かわいいからね(改訂版)
第1話の構成を入れ替えたので、必然的に、第2話にも修正が生じました。
既に読んで下さった方、すみません。
「まかせて!」
大柄の少女が狙いを定めた。
息を止め、矢を放つ。
長い赤髪が揺れる。
ザクッ……。
相手の額に矢が食い込んだ。
この魔物は、イーゼルボア。
風の防御魔法に覆われ、こちらの攻撃が通らない。
突進力がハンパない。
でも、矢は頭を「貫通」していた。
少女は俺の幼馴染、ライナ。
彼女のスキル《必中》は、必ず当たる。
どんな防御魔法も、どんな硬い骨も貫いてしまう。
かなりチートな能力だ。
昔からそうだ。
ライナが外したところを、俺は見たことがない。
「今日の依頼は、これだけでいいんだっけ?」
「うん」
俺はイーゼルボアの足を棒に縛り、担げるようにした。
俺にできるのは、それくらいだ。
俺には戦闘能力などないのだから。
町に帰る途中、もう1人の相棒に会う。
小柄な回復魔術師のレスタだ。
小さい体とは裏腹に、スキル《剛力》で大人でも敵わない腕力を生み出す。
だから素手で無茶な狩り方をする。
刃物のようにギラリと鋭く光る銀色の髪が、ちょっと恐ろしい。
「今日は、あんまり取れなかった」
男のような低い声でそう言う。
片手にウサギを5羽も抱えている。
どこがだ。
よく見ると、大小さまざまだ。
巣ごとつぶしたらしい。
この前なんてイノシシを殴り飛ばしていた。
ちょっと意味わかんない。
「ほい!」
レスタがウサギを渡してくる。
持てと……!?
「うが……」
「なんだこれ、むちゃくちゃ重いぞ……」
レスタが片手で軽そうに持っていたウサギは、とても重かった。
手をぷるぷるさせながら、両手で持つのがやっとだ。
「こんなの運んでたら、日が暮れちゃうよ」
「まぁ、か弱い女性に持たせようとするのね?」
「どこがだ」
「失礼ね」
「さっき、ウサギの巣ごとつぶしてただろ」
「細かいことは気にしないの」
「勘弁してくれ……」
このやり取りを見て、ライナがけらけらと笑っていた。
「冗談よ」
レスタは俺が抱えていたウサギを片手でひょいと持ち上げた。
やっぱり、この怪力おかしいだろ。
「ウルスは、いじりがいあるからね」
「うん。ウルスは、かわいいからね」
ちくしょう……。
そう言われたら、言い返せないじゃないか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺たち3人は村に帰った。
村は重税で苦しんでいたので、
こういう食糧確保は、とても歓迎された。
あまりにも税が酷く、
一昨年は隣の家の子供が売りに出された。
今、この村に残ってる子供は俺たち3人だけだ。
俺たちも、いつそうなるかわからない。
でも、そうならない限り、俺たちはいつも一緒だ。
歳は違うけど、俺たちは欠かせない相棒なのだ。
この時の俺は、この2人と別れる日が来るなんて思ってもいなかった。
◇ ◇ ◇ 翌日 ◇ ◇ ◇
村人たちが妙に静まりかえっていた。
昨日までとは違う。
妙な「重さ」を感じる静けさだった。
何だか嫌な予感がして、様子を見に行くと――
「キサマが、ウルスだな!」
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