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【完結済】ウソつき賢者の領地再建  作者: 秋月心文


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51/62

神官と目を合わせるな

「教会予定地に巡礼者が殺到しています」

「えっ? なんで?」

「ラシド教団が聖地認定したので……」

 なんてこった。


「教会の近くに新しくできた宿屋が、とても儲かってるそうです」

 ダンジョンのまわりに建物が増えてたのは冒険者絡みだけだと思っていた。

「その宿って、巡礼者とダンジョン目当ての冒険者、両方泊めてる感じ?」


「はい。ですが……」

「巡礼者や冒険者が増えすぎて、宿に泊まれず、畑や公衆トイレで寝る者が続出しトラブルが絶えません」

 トイレで寝るのか?

 まぁ、屋根があるから屋外よりマシってことかな?

「トイレは特に個室になってるから、人気のようです」

 なんでここの人たちは、俺の予想と違う行動に出るのかなぁ。


「宿屋は増やしてるんだよね」

「はい、しかし建てても建てても、それを超えてくるので」

「まぁ、そこは宿屋の頑張りに期待しようか」


「とはいえ、それまで公衆トイレの個室が使えないと、外でする人が増えてしまうので」

 そうか。それは衛生上よくないな。


「簡易の宿屋を作るしかないか」

 俺は、カプセルホテルのような寝る場所だけの簡易宿泊施設を提案した。

「それは、いいですね。宿屋に提案してみます」

「うん、よろしく頼む」

 俺が直接言うと、殆どの領民は話すのも嫌がるから、こうして代官を通じてお願いしている。


「でも、巡礼者が増えるほど、神の御力が強まるので良いことだと思います」

「神の御力って、神官さんの使う神術のこと?」

「ええ。神術は神の御力を借りる術です。信仰が集まるほど、その力も増します」

 なんだか、怖い話を聞いた気がする。

 そういえば代官は、みんな信者だっけ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 夜、領主館タワマンの高層階から教会を見る。

 灯された明かりは何かのマークにも見えた。

 魔法陣とか、そういうのに見えなくもない。

 気のせいだよね。


 ・ ・ ・ 翌日 ・ ・ ・ ・


 教会が完成すると、派遣されたミミレ神官が、領主館タワマンへ挨拶に訪れた。

 ソソファファ・ミミレ神官。ドドソソ・ララソの親戚らしい。

 入ってくるなり、くしゃみが絶えない。

 アレルギーとかだろうか?


「花粉症ですか?」

「花粉症というのは、わかりませんが。この領に来てからくしゃみが絶えなくて」

「それは大変ですね」

「私、ネコが近くにいると、くしゃみが止まらないんです」

 ネコ・アレルギー確定じゃん。


「うちの領はネコ領と呼ばれるほど、ネコが多いですから、大変かもしれませんね」

「この部屋でもネコを飼われてますか?」

「飼ってはいないですけど、勝手に入ってきます」


 魔王とか、魔王とか、魔王とか……ね。


「この幼女は? 報告にないのですが」

 ミカン(魔王)を指さして言う。

 報告って何だよ。怖いな。


「いわゆる戦災孤児ってやつです。ここが気に入ったらしく居ついてしまって」

「なるほど、うちで預かりましょうか?」

「え?」

「教会では孤児院を運営しておりまして、孤児を積極的に受け入れております」


 魔王と戦ってる人たちにミカン(魔王)を預けるわけにはいかんでしょ。


「この子の気持ちを優先したいと思っていますので……」

「そうですか。それじゃあ、私からも聞いてみますね」


 ミミレ神官はミカン(魔王)と同じ高さまでしゃがみ、目を合わせると、

「あなたも、うちの孤児院に来ませんか?」

 そう言うと、ミミレ神官の目がピンク色に光った。

 怖っ……。絶対、何かしたでしょ、この人!


「今のままがいい……」


 ミカン(魔王)は、子供っぽく、俺の後ろに隠れた。

 そのとき、小さな紙を手渡した。

 紙には、

──洗脳魔法じゃ、注意せえ。目を合わせぬようにな──

 と書いてあった。

 やっぱりあのピンク色の光はそれか……。

 これまでもこんなやり方で孤児を集めてきたのかな?

 とんでもない連中だな。


「ずいぶん、魔力が強いお子さんなのですね」

 洗脳魔法が効かなかったことを疑っているのだろう。


「さぁ、よくわかりません」

「うちなら、魔力の強いお子さんの良さを伸ばしてあげられますよ」

「本人が嫌がってるので、やめておきます」


 ミミレ神官はエリナの方へ向かったが、

「私も、今のままがいい……」

 先にエリナに言われてしまい、諦めた。


「もし気が変わったら、来てくださいね」

 いや、あんた何か怪しいから。


「同じ境遇の子がいっぱいいるので、お友だちもたくさんできると思いますよ」

「嫌!」

 エリナがひとことで切り捨てる。


 ミミレ神官は、突如話題を変えた。


「領主様、今夜、教会完成披露のお祭りをしますので」

 お祭りだから、少し騒がしくなるということだな。


「領主様も絶対来てくださいね」

「え? 俺も行かないといけないの?」

「もちろん」

 ミミレ神官は、そう言うと一通の手紙を差し出した。

 この手紙は……王様からか。

──教会の完成披露には絶対に出席するように──


 なんで?

 おいおい、マジか。

 王命じゃん。

 逆らえないじゃん。


「はぁ……」

「納得していただきました?」

「ええ、よくわかりました。出席させていただきます」

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 次回『歓迎という名の罠』

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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・

※※ 本日は、この1話のみです ※※

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