消える兵士
「ダウト王国側で索敵部隊との連絡が途絶えました」
「敵に遭遇したのか?」
「わかりません」
「悲鳴だけが聞こえたそうです」
「その後、姿が見えなくなったと」
そんなにやばい敵なのか。
そういえば、王様も大神官になったとか言ってたな。
クフィール王国、いや教団の兵器が使われてるのか?
だとしたら、魂を燃やされてしまったのか?
やばそうな妄想が不安を駆り立てていく。
「ナニワさん、お願いしていい?」
「はいな」
ナニワ(機甲師団長)は、頭から壁に向けて映像を投影した。プロジェクターになってるらしい。
4画面分割で各地の偵察ドローン映像を映し出している。
「おぉ!」
◇ 偵察ドローンからの映像と音声 ◇
こちらの偵察部隊の姿は見えない。
敵軍の姿だけが見える。
歩兵しかいない。
……妙だな。
騎兵も攻城兵器もない。
だからこそ嫌な予感がする。
彼らの装備は……
先端だけが鉄で、それ以外は木製の槍。
木の盾。
皮の武具。
頭には目立つ赤色の鉢巻。
離れた場所にいくつかのテントが見える。
あそこが本陣だろうか。
そこにも馬の姿はない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんや、えらい弱そうやな。どないします?」
「とりあえず、テキトーに燃やしてみて」
「はいな」
機甲師団のドローンは、
高空から対人レーザーでこっそり燃やす行動を始めた。
◇ ◇ ドローン映像 ◇ ◇
「なぜだ。どこから攻撃している」
空からという発想がない指揮官は平面的に索敵させる。
しかし、何も見つからない。
テントが燃える。
糧食が燃える。
兵士も急に燃えはじめる。
「撤退だ、撤退しろ!」
現場指揮官が、たまらず指示を飛ばす。
「いかん、動いちゃダメだ」
総指揮官の声は、現場には届かなかった。
「ぎゃぁぁぁ……」
悲鳴と共に、フッ……と兵の姿が消える。
次、次と、消えていく。
「あぁぁぁ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれが教団の兵器なのかな?」
確かに悲鳴と共に姿が消えている。
「拡大とかできる?」
「拡大だけやのうて、スローにもできまっせ」
4画面分割を1画面に、更に映像を拡大してみせた。
◇ 偵察ドローンからの映像と音声 ◇
逃げていく敵の兵士。
急に足が消えはじめる。
悲鳴をあげる。
ここからスロー映像に変わる。
足だけが道路に沈んでいた。
だんだん、体が道路の中に吸い込まれていく。
道路の中に消える際、
道路には口のようなものが開いていた。
こうして、兵士の姿は消えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれも、燃やしまっか?」
「あれとは……?」
「まぁ、やってみますわ」
◇ ◇ ドローン映像 ◇ ◇
機甲師団のドローンは、
対人レーザーを先ほどの道路に向けた。
ボッ……と燃え始めた。
燃えた後、深く大きな穴が残った。
もちろん、さっき落ちた兵士も……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えぇぇ!?」
あのへんな仕掛けは落とし穴だったのか。
落とし穴の上に布を張り、
中央だけは縦糸だけを残して切り抜いてある。
そこへ本物そっくりの地面を描いていたらしい。
「わいらが攻めてきたら落とすつもりやったんやろな」
たぶん、うちの索敵部隊も、そこに落ちたんだろう。
穴の底に人を殺すような仕掛けがないだけ幸いか。
最終的にダウト王国軍は自滅した。
王城に帰れた者は一人もなく、総指揮官すら落ちていた。
救助しようにも、偽装されているから無理だろう。
最初の戦端は、俺たちの勝ちだ。
穴にはまった、うちの索敵部隊を回収できれば、だが……。
そう思っているうちに、次の一報が入った。
「クフィール王国側でも侵攻が始まりました!」
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次回『燃料』
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※※ 次回 7/25 21:00 公開 ※※
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