終わってるな、この領地(改訂版)
第1話の構成を入れ替えたので、必然的に、第4話にも修正が生じました。
既に読んで下さった方、すみません。
さて、俺は領主になってしまったわけなのだが……
領地経営に必要な情報が見つからない。
机の中には、無造作にぶち込まれた借用書。
一番直近の借金返済期限まで、あと7日。
ファイルにすらまとめられていない。
執務室の本棚を見る。
スッカラカンだ。
おまえ、何してたん?
これから領地経営していくためには、情報が必要だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
財務官の集まる部屋をのぞくと、カードゲームで遊んでいる。
帳簿すら見当たらない。
本棚の中は、ゲームでいっぱいだ。
経営というものを知らんのか、おまえら……。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ため息が出る。
領主の記憶からたどってみる。
頼れそうな人物はいないか。
体を鍛えた記憶……うん、強靭な体になりそうだね。
剣術を鍛えた記憶……うん、なかなかの腕前みたいだね。
攻撃魔法を鍛えた記憶……うん、すごく魔法を勉強してたんだな。
……って、領地経営の記憶はないんか~い。
……ん?
そうだ。
この屋敷には、執事がいた。
多くの使用人は領主を恨み、あるいは恐れていた。
だが、この執事だけは違った。
幼い頃から領主に付き添い、駄目なことは駄目だと教えてきた人らしい。
執事の名前は、ルディア・スミス。
早速、執事を探した。
途中で出会う使用人の視線が憎しみに満ちていて、ちょっとしんどい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
執事を見つけた。
落ち着いた老紳士のようなたたずまいだ。
「スミスさん」
話しかけると、執事が不思議そうな顔で見た。
「あれ? 名前間違えた?」
「いえ、合っておりますよ、領主様」
「この領の経営状態を知りたい!」
「え?」
執事が固まった。
「何か、おかしなこと言った?」
「いえ……」
「私、20年お仕えしておりますが、その言葉は初めて聞きました」
「早速、ご用意します」
「ありがとう、お願いします」
「………」
何か言いたそうな顔だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
執務室で待っていると、屋敷中が大騒ぎになっていた。
「隠せ! 隠せ!」
「ここは書き換えろ」
「これは燃やせ!」
「計算が合わんぞ!」
「これも書き換えろ!」
「この書類も燃やしてしまえ!」
おまえら……。
全部、聞こえてるよ!
ん~。
これは……
「わからないことが、わかった」
……というヤツか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
案の定、提出された報告書は改ざんだらけだった。
計算まで間違えている。
まぁ、予想はしてたけど。
数字は信用できないとしても、この領の状態は見えてきた。
人口は減少中。
子供はほとんどいない。
数年ごとに疫病が流行る。
水害も繰り返し発生。
治水工事は一度もなし。
終わってるな、この領地。
う~ん。
やるべきことが山積みだ。
領主のもとには5人の地方代官を経由して税が納められている。
おそらく5人とも、大幅に中間搾取している。
まずは正確な情報を――
いや、その前に重税をやめさせるべきか。
課題が多すぎて、頭が回らなくなってきた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
金はない。
信用もない。
頼れる味方は執事だけ。
借金返済まで、あと7日。
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