ララソ領の異変
また、厄介事が増えた。
でも、断ることなどできない。
そういう相手からの命令であるから……。
そう、俺に、命令できる相手は限られている。
王族の次に偉いと言われる「公爵」だからだ。
もう1度、封筒を見る。王族専用の封筒だ。
命令書の署名を見る。間違いなく王様のものだ。
げんなりした表情を浮かべていると、ローラがぬっと現れた。
命令書を見るなり……
「ふふ……。お~もしろいことになったのですわぁ~」
「どうしたの?」
エリナが、俺を気づかってくる。
あぁ、この子くらいだよ。
俺のことを気づかってくれるのは。
とりあえず、問題の主に話を聞きに行くとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ロドス学校……。
ここは、そう呼ばれている。
問題の主は、もうすぐ、ここでの授業を終えるはずだ。
ジリリリリリリ……。
就業のベルがなる。
チャイムは、再現できなかったので、昔の学校のようにベルだ。
「よう!」
ヤツは悪びれずに、そう挨拶した。
「お前、何してくれたんだよ?」
「ん? 何が……?」
「この命令書をもらったんだが……」
「あぁ、感謝してくれていいんだぞ!」
「誰が……」
命令書には、こう書いてあった。
――ララソ領、領主ドドソソ・ララソが、
領地を返上してきたので、お前が管理するように――
……と書かれていた。
「領地返上して、おまえは大丈夫なのかよ?」
「あぁ、わしか? 問題ないぞ。妻も子もおらんし……。
何より、水害で領軍も領民も、3分の2を失ったしな……」
「わかった。領民を放っておく訳にはいかないしな……」
俺は、そう決意した。
俺が領地を引き受けると言った瞬間だった。
ふっと空気が入れ替わった気がした。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
まるで世界そのものが、別の形に塗り替えられたような感覚。
気が付けば、その違和感すら思い出せなくなっていた。
「今、何かした?」
うさん臭い出来事は、こいつに聞くに限る。
「いいえ。わたくし、な~んにも、していないですわぁ~」
「そか……」
「何かあったの?」
「あぁ、お隣のララソ領が、うちの領地になったんだ」
「それは……。おめでとう?」
「あぁ、ありがとう」
そう言って、エリナの頭を撫でるが、正直、あんまりうれしくない。
ロドス領でさえ、まだまともに経営できてないというのに……。
「ところで、領地経営を引き継ぐに当たって、資料とか……」
「ないぞ……」
「は?」
「この前まで、文字の読み書きできなかったんだぞ。
読めも書けもしないものを作っても意味なかろう」
ドドソソは悪びれる様子もなく肩をすくめた。
そんなことをドヤ顔で自慢されても……
なんで? この国の領主って、こんなヤツしかおらんの?
全て最初から再調査か。
まずは代官候補を探すところから……かな?
あれ? 今までどうしてたんだ?
「代官とかいなかったん?」
「いたぞ!」
過去形かい……。
「今は皆辞めて、別の仕事をしとる」
「ふ~ん。今、何やってるの?」
「教師だ」
「え?」
もしかして……。
「そう、今ここで先生をしてる」
「なんで、そうなったの?」
「だから、水害で……」
この前の水害は、大きな痛手だったようだ。
何人かだけでも、代官に復職してもらうか……。
俺は聞き取りを行い
5人の教師のうち3人に代官に復職してもらった。
早速現状調査からお願いした。
「ところで、ドドソソさん。
明日から、どうやって暮らしていくつもりなの?」
「命令書、最後まで読んだか?」
「ん?」
命令書の最後には、こう書いてあった。
――ドドソソ・ララソの面倒も見るように――
領地だけじゃ、なかったんか~い!
マジか。
まぁ、いいけどね。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ララソ領は、この前見に行った時、酷い状況だった。
平野部は水害の痛手から復興できず、
作物があまり取れない山間部に人が集中していた。
なにより酷いのは、落とし穴だ……。
あれにより、流通網が寸断され、自由に行き来できない。
だから、まずやるべきことは――
「ララソ領には、落とし穴はない」という「ウソ」をついた。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
成功したようだ。
すぐにリキャスト音は帰ってこなかったので、
代官たちが状況を再把握してから、
次の作戦を考えることにした。
・ ・ ・ 数日後 ・ ・ ・
早速、代官の報告が来たんだが……。
「大変です。領主様」
「どうした?」
「記憶と現在の状況が一致しないんです」
「え?」
「私の記憶では、もっと少なかったんです」
「は?」
今まで記録してなかったからでは?
「数年前に病死したはずの者まで生きております」
「なんで?」
「水に流された者まで生きています」
「どうなってんの?」
よくわからないけど、生き返ってるらしい。
「一方で、新たな死者も……」
「そんなバカな……」
「深い穴に落ちて亡くなったそうで……」
落とし穴はなくしたはずだぞ……。
「家の近くに、急に深い穴が現れたと……」
落とし穴が増えた?
「どういうことだ?」
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次回『全部俺のせいだった』
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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
※※ 本日は、この1話のみです ※※
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