全軍撤退
「殺さないで!!」
エリナが両手を広げ、俺と冒険者の間に立った。
いつの間に、こんな場所まで?
後ろには、うちの馬車と執事の姿が見えた。
おまえか! エリナを連れて来たのは……。
「ダメ……だ。ここ……に……いたら、危ない」
やばい、なんかまともに話せない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
冒険者は突然の幼女の登場に戸惑っているようだ。
冒険者がトドメを刺せないのを見かねて、敵の指揮官が前へ出てきた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
エリナは俺の体を小さな両手で支えた。
この前のエナジードリンクを俺の口元へ差し出した。
「飲んで……」
ゴクゴク……
切られたところが熱い。
失ったはずの右腕が、音もなく再生していく。
ゴクゴク……
切られたところから、肉が盛り上がり始める。
骨と肉が指先まで伸び、形を作っていく。
ゴクゴク……
指が生え、爪まで生えそろっていく。
数秒後には、そこに元通りの腕があった。
奇跡としか呼べない光景だった。
周りの大人も、冒険者も、俺自身も――
何が起きたのか理解できず、固まってしまった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その間にも、王国軍は間近まで迫っていた。
指揮官らしき男が、やさしく諭した。
「お嬢ちゃん。そこをどいてくれないか。
おじさんたちは、この悪者を殺さないといけないんだ」
「ファリスは悪者じゃない!!」
そう言って、エリナは指揮官の前に立ちふさがった。
胸元で、形見のネックレスが揺れる。
指揮官の視線が、そのネックレスに釘付けになった。
「まさか……」
――全軍撤退!!――
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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
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