信じたのは俺だけ
「オオカミが出たぞ~!」
知らせを聞いて向かったが、大人たちは誰もしらんぷり。
それでも一応、代官を通じて報告は上がってきた。
俺も気になり、現地へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「オオカミが出たぞ~!」
ひとりの子供が叫ぶ。
指さす先で何かが動いた気はしたが、たぶん風か何かだろう。
「ほら、あそこにいる!」
子供は言い続ける。
しかし、何も見えない。
食糧の入った袋が破け、風に揺れているだけだった。
「みんなには見えないの?」
やはり何も見えない。
何より、その子はウソつきとして有名だった。
このウソは、いつものことらしい。
「懲りないな……」
「また、こいつのウソだ」
「そんなに構ってほしいのか」
「こいつが本当のことを言うわけがない」
大人たちは口々に言う。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
けれど俺は、なんとなくシンパシーを感じた。
同じウソつきとしてだ。
「本当に見たんだな?」
「見た!」
「絶対?」
「絶対!」
同じウソつきだからこそ、この子はウソをついていない気がした。
俺はその子から詳しく話を聞く。
出没した時間は昼間。
場所は食糧倉庫。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その場所で張り込むことにした。
・ ・ ・ 次の日 ・ ・ ・
「オオカミが出たぞ~!」
その子が叫ぶ。
村人は誰も相手にしない。
俺も探すが、見つからない。
・ ・ ・ 次の日 ・ ・ ・
「オオカミが出たぞ~!」
その子が叫ぶ。
俺も探すが、見つからない。
俺も必死に探すが、見つからない。
やっぱり、この子の見間違いだったのだろうか。
さらに詳しく話を聞く。
「何を食べていた?」
「果物」
「見分ける特徴は?」
「なんか甘い匂いがした」
執事が心当たりを口にした。
オオカミの中には、夜は半透明、昼は透明になるアストラルウルフという魔物がいるらしい。
ならば、夜に張り込もう。
・ ・ ・ その夜 ・ ・ ・
夜に張り込んでいると、現れた。
執事の予想どおり、アストラルウルフだった。
2体だけだったため討伐した。
昼間も透明な姿で、村の食糧をあさっていたらしい。
それでも、その子には昼間でも見えていたそうだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「エリナ様、お金貸してください」
「ん……」
何に使うのか察したらしい。
俺は、その子に謝礼を払った。
払う前にエリナへ借金交渉している時点で情けないけど……。
でも、疑問は残る。
2体だけ?
群れで行動するオオカミが?
奥地にしか住まないはずなのに?
何かおかしい。
執事に調べてもらうと、他の魔物もこの2か月で急増していた。
村の動物たちも、どこか落ち着かない様子だった。
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※※ 次回 6/29 21:00 公開 ※※
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