殺せない男 VS 殺せない男
先日、ウルス復活の話を聞いて以来、
俺にはひとつ気になることがあった。
俺は今「殺せない」状態なんだろうか?
俺はウルスだった頃「殺せない」という「ウソ」をついた。
ウルスはあの怪我でも死んでいない。
つまり、ウルスの体に「殺せない」という「ウソ」が残っている可能性が高い。
ファリスになってから、死んだことはない。
だけどホントに殺されないのか確かめたことがない。
確かめる方法は?
同じ「ウソ」をついてみるか?
試してみよう。
「ネコは空を飛ぶ」という「ウソ」をついた。
先日ついたばかりのヤツだ。
ブブーという音が脳内に響いた。
同じ「ウソ」は重ねがけできないらしい。
よし、確かめてみよう。
「俺は、絶対に殺せない!」という「ウソ」をついた。
澄んだ音が脳内に響き、空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
「ウソ」が発動してしまった。
今の俺がその状態だったのなら、
重ねがけになるから発動しないだろう。
しかし、発動してしまった。
ということは、最初についた「ウソ」は、
俺と一緒にファリスの体へ付いてこなかったようだ。
危ねぇ~
今まで俺、殺せない状態じゃなかったのかよ。
思い出してみると、それなのに、かなり無理していた。
石をボコボコ浴びたり、
矢がザクザク刺さったりしてたもんなぁ。
体がブルっと震えた。怖っ……
もしかすると、あれで死んでたのかもしれなかったのか。
死ななくてよかったぁ。
でも、これで俺は安心だ。
いや、違う。
最初についた「ウソ」は、ウルスの体に残ってる。
あいつも殺せないということだ。
だけど、あいつは俺を恨んでいる。
殺せない男 VS 殺せない男 ……どっちが勝つのかな?
ぬっと、ローラが現れた。
相変わらず勝手に心を読んだらしい。
「それは、『神術』が使える勇者に分がありますわぁ~」
「どして?」
「神術は『殺す』のではなく『魂を燃やす』のですわぁ~」
「は?」
「突然『寿命が終わる』感じですわぁ~」
「怖っ……」
「ロドス領を出たら旦那様の最後ですわねぇ~」
そう言ってケタケタ笑った。
俺は……
「神術を使えない」という「ウソ」をついている。
たぶん、これは自分の領内のみ有効だ。
さっき、「殺せない」という「ウソ」を付け足した。
しかし、寿命に対しては何の対策もしていない。
殺せないけど、自然死については対策してない。
「今の旦那様の『ウソ』は寿命が来たら死ぬのではぁ~?」
あぁ、そうだとも……
やばくない?
やばいよね!?
絶対やばい!!
とはいえ、永遠に生きるというのもまっぴらごめんだ。
痴呆でボケまくったまま永遠に過ごすなど、ゾッとする。
「『神術』に対する対策ってないの?」
「近づかないことですわぁ~」
「近づいちゃったら?」
「ひたすら逃げることですわぁ~」
それだと不意打ちくらったら終わりだ。
「他には?」
「『俺には神術が効かない』という『ウソ』をつけばよろしいのでは?」
「なるほど」
早速「ウソ」をつこうとしたら……
「問題もあるので気をつけるのですわぁ~」
「問題?」
「『神術』を無効にしたら神術での回復も無効になりますわぁ~」
マジか……
でも、神術で回復できる人が身近にいないから影響ないかも。
「この前みたいに、腕が生えることはなくなりますわぁ~」
「あれ、エリクサーの効果じゃないの?」
「ウルスの体には効かなかったですわぁ~」
え~と……
「あれはエリクサーではなかったということですわぁ~」
エリクサーを飲んだ時、エリナが手で支えてくれた状態で飲んでたっけ。
そういえば前に石を投げられて怪我した時も、エリナの手が触れたら痛みが引いたっけ。
もしかして、エリナが触れると『神術』の回復が使える?
「つまりお前は、エリナが『神術』を使って俺の手足を戻したと?」
「それしか考えられないですわぁ~」
「エリナは『神術』の使い方知ってると思う?」
「使い方を知ってるかはわかりませんけど、あの子も王族ですわぁ~」
ちょっと待て?
『神術』は何を使って発動させるんだっけ?
確か魂!?
「『神術』は術者の魂を削って奇跡を行使するんだっけ?」
「そうですわぁ~」
なんてこった。
エリナはこの前、俺の腕を治すために魂を削っていたことになるのか。
もし『神術』を無効にした状態で俺が大怪我をしたら、
エリナは俺を回復させるために、自分の魂を削り続けかねない。
そう考えていたら、脳内にリキャスト音が響いた。
また「ウソ」をつける状態になった。
「『神術』では俺を『殺せない』」という「ウソ」をついた。
澄んだ音が脳内に響き、空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
無事に「ウソ」が発動したようだ。
「どうよ?」
俺はドヤ顔で言う。
「ふふっ、死ぬ1分前まで『神術』で削られたら、サクッと死亡ですわぁ~」
「う……」
なんてこった。
俺は詰めが甘いらしい。
また一から考え直しか。
--------------------------------------------
次回『聖なるおどり』
--------------------------------------------
・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
※※ 本日は、この1話のみです ※※
--------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




