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ウソつき賢者の領地再建 ―クスッと笑える!?、勘違い領主コメディ(復讐から始まったはずなのに……)―  作者: 秋月心文


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7/7

俺からは受け取ってくれない

 エリナは、オリハルコンを売った代金の一部を、大量のイモで受け取っていた。


 オリハルコンの値段が高すぎて、全額を現金にはできなかったようだ。


 でも、これは助かる。


 イモはいい。


 保存が利くし、焼くだけで食べられる。


 誰でも扱えるのも大きい。


 屋敷に残っていた食糧は、すべて焼けてしまった。


 何より、領民は明日の食糧にも困っている。


 だから、当面のつなぎとしてイモを配ることにした。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 まだ火傷や石、矢で負った傷は癒えていない。


 それでも、そんなことを言っている間に領民が死んでは困る。


 屋敷はエリナと執事に任せ、俺一人で告知を行うことにした。


 体中の痛みに耐えながら、人通りの多い場所へ配布を知らせる張り紙を貼っていく。




 この領は識字率が高くない。


 それに何より、俺は領民から信用されていない。


 告知があまり意味をなさないことは、最初からわかっていた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 屋敷へ戻ると、執事がイモ料理を作ってくれていた。


 そうか。


 もう料理人はいないんだったな。


 執事の料理は、おいしかった。


「あれ、エリナは?」


「もう食事を終えて、散歩に出かけましたよ」


 そうか。


 まぁ、運動は大事だしな。


 遅くなるようなら迎えに行こう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 配布当日。


 執事に屋敷を任せ、俺とエリナで配布に向かった。


 ……行列ができている!?

 予想外だった。



 慌てる俺を見て、エリナがにっこり笑う。


 そ、そうだな。


 まずはイモを配らないと。



 慌てて配り始めた。


 ……が、俺の手からは受け取ってくれない。



 エリナからなら、よろこんで受け取ってくれる。



 まぁ、わかっていたことだけどな。


 ちょっとショックがでかい。



 イモを手渡す役はエリナに任せ、俺は箱から取り出して渡していく。



 時おり傷口が開いて血がにじむ。


 イモに血が付かないよう気を付けるのが大変だった。



 エリナが、そっと俺の傷口に手を添えた。


 痛みだけじゃない。傷まで少し楽になった気がする。


 手当てって、こういうことなんだな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翌日も配布を予定していたが、傷のせいか高熱が出てしまった。


 配布は執事とエリナに任せる。


 予想どおり、この日だけで前日の倍以上を配り終えたらしい。



 まぁ、俺がいないからな……。


 わかっていたことだけど、少し寂しい。



 でも、熱で頭がまったく回らない。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 目を覚ますと、熱は下がっていた。


 少し頭もすっきりしている。


 傷も良くなってきたのだろう。


 昨日まで上がらなかった腕が、今日は動く。


 若い体ってすごいな。


 外見も確認したいが、この屋敷には鏡がない。


 石を散々ぶつけられたし、とんでもない顔になっているのかもしれない。



 ふと見ると、隣でエリナが眠っていた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 母親を失って、まだそんなに経っていない。


 誰かに甘えたくもなるか。



 俺はエリナの頭を撫でながら、その寝顔を見守った。


 今日くらいは、ゆっくり休め。

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