ネコじゃありません
王都から舞踏会の通知が来た。
強制参加らしい。
馬車で参加、同伴は1名まで。
ドレスコードも必須条件らしい。
……馬車がないんだが。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
最近は困った時、職人さんたちを頼っている。
もはや青いネコ型ロボット並みだ。
「いいですよ。サクッと作りますよ」
頼りになるわぁ。
「外見だけはきれいで……(そうしないと色々言われる)」
「中は一切、装飾なしで……(もったいない)」
「乗り心地重視で……」
「あ……サスペンションとか、ゴムタイヤとか、リクライニングシートとか……付けられる?」
「何ですか、それ……?」
「えーと、まずサスペンションは……」
俺は思いつく限りの知識を紙に書き出した。
「こうやって車輪を上下に動かして……」
「どういう効果が?」
「乗り心地が良くなる」
「おおっ!」
「次にゴムタイヤだが――」
――以降長いので略――
「……という感じで」
「おおっ!」
紙には、思い出せる限りの知識を書き込んだ。
気になったのか、周りに職人さんたちが集まってくる。
「これは面白いですね」
「領主さんが考えたんすか」
「それ、作ってみたいです」
「ぜひ俺にもやらせてください」
職人魂に火がついたようだ。
追加でいろいろ聞かれた。
なんだか、ぐいぐい来る。
調子に乗って、こちらもいろいろお願いした。
製作は任せるとして、お金の工面をエリナ様にお願いしなくては……。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「え? マジで?」
「うん、マジで……」
お金を借りる条件が付いた。
エリナも連れていけ、と。
は、はぁ……。
あんまりゴミ(貴族)だらけの危ないところに連れて行きたくないんだけどな。
ということは、エリナのドレスも作らないといけない。
よし、服を買いに行こう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どこへ行けばいいか分からなかったので、幼女大好き商人のところへ顔を出した。
エリナに「お願い……」をしてもらったら、あっさり買い物が済んだ。
子供同伴でないと買い物もできない俺……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
屋敷へ帰ると、馬車の組み立てが始まっていた。
外装には金を使用(安いらしいし)。
六輪。
ゴムタイヤ。
独立懸架サスペンション。
開閉式サンルーフ。
室内のシートはスプリング入りで、リクライニングしてフルフラットにもできる。
内装は軽く塗装しただけの質素な仕上げだ。
「んー。いいね、いいねぇ」
「え? オリハルコンまで貼ったの?」
「防弾になりますので……」
「マジかぁ……」
エリナの方をチラッと見る。
「ん……。もう聞いてる」
「承認済みでしたか……ありがとうございます」
あれ?
どっちが領主だ?
「でも、いいんですか?」
「何が?」
「え? 何かまずいの?」
「い、いえ……」
「気にならないのでしたら別に……」
何か気になることを言うなぁ。
完璧なんだから問題ないって。
サンルーフを開けると、屋根の上のバリスタを操作できる。
普段は上下左右にカバーが付いているから、気付かれないだろう。
なんで付けたかって?
王都まで行くんだ。
盗賊とか出るかもしれないし……。
決してカッコいいからじゃない。
決して……。
執事とエリナがおかしなものを見るような目で見ていた。
……気がした。
そう、そういう気がしただけだ。
服もできた。
馬車もできた。
ダンスシューズに小さなバッグも調達済み。
もちろんハンカチも余分に……ね。
さぁ、いざ王城へ向かおう。
執事が不思議そうな顔で乗り込む。
「御者席にも屋根と壁が付いているのですね」
「うん。どっちもガラスだけどね」
「雨風が当たると大変でしょ」
「あ、えぇ、まぁ……」
俺も乗ってみた。
「んー、椅子が気持ちいい」
「あ、エリナ。このレバーで椅子の角度を変えられるから……」
「ふふ……なんか面白い」
エリナはリクライニングシートで遊んでいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
馬車が走り始めた。
シートのスプリングの効果もあってか、想定どおり揺れはほとんど伝わってこない。
道端の住民からの視線が痛いのはいつものことだ。
もう慣れた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
他領に入っても視線が痛いのはひどくない?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
王都に入っても視線が痛かった。
そんなに評判悪いの、俺?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
騎士団の人が馬車の横までやって来た。
「この変態的なデザインは何だ?」
「変態的とは失礼な!」
「揺れを感じにくいように作ってるんだよ」
「あと、なるべくぬかるみにハマらないようにな」
「試しに乗ってみるか?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
おじさんが乗っている間、エリナを俺の膝の上に座らせる。
二人乗りだからだ。
「うわ、何だこれ……全然揺れない……」
「全然は言い過ぎだって」
「揺れが少ないだけ」
「いや、こんなの乗ったことないぞ」
「本当に動いてるのか……」
「……動いてるな」
「もういいかな。この子を席に戻したいんで」
「ところで、この馬車、何で2人乗りなんだ?」
「あぁ、それ以上乗る予定がないからな」
「この広さを2人だけで使うのか。それはまた贅沢だな」
「2人乗りって、そんなに珍しい?」
「普通、貴族の馬車は対面式で4人乗りだろう」
「そうなの?」
それにしても、道中ずっと視線が痛かったのは、この馬車が珍しかったから?
……いや、違うよね?
たぶん。
「ところで、あんたら、どこの領の者だ?」
「一応、馬車の外側に家紋を付けといたんだけど……」
「あぁ、あんたらがネコ領の人か」
「ネコ用の設備も付いてるのか?」
「いやいや、ネコ関係ないから……」
「でもネコ領だろ?」
「ロドス領だって」
「それ昔の呼び名だろ」
「違うって」
・・・・・・
ロドス領なんだけど。
ロドス領なんだ……よな?
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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
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