ファリスはファリスだよ
「またおまえらか!」
そう言いつつ、索敵魔法で、周囲を探る。
あれ? ウルスも執事もいない?
ライナも弓も構えていないようだ。どういうことだ?
そう思った瞬間だった。あいつが話しかけてきた。
「あなた、ウルスなの?」
ライナがそう聞いてきた。
「ファリスはファリスだよ」
エリナがそう答える。
「えっ!?」
予想外の答えに俺と幼馴染が固まった。
ライナが聞いているのは、ファリスの体に入っているのがウルスの魂なのかどうかだ。
一方、エリナにとっては、俺は最初からファリスだったもんな。
「あぁ、そうだよ」
「えっ!?」
ライナとレスタは顔を見合わせた。
あれ?
あぁ、俺が肯定したのが、エリナの回答を肯定したように伝わったのか。
「今はファリスの体に入ってるけど、お前らと一緒にいた時はウルスだったよ」
「えっ!?」
今度は二人とも言葉を失った。
……そうか。ファリスの魂が入ったウルスとも一緒に行動してたから、どこから変わったのか伝わらなかったってことか。
なかなか伝えるって難しいな。
「俺がウルスだったころファリスに襲われたのは、お前らも見ていたと思う。あの時に、スキルの力で体を入れ替えたんだ」
「よかった、やっぱりウルスなのね」
「ファリスはファリスだよ」
エリナさ~ん、話がややこしくなるからやめて~。
「エリナとは、ファリスの体にウルスが入ってから出会ったんだ」
「えっ!?」
予想外の答えにエリナが固まった。
「とにかく、エリナにとっては俺はファリスだし。ライナとレスタにとっては、俺はウルスだってことだ」
ややこしすぎるだろ、これ……。
「2つの名前で呼ばれると、エリナも混乱するから、今はファリスということで頼む」
「わかったわ」
俺は警戒をしたまま聞く。
「それで、何の用?
この前のバトルの続きなら勘弁して欲しいんだが」
「今まで、ごめんなさい。その、私たち勘違いしてて……」
「お前らが謝るなんて、生まれて初めての体験なんだけど」
「あははは……。やっぱり、ウルスだ」
「そこで、本人認定するなんて酷くない?」
エリナが間に割って入る。
「ファリスはファリスだよ」
エリナさ~ん、また話がややこしくなるから!
「わかった。謝罪は受け入れる」
「ありがと」
俺は馬車に乗り込もうとするが……
「出かけるの? その道中でいいから話をさせてよ」
「すまん、うちの馬車2人乗りなんだ」
と話していると、馬車が2台あることに気づいた。
「何これ?」
デカい馬車が増えている。
「4人乗り」
エリナがボソッと言う。
「え?」
いつの間に?
「こんなこともあろうかと……って職人さん言ってた」
マジか。
「じゃあ、乗ってくか」
「ありがと」
「どっちか御者をお願いできる?」
2人は顔を見合わせた。
「あんたんとこ、使用人いないの?」
「執事しかいなかったんだが……」
「あぁ。あれね」
「そう、この前離反したのでいなくなった」
「うん、見てた」
2人はふふっと笑った。
2人は何やら話し合った上で、レスタが御者を務めることになった。
「行先は?」
「王城だ」
「道はわかるか?」
「大丈夫!」
レスタは馬車を動かし始めた。
「レスタ、王城なんて行ったことあるの?」
「回復魔術師は稀有なので、時々呼ばれるの」
「へぇ」
ライナが聞く。
「王城? 何しに?」
「王様が戦争を始めるって言うから、その軍議に呼ばれてるんだ。これでも公爵なんでな。」
「へぇ」
「なってしまったものは仕方ないだろ」
「うん、えらいえらい」
ライナが頭を撫でる。
横でエリナが不機嫌そうにしている。
仕方ないので、俺がエリナの頭を撫でる。
「それじゃあ、戦力が必要になるわね」
「うん? あ、あぁ」
ライナは走る馬車から飛び降りる。
「冒険者にも声をかけておくわ。続きは帰ってから聞かせて」
「お、おぅ」
レスタが馬車を操りながら聞いてくる。
「あんた軍隊持ってたの?」
「あぁ、ララソ領がうちの一部になったので、そこからな」
「なるほど」
「知らない間に軍備が拡張されててビックリしたけど」
「ふ~ん」
とはいえ、戦争相手が魔王領やクフィール王国なら、戦えるとは言い難いのだが……
「それにしても、うちの領ネコが多いわね。
すごく走りにくいんだけど」
レスタが愚痴をこぼす。
急に空から降ってくるしな……
道の上で寝てるコもいるし……
ネコを避けるため、あまり速く走ることができないようだ。
少し進んだあたりで、馬車に何かが飛んで来た。
オリハルコンで覆っているので、防弾のはずだが貫通してきた。
この攻撃は、まさか……
--------------------------------------------
次回『改宗か、戦争か』
--------------------------------------------
・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
※※ 本日は、この1話のみです ※※
--------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




