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【完結済】ウソつき賢者の領地再建  作者: 秋月心文


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50/62

うちの領地にダンジョンが生えました

「どうした渋い顔をして」

 魔王がそんなことを言ってくる。

 おまえのせいなんだが。


「そういえば、何とお呼びすればいいですか?」

わらわのことか?」

「さすがに人前で魔王様と呼ぶのは危険な気がするので」

 魔王を領内に住ませていると知れたら、間違いなくクフィール王国が攻めてくるだろう。正直、怖いんだが……


「ふむ。なら、お主が名付けてくれ」

「えぇ?」

 オレンジ色のネコの姿が本当の姿。

 オレンジと呼ぶのはかわいくないな。

「それじゃあミカンで」

「おぉ、イイ感じの響きじゃな。気に入ったのじゃ」

 ミカンで気に入られるとは思わなかった。


わらわもお主にお礼をしなくてはな……」

 そう言って、やばそうなものを持って来ないで欲しい。

「えぃ!」

 幼女の姿で、そんなかわいい掛け声をした。

 ちょっとかわいい。

 そのあと、ゆっくりと窓の方に向かう。

「見てみぃ」

 領主館の近くを指さす。

 血のように禍々しい赤い色の大きな木が立っていた。

 家が数件入るほどの太さだ。

 しかも、教会予定地の近くに。


「あれは?」

「ダンジョンじゃ」

「は?」

 どういうこと?


「近づくとゲートが開いて中に入れるのじゃ」

「中で遭遇する敵を倒せば魔道具が手に入るとか?」

「うむ、そんな感じじゃ」

 儲かるかもしれないな。


「試しに行ってみるか?」

「武器らしい武器持ってないんだが?」

 俺が持ってるのは刃をつけてない訓練用の剣だけだ。


わらわが倒すから、ついてくるだけでよいぞ」

「まぁ、それなら……」

「行ってみたい」

 服の裾をエリナに引っ張られた。

 危ないけどミカン(魔王)が先導するなら大丈夫かな。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ダンジョンという巨木の前まで来た。

 見るからに禍々しい色をしている。

 近づくと入り口が現れた。

「行くぞ」

 ミカン(魔王)に連れられて中に入る。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 中は青白い光で満たされた通路のような場所だ。

 照明器具がついているわけではないが、通路自体が淡く光っている。眩しくはないが暗くもない。


 しばらくはゴブリンとかスライムとか定番の魔物が出て来る。

 ミカン(魔王)は、無詠唱で魔法を繰り出し、魔物が近づく前に倒していく。

 魔物はゲームのように爆散して消えていく。

 血も出ない。


 もっと血みどろのえぐいやつを想像していて、エリナの教育上良くないと思ってたのだが、これなら問題ないだろう。

 だけど、こっちが死んでも、あぁなるのかもと思うと怖い。


 時折、宝箱みたいなのが置いてある。

 開けると、身代わりの護符とかいうのが出てきた。

 俺一応、鑑定ができるんだよね。


 俺は殺されないので、護符はエリナにあげた。

 エリナは、とてもうれしそうだった。

 早速身につけていた。


 ほかにも宝箱に遭遇し、身代わりの護符、魔法式ボウガン(矢が不要)、盾の腕輪(身に着けると体が透明な盾で守られるが、一定量ダメージを受けると壊れる)などなど、いろんなものが出てきた。

 いいな、ダンジョン。


 1層目のボスとかいうやつを倒し、ちょっとカッコイイ感じの装備品一式を手に入れた。


「どうじゃ? ダンジョンは」

「いいですね。すごくいい。早速、観光の目玉にします」

「ダンジョンで死んだら帰ってこれなくなるので、そこんとこ注意しておくのじゃぞ」

「はい。ありがとうございます」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺は早速、冒険者ギルドに向かった。

 俺一人で行くと、信用がないから受付で断られるので、

 エリナ同伴でギルド長への面会をお願いする。

 お金の話が出たら、エリナ様の力も必要になるし。


 ダンジョンが「できた」と言うと、誰が作ったって話になりそうだ。

 見つかったというテイで話を進めよう。

「ダンジョンが見つかったんだ」

「なんだと」

 身を乗り出してきた。ものすごい食いつき方だ。

 キスするのかと思うくらい顔が近い。

 そういう趣味はないので、ギルド長を手で押し返す。


「領主館の近くに変な色の木があったんだけど、そこがダンジョンだったんだ」

「そんなの初耳だな」

「教会を建てるために、木を切っていてな。それでわかったんだ」

 テキトーなことを言ってごまかしてみる。

「なるほど」

 信じたらしい。


「それで昨日行ってきた結果が、これだ」

 ダンジョン産のアイテムをいくつか見せる。


「おぉ、いいな。これ」

「あげないぞ」

 ギルド長は目を輝かせてアイテムをガン見していた。


「だけど、面倒なので管理を任せてもいいか?」

「いいのか、それは願ってもない話だ」

「あぁ。ただ、中で死ぬと帰ってこれなくなるらしいから、そこんとこ注意しといてくれ」

「わかった。自己責任ってことだな。承知した」


 一応、これで大丈夫かな。


 エリナが俺の服の裾を引っ張ってくる。

 ん? 何か忘れてるだろ?

 ……とでも、言いたげな顔をしている。

 確かに、お金の話をしておかないとな。


「手に入れたものは価値を鑑定して、それを基準に税金を納めてくれよ。税金が払えない者は、中で入手したアイテムを没収して売りに出すとかしてでも」

「そこまでするのか?」

「そこまでするよ。うちの領の貴重な財源だ」

「しかし……」

 渋ってるな。まぁ、面倒な話だもんな。


「本来なら領主の俺だけで独占できるところを、あえて任せると言ってるんだ。破格な条件だと思うんだけど」

 ギルド長は少し考えた上で、

「わかった。その条件をのもう。税率は?」

「収入に対する税率が決まってるだろ。あれと同じで。あぁ、他領から来た者からも同じように徴収してくれよ」

「承知した」


 それじゃ、契約をまとめようか。

 そう言っている間にも、ギルド長はダンジョンのことで頭がいっぱいのようだ。すぐにでも行きたいという気持ちが伝わってくる。


「ダンジョン最深部のコアを破壊すると、ダンジョンが無くなるらしいから、その点も注意していてくれ」

「あぁ」

「もしも、ダンジョンから魔物が出てきたときの対応も任せるからな」

「あぁ」

 即答で、同じ言葉で返事が返ってくる。

 たぶん聞いてないな、こいつ。

 そんなことより、早く行きたい……という感じだろうか。


 まぁ今言ったことは契約書に書いてあるから大丈夫かな。

 契約書は昨日、エリナとミカン、ローラの助言をもらいながら作ったので、カンペキなはずだ。

 幼女に手伝ってもらって作るのも、なんとも情けない話だが。


 ◇ ◇ ◇ 数日後 ◇ ◇ ◇


 ダンジョン付近に建物がいっぱい立ち並んだ。

 この数日の間に、突貫工事をしたらしい。


 ダンジョンのまわりは、頑丈な塀で覆われ、入口には鍵付きの丈夫な扉が設置されていた。

 許可なく入れないようにするためと、ダンジョンからあふれた魔物が出ないようにするためだろう。

 数日しか経っていないのに大したものだ。


 俺は今、そういう変わりようを見つつ、代官の報告を聞いている。

「商人や冒険者の中に、ダンジョン成金と呼ばれる人たちが誕生しました」

 へぇ……。ものすごく儲かってるらしい。


「領の収入もかなり増えました」

「領内には、ダンジョン目当てで移住してくる人も増えて、建築ラッシュが発生しています」

「それを見越して建築のできる者たちが大量に来ています」

 いいことじゃないか。


「そのおかげで、教会の完成も早まるそうです」

 え? もうできちゃうの?

 困るじゃないか。


「明日には完成するそうです」

「えぇぇ!?」

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 次回『神官と目を合わせるな』

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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・

※※ 本日は、この1話のみです ※※

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