者がいた。


 ライナだ。


 住民たちが石を捨てても。


 旧代官が死んでも。


 彼女だけは変わらなかった。




 去り際、ライナは言った。


「あんただけは、絶対に許さない」


 そう言い残し、去っていった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 こうして暴動は収まり、税を下げることができた。


 しかし、屋敷はなくなった。


 明日から、どうやって生活しよう?



 そうか!


 「ウソ」をつけばいいのか!


 「ウソ」で小さな屋敷を建てた。


 3人しかいない。


 だから、小さな屋敷を。

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