ロドスの灰
王城に着きました。
途中、盗賊に襲われることもなく、意外と早く着きました。
城門をくぐります。
中へ入るのもスムーズだった。
「あれが落とし穴公爵か……」
「便器公爵じゃなかったか?」
「ネコ公爵だって……」
「何だ、あのおかしな馬車は」
「あれが灰のファリス……」
そんな声が後ろから聞こえてくる以外は……。
最後のは何?
俺の二つ名なの?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
馬車を降ります。
そのままスムーズに案内されました。
一応、ファリス・ロドスは公爵です。
王族に次ぐ地位なのです。
王様以外なら、少しくらい変な発言をしても大丈夫だろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
舞踏会の会場は宝飾品で飾られ、キラキラしていました。
こういうのはあまり好きじゃないけど、初めて見る光景だ。
悪い感じはしない。
エリナはキラキラしたものが好きそうだから、楽しんでいるかな?
そう思って見てみたが、特に感動している様子はない。
こういうの慣れてる?
……んな訳ないか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
舞踏会が始まり、王様への挨拶は最初に済ませた。
以降は基本的に壁際で銅像のように立っている。
もちろん料理は食べるけども……。
身分の低い者から話しかけてはいけない決まりがある。
王様か、ほかの公爵から話しかけられない限り、基本はスルーでいいだろう。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
変な女が話しかけてきた。
隣国、スーデリア・アスヴァル第一王女だ。
王族から話しかけられた以上、スルーはできない。
何を考えているか分からない女と言われている。
今日に限っては、この女の狙いは俺らしい。
ネコ皮の襟巻き。
ネコ皮の手袋。
ネコ皮のバッグ。
ネコ皮の靴。
本物のネコから剥いだ耳としっぽまで。
……と、ネコづくしのおかしな格好だ。
ネコ由来の物で身を固めれば、ネコ好きに受けると思っているようだ。
ネコを粗末に扱う人を、ネコ好きが好むわけもないが……。
ここまでネコを主張するのは、気を引くためか?
だが、俺はドン引きしていた。
舞踏会でその格好?
なんでネコずくめ?
気を引くことはできなかったが、ドン引きしたので記憶には残った。
狙いは、利権の象徴「ロドスの灰」だ。
その効果が知れ渡ると価格は爆上がり。
最近は出荷制限までかかり、さらに入手困難になった。
今ではヒヒイロカネより高価な代物だ。
製法も効果の理由も謎に包まれている。
落とし穴が必要だとか、さまざまな説まで出回っている。
「その耳やしっぽ、とてもリアルですね」
「まぁ、お分かりになります? 昨日、剥ぎ取ったばかりですの」
俺はさらにドン引きした。
「え? 本物なんですか?」
「昨日仕留めたネコですの。とても新鮮でしょう」
なんか、すごく危ない人みたいです。
「ところで、最近『ロドスの灰』が有名ですのね?」
何その名前?
俺を燃やして灰にしたいってこと?
「ロドスの灰?」
「はい」
「ご存じないのですか……?」
うちの特産品になった灰のことらしい。
その後も離れようとしたが、どんな話をしても灰の話へ誘導される。
とりあえず適当に流した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
テラスでエリナと風に当たっていると、よろよろしながら突っ込んでくる女がいた。
ふらついて寄りかかった――という演出らしいが、不自然すぎる。
三階のテラスで勢いよくタックルしてくるのはやめてほしい。
落ちるかと思った。
俺が。
この女は確か、ルイーザ・レイノル伯爵令嬢か……。
「すみません、よろけてしまって……」
抱きついてくる。
「いえ、強烈なタックルでしたよ」
ラグビー経験者かと思ったわ。
「たっく……?」
む、くそ……離れない。
「これも何かの縁ですね」
「そうですね。私怨なのでしょうね」
早く帰れや……。
「ところで、最近『ロドスの灰』が……」
結局それかよ!!
「あぁ、すみません。ちょっと用事が……」
俺はエリナを連れて、この謎の巣窟から逃げ帰った。
王都へ来て分かった。
この国の貴族は、灰の話しかしない。
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※※ 次回 6/28 21:00 公開 ※※
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