例の奥の手
「王令です! すべての商取引が禁止されました!」
「クフィール王国側も同様です」
「そう来たか」
たぶん、いろんなものが不足してくるのだろう。
「他領からは何を買っていたの?」
「何もございません」
予想外の答えに固まってしまった。
「え? 出す一方だったの?」
「食糧は全ての作物が取れていますし、
オリハルコンが余るほど採れるため、
それを目当てに職人も移住してきます。
工業品にも困っておりません」
「海産物とかは? うちの領、海ないし」
「それは、遠すぎて途中で死んでしまいます」
あぁ、生きたまま運ぶ習慣なんだっけ?
「ただ、川魚が穫れますので」
「それじゃ、問題はなさそうか」
「いえ、出荷予定だったものが、余ってしまう問題が……」
「わかった。それ、俺が全部買うよ」
俺は、エリナ様にアイコンタクトで借金を求める。
エリナは、コクリと頷いた。
しかし、代官たちはザワついていた。
「いいのか?」
「いや、しかし……」
「でも、確かにこの建物なら当面は大丈夫か?」
と代官同士で話をしている。
当面は? なんか、いやなワードを聞いた気がする。
「ちなみに、何が余ってるの?」
「ネコです」
「そっちかぁ!!」
俺は頭を抱えた。
ネコは、すごい勢いで増える。
出荷していたから、領内で去勢する必要がなかった。
これからは、それも考えないと、多頭飼育崩壊を起こす。
それより問題なのは、誰が世話をするかだ。
かなりの数がいるんだろうし。
「ネコの世話をする人を募集してもらっていいかな?」
「「承知しました」」
何匹のネコが送られてくることやら……。
「そういえば、ラシド教団関連グッズとかは?」
「それは、今まで通り取引するそうです」
いらないんだが……
まぁ、いいか。生活には困るまい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ついにクフィール王国を敵に回す決意をしたそうじゃな」
ミカン(魔王)が、誰かを連れてやってきた。
「うちの王様も諸侯も、皆ラシド教団に入信してましたから」
「なるほどなぁ。あいつら、すごいいきおいで増えるからのぅ」
ミカン(魔王)は、後ろに隠れている人を前に差し出した。
「うちの機甲師団長じゃ」
師団長は、人じゃなくてロボットだった。
アンドロイドと呼ぶには、あまりにもメカっぽい外見だ。
手が4本。
足はなく下半身はスカートのようになってて、
空気を噴射して浮いてるようだ。
「よろしゅう、領主様。わいは、ナニワ言いますねん」
ロボットが流暢な関西弁で話し始めた。
しかも名前がナニワって……。
「魔王軍も、
そなたの領、いや国か。
それに協力すると決めたのじゃ」
ミカン(魔王)は、ケロっとそんなことを言う。
「さっそく、機甲師団を駐留させるのじゃ」
「やばそうな敵と戦うので、正直助かりますが……」
ん? 機甲師団? 戦車とかってことか?
「違いますわぁ~。旦那さま、ドローン部隊ですわぁ~」
ポンッと音をたてて、2m四方くらいの大きさのドローンが出てきた。
「こんな感じですわぁ~」
思ってたより大きなドローンだった。
「魂を持ってる部隊だと相手を強くしてしまうからのぅ」
ミカン(魔王)が、そう補足する。
「わいの軍勢は、常に増産中なので消耗戦には有利やで」
「へ、へぇ……」
機械だけで構成された軍勢ってことか。
「ちなみにナニワさんも瞬間移動とかできる人?」
「できへんで、機械やし。
そのかわり、わいのバックアップがぎょうさんおる。
バックアップとは常に情報共有しとる。
そやから、問題あらへんで」
なるほど……。
「変形もできるで」
ナニワ(機甲師団長)は、ガチャガチャと変形してみせた。
体のあちこちから砲身が出ているスタイルに変わった。
何かのロボットアニメっぽい変形ぶりだ。
変形前より大きくなったんだが、どういう仕掛け?
「と、とりあえず、期待してます。よろしくお願いします」
「ところで、クフィール王国と戦うのはわかってるのじゃが」
「はい」
「そもそも、そなたの元いた国って、何て名前なのじゃ?」
「え?」
そういえば、特に考えたこともなかったな。
ファリスの記憶を探ってみよう。
う~ん。
う~ん……。
ダメだ。サッパリ見つからん。
自分の国の名前を知らない公爵ってどうなの?
まぁ、俺も知らなかったけど。
「メタボ王国ですわぁ~」
メタボ!? そんな国名だったの。酷っ!。
「マジか……」
「もちろん、嘘ですわぁ~」
そう言って、ローラは、ケタケタと笑った。
「で、ホントは何なの?」
「ダウト王国ですわぁ~」
なんだか嘘くさいな。
「ですから、ダウト王国ですわぁ~」
マジか。そんな国名だったのか。終わってるな。
「……だ、そうです」
「そうか」
「承知したで」
ミカン(魔王)とナニワ(機甲師団長)が答える。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、そのダウト王国では、こんな話が進められていた。
「例の奥の手を展開しろ、大至急だ」
総指揮官の指示に対し、諸侯たちが反論した。
「あんな危ないものを?」
「あれは、手の打ちを見せることになるのでは?」
しかし、結局押し切られた。
「とにかく展開するのだ、いそげ」
「承知しました」
--------------------------------------------
次回『消える兵士』
--------------------------------------------
・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
※※ 本日は、この1話のみです ※※
--------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




