勇者ウルスの腕がもげた
「巡礼者は、すぐ帰ってくる」
という「ウソ」をついた。
澄んだ音が脳内に響いた。
成功だ。
推しが強すぎて、うちの領から出た巡礼者がクフィール王国から帰って来なくなった件は解決かな。
けれど、思わぬ事件が起きた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「巡礼者の帰還が相次ぎ、領内人口が戻って来ています」
そうだろう、そうだろう。
「しかし、新たな問題が……」
今度は何?
「推しから離れたことで、仕事が手に付かないご婦人が増えているそうです」
なるほど。そうきたか。
「こればかりは、慣れてもらうしかないな」
でも、これで一件落着だよな。
「あと、とんでもない事件が起きました」
嫌な話でないといいのだが……
「勇者ウルスの腕がもげたのです」
「は?」
どゆこと?
「うちの領出身ということもあり、領内では大騒ぎです」
という報告を代官から聞いた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
代官が帰ったあと、ひとり考えていた。
教会巡礼者がクフィール王国のラシド教団・大教会へ行くようになってから、ウルスの手足が生えた。
帰ってこなかったはずの教会巡礼者が帰ってきたら、ウルスの腕がもげた。
これって、巡礼者がウルスの腕の材料にされてたってことだよね。
ゾクッとした。
「それが、連中の手口ですわぁ~」
ローラがぬっと現れた。
「巡礼者の何がウルスの手になってたの?」
「巡礼者の魂ですわぁ~」
え?
もしかして、巡礼者さんたち、死んじゃってたの?
「たぶん、死んだから帰れなかったんでしょうねぇ。
それを、旦那様が《フェイク》で無理やり戻したのですわぁ~」
「あいつら、うちの領民を……」
でも、領民は戻って来てるし、
ウルスの腕が戻るまでは、大きな動きもできないだろう。
「腕はすぐ再生されると思いますわぁ~」
「そうなの?」
安心できないの?
「ゴキブリとラシド教団の信者は、1匹みたら100匹いると思えって言うじゃないですかぁ~」
「そのたとえ酷くない?」
「全然酷くないですわぁ~」
ローラは魔王軍幹部だから、そういう考えなのかもな。
「なんにしても、腕が戻るのは時間の問題ってことか」
「そうですわぁ~」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「よぉ、ファリス」
ドドソソ・ララソが、大量のネコを引き連れてやってきた。
胸に下げたマタタビの飾りが原因とはいえ、モテモテだな。
「今度は、どんな問題だ」
「酷いな! お前のためを思って話つけたのに」
「誰に?」
「ラシド教団の大神官に」
やばいヤツら(教団)の親玉じゃん。
「え? えぇぇ?」
「明日、ここに来てくれることになったから」
「明日って……もっと早くに言ってくれよ」
「サプライズってやつだって」
そんなサプライズいらねぇ。
「わしの親戚なんじゃ。感謝しろよ」
文句しか浮かばない。
嫌な気しかしない。
はぁ……
明日か。
やばいヤツら(教団)の親玉が来るのは。
ホント……最悪だ。
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次回『大神官がやってきた』
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※※ 次回 7/14 21:00 公開 ※※
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