父親は工房にいました
今日も昨日に続いて裁判をやることになりました。
それも面倒な案件です。
――裁判3:私の子供――
母親を名乗るE、F、Gの3人と、子供Hの裁判です。
3人とも、自分の子だと言い張ります。
しかし、子供Hは誰にも似ていません。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
母親Eは、自分が産んだ子だと言いました。
証拠は、背中にある傷です。
「私が付けた傷だから、私の爪の位置と一致するはずだ」
なんだか怖いことを言いやがる。
本当だったとしても、この母親には渡したくありません。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
母親Fは、この子は自分が買った子だと言いました。
買い取り証明書も持っています。
けれど、証明書に書かれた人物と子供の容姿が一致しません。
証明書には金髪と書かれているのに、その子は黒髪です。
さらに、ポケットからは子供を売った証書まで出てきました。
どうやら人身売買をしているようです。
この人、字が読めないらしい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
母親Gは、この子は親友の子だと言います。
一番まともな気がする。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
子供Hにも聞いてみた。
「おまえの親は誰だ?
それとも、誰のところへ行きたい?」
子供はシレッと言いました。
「3人とも親じゃない。
ボクは、ご飯を食べさせてくれるところならどこでもいい。
一番高く買ってくれる人のところがいい」
……何を言ってるんだ、こいつは。
いや、おまえは牛か。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
子供に聞く話ではない気もしたが、エリナなら何か気付いているかもしれない。
エリナにこっそり聞いてみた。
「全員ウソだと思う」
「どうしてそう思う?」
「昨日、市場で別の女の人と一緒だった」
「私たちを見ながら、何か相談してた」
一旦、この件は保留にする。
もう少し調べる必要があると感じたからだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずは、その女性を探すことにした。
俺は顔を覚えていないので、昨日のように鳥は使えない。
エリナと歩いて探す。
……というか、裁判を保留にしたあと、その子を尾行していた。
「あの人」
エリナが指さした。
話しかけようとした時。
「領主さまぁ!」
俺を呼ぶ声がした。
職人のウースさんが走ってくる。
「お仕事中すみません、領主様。実は――」
「あっ! 父さん!」
子供が思わぬ反応をした。
「は?」
「死んだんじゃなかったの?」
ウースさんはあっさり答えた。
「あぁ、すまん。仕事が面白くてな」
「それで五年も?」
「は?」
「ウースさん、この子はあなたの子なの?」
「えぇ、うちの子ですよ」
「おぉ、元気にやってたか?」
ウースさんは母親らしい女性に声をかけた。
「もう無理よ。この子を売りに出すところだったのに……」
「父さん、お金足りないんだ。何とかしてよ」
「母親Fに売る話がまとまりかけてたのに、ほかにも買いたい人が現れて……」
「あの裁判は、誰に買ってもらうかって話だったの」
「そうだよ!」
子供もうなずく。
なんだかなぁ。
もうウースさんに丸投げでいいじゃん。
「裁判は却下します」
「あとはウースさん、何とかしてください」
「えぇ!? 困りますよ」
面倒になった俺は、父親に丸投げした。
「仕事の時間が減るじゃないですか」
ウースさんはそんなことを言っていたが
5年も帰らなかった人が何を言う。
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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・
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