俺からは受け取ってくれない
エリナは、オリハルコンを売った代金の一部を、大量のイモで受け取っていた。
オリハルコンの値段が高すぎて、全額を現金にはできなかったようだ。
でも、これは助かる。
イモはいい。
保存が利くし、焼くだけで食べられる。
誰でも扱えるのも大きい。
屋敷に残っていた食糧は、すべて焼けてしまった。
何より、領民は明日の食糧にも困っている。
だから、当面のつなぎとしてイモを配ることにした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
まだ火傷や石、矢で負った傷は癒えていない。
それでも、そんなことを言っている間に領民が死んでは困る。
屋敷はエリナと執事に任せ、俺一人で告知を行うことにした。
体中の痛みに耐えながら、人通りの多い場所へ配布を知らせる張り紙を貼っていく。
この領は識字率が高くない。
それに何より、俺は領民から信用されていない。
告知があまり意味をなさないことは、最初からわかっていた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
屋敷へ戻ると、執事がイモ料理を作ってくれていた。
そうか。
もう料理人はいないんだったな。
執事の料理は、おいしかった。
「あれ、エリナは?」
「もう食事を終えて、散歩に出かけましたよ」
そうか。
まぁ、運動は大事だしな。
遅くなるようなら迎えに行こう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
配布当日。
執事に屋敷を任せ、俺とエリナで配布に向かった。
……行列ができている!?
予想外だった。
慌てる俺を見て、エリナがにっこり笑う。
そ、そうだな。
まずはイモを配らないと。
慌てて配り始めた。
……が、俺の手からは受け取ってくれない。
エリナからなら、よろこんで受け取ってくれる。
まぁ、わかっていたことだけどな。
ちょっとショックがでかい。
イモを手渡す役はエリナに任せ、俺は箱から取り出して渡していく。
時おり傷口が開いて血がにじむ。
イモに血が付かないよう気を付けるのが大変だった。
エリナが、そっと俺の傷口に手を添えた。
痛みだけじゃない。傷まで少し楽になった気がする。
手当てって、こういうことなんだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日も配布を予定していたが、傷のせいか高熱が出てしまった。
配布は執事とエリナに任せる。
予想どおり、この日だけで前日の倍以上を配り終えたらしい。
まぁ、俺がいないからな……。
わかっていたことだけど、少し寂しい。
でも、熱で頭がまったく回らない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目を覚ますと、熱は下がっていた。
少し頭もすっきりしている。
傷も良くなってきたのだろう。
昨日まで上がらなかった腕が、今日は動く。
若い体ってすごいな。
外見も確認したいが、この屋敷には鏡がない。
石を散々ぶつけられたし、とんでもない顔になっているのかもしれない。
ふと見ると、隣でエリナが眠っていた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
母親を失って、まだそんなに経っていない。
誰かに甘えたくもなるか。
俺はエリナの頭を撫でながら、その寝顔を見守った。
今日くらいは、ゆっくり休め。
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