直接対決(改訂版)
第1話の構成を入れ替えたので、必然的に、第3話にも修正が生じました。
既に読んで下さった方、すみません。
「キサマが、ウルスだな!」
なんだか、とってもキラキラした服に身を包んだ男が立っている。
こんな村には、とても場違いな服装だ。
道路は舗装されてないので、あちこちに泥だらけの水たまりがある。
思わず泥水を浴びせたくなるが、当然そんな勇気はない。
服を汚しただけで殺してきそうだから。
できれば、かかわりたくない。
「いえ、人違いです」
その男の隣にいる執事風の男が耳打ちする。
「領主様、あの男で間違いありません!」
断定するくらいなら、最初から聞くな!
え?
……領主?
というか、俺を殺そうとしてるヤツ?
このままスルーしたら、殺されたりしそうだな。
まぁ、殺せないけどね。
どうする?
△.ひれ伏す
▢.死んだふり
〇.シカト継続
×.全力で逃げる
俺は、思わず「全力で逃げる」を選択した。
「おい、待て!」
ついて来ちゃったよ。
俺はできるだけ水たまりの多い道を選んで逃げた。
どうする?
△.ひれ伏す
▢.死んだふり
〇.ジャンプ
×.全力で逃げる
「ジャンプ」でデカい水たまりを飛び越えた。
「止まれ!」
男の声に
近くの村人がびくりと震えた。
誰も顔を上げない。
村人たちは凍り付いたように静かだった。
俺だけが状況を理解していなかった。
男は、まだついて来る……。
バシャッ。
ヤツが水たまりにハマった音がした。
見ると、相手の足元が泥だらけだ。
うはははは。
声に出すのは失礼なので、心の中で笑う。
でも、笑いをこらえるのに必死だ。
しかし、捕まってしまった。
突然押し倒され、馬乗りになられた。
……動けない。
ヤツは剣を抜き、一方的な蹂躙を始めた。
賢者って聞いてたんだけど、やっぱり剣なのね。
魔法は近すぎると巻き込まれるのか?
いや、そんなことはどうでもいい。
とにかく俺は、今、殺されかけている。
何度も気を失う。
だが、激痛で何度も目を覚ます。
過去の「ウソ」によって死ねない。
受ける苦痛だけはダイレクトに伝わってくる。
一方的だった。
剣が振り下ろされる。
肩が裂ける。
腹が裂ける。
足が切り落とされる。
腕が切り落とされる。
だが、死なない。
だから終わらない。
死なないということが、こんなにも地獄だとは思わなかった。
たとえ死ななくても、精神の方がもう耐えられない。
このままでは、精神の方が死んでしまいそうだ。
何かないのか?
この危機を乗り切る方法は?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
頭の中で不思議な音が鳴った。
なぜか察した。
《フェイク》が使えるようになった合図だ。
これで、また「ウソ」を発動できる。
どんな「ウソ」をつくべきか……。
今の俺は、満身創痍だ。
まさに手も足も出ない。助かったところで、何もできない。
半分意識が朦朧としている中、精一杯の力で言葉を口にした。
「おまえは俺だ!」
そういう「ウソ」をついた。
力ない小さな声だった。
それでも発動したようだ。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
領主と俺の境界が曖昧になる感覚がした。
次の瞬間、視界が反転した。
――俺の体と領主の体が入れ替わったのだ――
気づけば俺は、領主の体で元の俺の上に馬乗りになり、見下ろしていた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
領主は出血多量で死にかけている俺の体へ移ったはずだ。
とどめは刺さない。
殺せないという「ウソ」が残ってたら困るから。
だから俺はじっと様子を見守った。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
領主(俺の体)は、だんだん息が薄くなっていった。
領主は何か言おうとしていた。
だが、声にならない。
やがて動かなくなり、息も感じられなくなった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
念のため、領主(俺の体)を豪炎魔法で焼こうとした。
「殺せない」という「ウソ」が残ってたら、
こんな状態でも生きてるかもしれない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし――
ヒュン。
矢が飛んで来た。
ライナだ。
憎しみを隠そうともしない目で俺を睨んでいる。
ああ、そうか。
今の俺は領主の姿なんだった。
しかも、俺の死体を焼こうとしているように見えたのだろう。
これ以上はやめろ。
そういう警告か。
せめて手厚く弔ってやりたいということなのだろう。
何か言い訳をしたかったが、この状況ではどんな言葉も届くまい。
俺は仕方なく、無言でこの場を後にした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
俺に追撃があるのではないかと、少し怖れていたが、何もなかった。
後ろでは、レスタが回復魔法をかけている。
それどころではない、ということなのだろう。
もはや回復できる状況にはないと思う。
それでも、回復魔法をかけずにはいられないということか。
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