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ウソつき賢者の領地再建 ―クスッと笑える!?、勘違い領主コメディ(復讐から始まったはずなのに……)―  作者: 秋月心文


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今日の苦労は何だったんだ

「道路整備をしたいと思います!」


「何のために?」


 執事から予想外のツッコミを受けました。


「流通が活発になるじゃないですか?」


 交通インフラは重要じゃん?


「うちには馬車がありません」


「え? あ、はい」


「なので、うちにはメリットがありません」


「えーと」


「農民も鉱夫も徒歩です」


「彼らには馬車や荷車を買う余裕がありません」


「だから商人が馬車で買い付けに来ます」


「農民も鉱夫も、馬車の必要性を感じないでしょう」


「つまり喜ぶのは商人だけです」


「あ、うん。そうね」


「舗装しても馬車が増えるわけではありません」


「だけど、商人は金は出しても人手は出しません」


「まぁ、商人が土木工事してる姿は想像できないな」


「人手として借りだされるのは農民や鉱夫です」


「嫌がると思いますよ」


「えーと」


「自分たちにメリットないので……」


 整理すると、農民や鉱夫は馬車も荷車も持っていない。


 だから商人が馬車で買い付けるのが当たり前になっている。


 馬車を持っているのは商人と貴族だけ。


 しかし商人も貴族も人手は出さない。


 結局、馬車を使わない者たちだけが工事をすることになる。


 当然、反発は避けられない。


「うぐ……」


「それでなくとも嫌われているんですから」


「どこか、人を雇えるところないの?」


「冒険者ギルドくらいですね」


 うーん、冒険者に土木工事させるのもなぁ……。


「代官を通じて依頼すれば、強制徴用もできるとは思いますが……」


「あぁ、うん。後が怖そうね……」


 暴動とか、暴動とか、暴動とか……



 ◇ ◇ 冒険者ギルド ◇ ◇ ◇


 ダメ元で冒険者ギルドに来てみました。


 途中で、見知った顔に睨まれる。

 幼馴染の2人だ。


 エリナ同伴で、ギルド長への面会をお願いする。


 領主の記憶では、この人とは何度も会っているらしい。


「土木工事を、依頼するだとぉ」


「あ……はい」


「いい根性してんなぁ、ああん?」


「あはは……そうですね」


 ここまで話して、ギルド長は何か感じたらしい。


「今日はどうした?」


「いつもと態度が違いすぎないか? ファリス」


 まぁ、中身は別人ですからねぇ。


「前はもっと偉そうだったのによ」


「あー、今回はお願いごとですので……」


「それよりだ!」


「それより?」


「お前、もっと周りを見ろよ!」


「は?」


 何のことだろう。


「依頼は貼り出すが、受理されるとは思えんぞ」


「あ、ありがとうございます」


 ギルド長が右手を差し出したので握手した。


「違う!」


「はい?」


「依頼料を払えって言ってるんだ」


「あぁ、いくらでしたっけ?」


「金貨5枚な」


 そう言ってニヤリと笑う。


「エリナ様、お願いします」


 俺は小さな相棒にこっそり頼んだ。


 エリナは、銀貨5枚を差し出す。


「あのぅ……」


「ぷふ……」


 ギルド長は笑った。


「ほいよ。確かに受け取った」


 依頼料は銀貨5枚だったらしい。


 金貨5枚は冗談だったようだ。


 何てこった、信じてしまったわい。



 ◇ ◇ ◇ 領主館 ◇ ◇ ◇


 こうして、人手の目途も見えないまま館に戻った。


「領主さま、お帰りなさい」


 ここでは職人さんたちが唯一の味方だ。


 ……って、あれ?


 彼らにお願いしたらどうなるんだろう。


 ダメ元で職人さんにお願いしてみた。


「俺たち工房作る時に基礎工事やったんで……」


「道路くらいならできますよ」


 職人はサッと地図を広げた。


 彼らは儲けに対する嗅覚が鋭い。


「えーと、こことここっすか?」


「ここはいらないんすか?」


「あぁ、できるならやりたいけど……」


「見積もりができたら持ってきます」


 仕事が早すぎる……。


 こんな有能な人たちが身近にいたなんて。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 見積もりに時間はかからなかった。


 職人がすぐに持ってきた。


「金貨550枚くらいですね」


 思ったより桁が大きい。


「高いなぁ……」


「オリハルコン山があるので、いずれ払えますよ」


「え?」


「今は上水道や公衆トイレで赤字でしょうけど、あれが終われば黒字になるんじゃないですか?」


「あぁ、そっちか……」


 今日の俺の苦労は、何だったんだろう。

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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・

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