俺は盾になる
税を下げ、中間搾取をやめさせるためには、新しい代官を任命する必要があった。
執事から領内の評判を聞きながら、代官候補を探し回った。
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「うん、いいね」
そう思える候補を何人か見つけた。
けれど説得しても、誰も応じてくれない。
そこをエリナが説得し、ようやく引き受けてもらえた。
ここの人間は、みんな幼女に弱いのか?
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まず、領都近くの代官を不意打ちで解任した。
新しい代官を任命し、税率を下げる。
だが、こういう代官があと4人いる。
候補者への説得は、エリナが済ませてくれている。
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2人目を解任しようとした時、暴動が起きた。
1人目の旧代官まで加わっている。
暴動鎮圧、どうやって?
暴動を知った1人目の新代官が、この領地を出たと聞いた。
あぁ、彼にも逃げられたのか……。
使用人たちに「危ないから屋敷を離れてくれ」と伝えに行くと、退職届だけを残し、すでに去っていた。
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孤立無援。
味方はいない。
手をぎゅっと握られた。
エリナだ。
あぁ、味方なし……ではなかったな。
肩をぽんと叩かれた。
執事だ。
あぁ、おまえもいたな。
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俺は執事に言った。
「反撃はするな……」
火を放たれました。
屋敷も焼かれました。
俺も、火傷を負いました。
でも、俺は殺されない。
だから、俺が盾になる。
住民に石を投げられました。
痛い。
あちこちから石が飛んでくる。
想像以上に痛い。
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見かねた執事が、防御の風魔法を張った。
住民が投げた石が弾かれる。
それでも、住民は投げるのをやめない。
しかし、防御魔法をすり抜ける矢があった。
これは……。
よく知っているスキルだった。
幼馴染の弓使い、ライナの《必中》。
防御魔法など、おかまいなしに貫いてくる。
1本目が肩に刺さる。
痛い。
2本目が脇腹を貫く。
すごく痛い。
3本目。
4本目。
遠くからでもわかる。
ライナは、本気で俺を殺しに来ていた。
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見かねたエリナが俺の前へ出てかばおうとした。
俺は彼女を包み込むように抱きしめ、小さく身をかがめる。
それでも、反撃はしない。
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さっきまで響いていた怒号が、少しずつ小さくなっていく。
「なんで……」
誰かがつぶやいた。
「なんで反撃しないんだ……?」
誰も石を投げなくなった。
誰も前へ出てこない。
だが、遠くの丘の上だけは違った。
弓を構えたままの人影がある。
赤い髪が風に揺れていた。
ライナだ。
住民たちが戸惑い始めても、彼女だけは弓を下ろさない。
その視線には、はっきりとした殺意が宿っていた。
俺たちは、ただ向かい合っていた。
燃え落ちる屋敷の音だけが響いている。
住民たちの顔には、怒りよりも戸惑いが浮かんでいた。
執事の防御魔法もそろそろ限界だ。
それでも、もう誰も攻撃してこなかった。
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そこへ王様の一行が現れた。
「何をしている」
王様が問いかける。
一行の中には新代官もいた。
彼は逃げたのではなく、王様を呼びに行っていたらしい。
新代官が事情を報告する。
旧代官も反論した。
「私は領民のために立ち上がったのです!」
だが、新代官は次々と証拠を示した。
旧代官の横領。
脱税。
私兵。
扇動の手引き。
……など、数々の証拠だ。
言い逃れはできなかった。
旧代官の顔から血の気が引く。
住民たちも、扇動が領民のためではなく、自分の保身のためだったと知った。
何より、王様と敵対するつもりはない。
住民たちは解散し、帰り始めた。
追い詰められた旧代官は剣を抜く。
「黙れっ! 黙れぇぇぇっ!」
「全部あいつが悪いんだ!」
「私は悪くない!」
新代官へ斬りかかった。
だが、その隣には王様がいた。
近衛兵が一歩前へ出る。
次の瞬間、旧代官の首が宙を舞った。
暴動は収まった。
住民たちもほとんど帰り始めている。
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それでも最後まで俺を睨んでいた者がいた。
ライナだ。
住民たちが石を捨てても。
旧代官が死んでも。
彼女だけは変わらなかった。
去り際、ライナは言った。
「あんただけは、絶対に許さない」
そう言い残し、去っていった。
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こうして暴動は収まり、税を下げることができた。
しかし、屋敷はなくなった。
明日から、どうやって生活しよう?
そうか!
「ウソ」をつけばいいのか!
「ウソ」で小さな屋敷を建てた。
3人しかいない。
だから、小さな屋敷を。
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