勝ったと思ったら大敗北
「敵は隣国クフィール王国、敵軍は2500名弱」
エリナ親衛隊は使えない。各代官の衛兵だけが頼りか。
「こちらは?」
「500人ほどです」
敵の狙いは俺の命。
でも、俺は殺されない。そういう「ウソ」をついていたから。
俺を囮にして、物陰から奇襲してもらうのがいいかな?
追加で、敵が俺たちを攻撃出来ないという「ウソ」をついておけば十分かな?
「クフィール王国軍は、俺たちを攻撃出来ない」
という「ウソ」をついた。
澄んだ音が脳内に響いた。
よし、これで勝ったようなもんだ。
こうして囮の俺は、この領の端で待機することにした。
なぜって?
ララソ領は、穴が多すぎて、動きにくんだもん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
現場に到着した。
落とし穴のおかげで、敵軍にはかなり疲労の色が見えた。
でも、瞳の光は、消えていない。
闘志に満ちあふれている。
士気は高そうだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
対して、こっちの衛兵は、ほとんどが初陣だった。
遠くの物陰に隠れているようだ。
でも、震えが酷すぎて、思いっきり目立ってるんだが?
まぁ、最初はそういうもんかもな……。
でも、敵の攻撃は当たらないんだから、大丈夫だろ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
敵の攻撃が始まった。
面白いように、当たらない。
スルスルと外れていく。
「ふはははははは……」
思わず大声で笑ってしまった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いたぞ~!」
「ファリス・ロドスだ……」
「撃て、撃て~」
「撃ち続けろ……」
「ぎゃぁ……」
「気を付けろ、狙われてるぞ……」
こちらの攻撃が当たり始めたようだ。
もう、新兵たちも戦場に慣れてきただろう。
「わはははははは……」
笑いが止まらない。
戦争と言うには、一方的すぎる展開だ。
こちらの戦力は敵の5分の1程度だというのに、
負ける気がしなかった。
遠くで、斬りあいもはじまった。
それでも、敵の攻撃は当たらない。
こちらの剣だけが、敵を切り裂いていく。
さらに追撃してやろう。
俺はいくつかの攻撃魔法を、敵の集結地点に向けて放った。
「ぎゃぁぁぁ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その時、俺の頬を何かがかすった。
矢だ……。
え?
なぜ、攻撃が当たる?
攻撃が飛んで来た方向を見た。
あれは……
冒険者だ。
雇われたのか、扇動されたのか、わからないが……。
しまった……!
俺の「ウソ」は「クフィール王国軍は……」にしている。
彼らの攻撃は、届いてしまう。
しかも、あいつらはうちの領の領民だ。
殺す訳にはいかない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――攻撃中止、即時撤退――
――攻撃中止、即時撤退――
何度も叫ぶが、命令が伝わらない。
――撤退!――
――撤退しろ!――
だが誰も動かない。
さっきまで優勢だったせいで、
誰も負けると思っていないのだ。
衛兵たちは、
誰もが、勝てる戦と思っているようだ。
衛兵は、撤退しなかった。
冒険者と衛兵も交戦し始めた。
さっきまで無傷だった新兵が、
腕を押さえて悲鳴を上げた。
誰もが自分たちは傷つかないと思い込んでいた。
状況は、一転して、混乱に変わった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
冒険者たちが、距離を詰めてくる。
俺は非常手段に賭けてみた。
「ローラ!!」
「はぁい、旦那さまぁ」
こいつが高いところから俺たちを見下ろしていることには気づいていた。
逃げるなら、こいつを頼るしかない。
しかし、降りて来ようとしたローラを矢が制した。
こいつは、うちの領民と俺が認めていないせいか、王国軍の矢も届く。
ローラは降りてくることができなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
どうする?
リキャスト音はまだ鳴らない。
悩んでいるうちに、冒険者に間近まで攻め込まれた。
今回ついた「ウソ」は、王国軍だけが対象だった。
冒険者は対象外だ。
なんでこんな初歩的なミスを……!
俺は条件を読み違えていた。
ザシュ……
俺の右腕が宙を舞った。
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※※ 次回 7/03 21:00 公開 ※※
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